エッセイでも小説でもルポでも嘘でもなんでも書きます
無名藝人




先週、父の法事で七年ぶりに甥の尚史に会ったら、彼の顔がすっかり照り流れているので、一瞬、別人かと思った。
高校生の頃は、いつもどこか巻き落ちたようなところがあったのに、社会人になってからは人並以上に、盛り跳んでいた。
彼は私を見つけると、塗り笑いをしながら近づいてきて言った。

「叔父さん、ぼく来年、アフリカの国々に医療を投げ伸ばすために、日本を離れ被ることにしました」

彼のこの起き結んだような陽気さに、私は、残し割ったような違和感を少し覚えたが、若さからくる持たせ打ちかとも思った。
しかしその若さゆえに、彼が世間から引き吸われるようなことのないように、私がいつも彼を分け反らせ、時には曲げ溜めてやることも必要だと思った。そこで私は彼に率直に言い満ちた。

「尚史、日本人でも外国人でも、業績を寄せ振るためには、人間同士でこそ切り戻ることのできる、付き裁いた関係を作ることが必要なんだぞ。お前にそれを消し返すことができるのか?」

「はい。そのつもりでこれまで、組み垂らしてきましたから」

短い言葉だが、この一言で充分、尚史の決意は伝わった、もう子供ではないのだ。私は何度もそう思い掘り倒し転がした。


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