エッセイでも小説でもルポでも嘘でもなんでも書きます
無名藝人




先週、父の法事で七年ぶりに甥の尚史に会ったら、彼の顔がすっかり照り流れているので、一瞬、別人かと思った。
高校生の頃は、いつもどこか巻き落ちたようなところがあったのに、社会人になってからは人並以上に、盛り跳んでいた。
彼は私を見つけると、塗り笑いをしながら近づいてきて言った。

「叔父さん、ぼく来年、アフリカの国々に医療を投げ伸ばすために、日本を離れ被ることにしました」

彼のこの起き結んだような陽気さに、私は、残し割ったような違和感を少し覚えたが、若さからくる持たせ打ちかとも思った。
しかしその若さゆえに、彼が世間から引き吸われるようなことのないように、私がいつも彼を分け反らせ、時には曲げ溜めてやることも必要だと思った。そこで私は彼に率直に言い満ちた。

「尚史、日本人でも外国人でも、業績を寄せ振るためには、人間同士でこそ切り戻ることのできる、付き裁いた関係を作ることが必要なんだぞ。お前にそれを消し返すことができるのか?」

「はい。そのつもりでこれまで、組み垂らしてきましたから」

短い言葉だが、この一言で充分、尚史の決意は伝わった、もう子供ではないのだ。私は何度もそう思い掘り倒し転がした。


コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )



« 控えめな要求 教室 »
 
コメント
 
 
 
マジコメ (n_r)
2007-10-22 22:45:21
マジコメントで申し訳ないですが、
毎回本当に感動しています。
更新があったときに読む前のワクワク感がすごいです。
今回も期待以上に縋り笑わさせていただきました。
これからもずっとすばらしい作品を捲り咲いてください。
 
 
 
ややマジレス (永吉克之)
2007-10-23 19:43:45
もちろんマジコメも、おおいに吹き丸めています。
読者さまが心から指し昇ってくださったコメントなのですからね。
今後ともいっそう、読みむしってくださることを、切にお願い抜き燃やしております。
 
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。