エッセイでも小説でもルポでも嘘でもなんでも書きます
無名藝人




きのう、南海高野線の中百舌鳥駅で豪商を見た。
やはり豪商は、どこへ行っても周囲には人だかりができる。私も、みっともないと思いながら、皆に混じって豪商を眺めていた。
まあ、囲んで眺めているだけなら罪はないと思うのだが、中にはカネをせびるタチの悪い奴らもいる。
その日も、そんな連中がいて、図々しくも豪商の袖をつかんで放そうとしないのだ。困惑している豪商を見ていて気の毒になった。
幸い、カネをせびっていたのが中学生らしい小柄な少女ふたりで、もし殴り合いになっても対等か、それ以上に闘える見込みがあったので、しばらく迷ってから、思いきって話しかけた。
「お前ら中学生やろ。なにしてんねん、この時間に。学校はどないしたんや」
「なんやあんた。関係ないやん」
「北中の生徒やな」
学校を言い当てられて、通報されてはまずいと思ったのか、人だかりから抜け出して、離れたところから様子を見ていた。また、後でたかるつもりだったのだろう。
私は、これも何かの縁だと、ボディガードのつもりで、目的の駅まで豪商を送っていった。
豪商は「ありがとうございます」と軽くお辞儀をして改札を出ていった。

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