エッセイでも小説でもルポでも嘘でもなんでも書きます
無名藝人




テエトルは『怒りのブドウ球菌』と申しやす。発売日も値段もまだ決まっちゃいねえが、おそらく今月中にゃ本になるでやんしょう。これからしばらく注目してやっとくんなせえ。
もちろん、あっしが書いた本でござんすよ。あっしゃあ偏狭な人間、ケツの穴の小せえ人間だぁ。てめえの利益を脅かすかもしれねえ他人の本の宣伝をするほどの器量は持ちあわせちゃいませんや、旦那。
 
「日刊デジクリ」ってえメルマガをご存知で? 
あっしゃあそいつに毎週木曜、コラムなんぞ載っけてやしてね。まあ、コラムといやあ聞こえはいいが、ガキの作文に毛が生えたようなもんでさぁ。
で、そいつが四年間で溜まりに溜まっちまって、さあどうする、どうするって、どうすりゃいいんだと思案している折も折、さる御仁が、おめえさん、何だか知らねえが面白いもん書くってえじゃねえか、しかもそれが、えれえたくさんあると来りゃあ、こいつぁ本にしねえ手はねえだろう、え? 悪いようにゃしねえ、ここはひとつ俺にまかせちゃくれめえか、と来たね。
そこまで言われて断って、男の顔をつぶしちゃ面目ねえ、承知いたしやした、あっしのコラムは言ってみりゃ、てめえのガキみてえなもんでござんす、馬鹿な連中ですが、どうかよろしくお願げえいたしやすと、めったにゃ下げねえ頭を地面より深く下げて頼んだってわけでさあ。
ところがそこにカカアがしゃしゃり出てきやがって、ちょいと待っとくれよお前さん、てことは、そのデジクリだかアマグリだかのサイトにアクセスしてバックナンバーを見りゃ、本を買わなくったって、お前さんのコラムが読めるってことじゃないか、いったい誰が買うってのさ、そんなもの、およしよおよしよ、それよりさあ、ここんとこずいぶんとご無沙汰じゃないか、あたしゃ、この家の女中じゃないんだよ、なーんて抜かしやがるんで、べらぼうめ、いいかよく聞け、唐変木、その本にゃなあ、おいらの描いたイラストもどっさり載っけてくださるんだってよ、そりゃそうさ、絵描きの書いた本だ、絵がの載らねえわけがねえ、物書き冥利にも絵描き冥利にも尽きるってもんよ、いってえ何年、芸術家の女房してやんでえ、このオタンコナス…おっと、あっしゃあ独身でござんした。

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