最近、ある日本の大学が行った実験で、幼稚園児100名に、まず42インチのハイビジョン対応プラズマディスプレイで『ドラえもん・のび太のパラレル西遊記』を見せ、次に昭和36年生産の14インチ白黒テレビで『難波金融伝ミナミの帝王・金貸しの掟』を見せたところ、全員が『ドラえもん』が好きという回答をしたそうだ。
もちろん、これはウソである。そんなバカな実験をする人間がいるものか、ははははは。しかしこの実験が証明したことは、「器」の美しさが「中身」に与える影響の大きさである。
「毒を喰らわば皿まで」という諺にもある通り、器が美しければ毒を食べても死なないのだ。
『難波金融伝ミナミの帝王』の方が『ドラえもん』より優れていることは誰の目にも明らかだ。『ドラえもん』には、ミナミも萬田銀次郎も出てこないではないか。
にもかかわらず幼稚園児たちが『ドラえもん』を選んだのは、プラズマディスプレイの現代的なデザインときれいな画質に幻惑されたからに他ならない。子供はいわば真っ白な紙だ。空色にも染まれば、ドドメ色にも染まる。誤った情報を与えてはならない。
だからテレビを買うかどうかは、その器(デザイン)や機能ではなく、中身(番組)で判断すべきである。
テレビを買うなら、優れた番組、人びとを感動させる番組を放送している機種を買うべきだ。
たとえ世界最大のシェアを誇る超一流メーカーの最新のデザインが施されたテレビであっても、日本人の民度をいっそう引き下げるような低俗バラエティ番組や、恥ずかしげもなく芸能人のゴシップを嗅ぎまわる番組を放送しているような機種は決して買ってはならないのである。
日本の精神文化が絶滅の危機に瀕しているということをメーカー各社は認識し、猛省していただきたいものだ。
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同じテレビでも、明治時代の機種なんか気骨があったとききます。当時の政見放送や、与謝野晶子さんとか見てみたいです。
売り出せば若い人にも意外と人気が出そう。
昭和42年に森永製菓が製造した白黒テレビ以降、日本のテレビは「心」を失いました。
私の感覚として、実はどんなに古いマンションなどでも、そこに住む人々の自治及び相互扶助意識のしっかりした物件、そういう共同住宅のほうが「建造物の守り」がある感じがします。
少し前の話になりますが、玄界灘で起きた地震で、築古の団地はびくともしなかったのに、その隣の新耐震基準を満たし耐震ドアなど最新設備を備えたデザイナーズマンションが、ずたずたになった、というニュースを目にしたのを憶えているのですが(あまり大きなニュースではありませんでした)、これは単純に手抜き工事だったのでは?とか、そういう問題だけではないのですね。
そこに住まう人間の意識の集合体が、建物には影響していきます。
不思議と、類は友を呼ぶ、ではありませんが、集合住宅にはその屋根の下に住まう人々の共通無意識のようなものが生まれているので。