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黛信彦の時事ブログ

浜矩子語録(65) ノンジャパニーズを貫け(NHK、日曜討論)

2009年07月13日 | 浜矩子語録
10日に閉幕したラクイラ・サミットでG8は、世界経済は「安定化を示す兆しがある」としながらも「依然として不確実で大きなリスクが存在する」としたうえで、「各国は雇用対策を強化すべきだ」との認識をした。

12日のNHK日曜討論ではこれを受けて、「どうなる?世界経済 景気回復の道筋は」が討論された。
・福井俊彦=キャノングローバル戦略研究所理事長(前日銀総裁)
・畠山襄=国際経済交流財団会長
・グレン・S・フクシマ=エアバス・ジャパンCEO
・浜矩子=同志社大学大学院教授
・中島厚志=みずほ総研チーフエコノミスト
・白井さゆり=慶應義塾大学教授
以上6名が、招かれた論客たちである。

NHK・島田敏男解説委員は、「次の衆院選で政権の姿容がどう変わろうが変わるまいが、日本経済の回復の道筋をどう考えるべきなのか?は各政党に突き付けられた課題である。」と前置きして、論客に意見を求めた。
以下は、その浜矩子語録である。

Q~・~ ラクイラ・サミットをどう評価するか?
A~・~ 宣言自体をみれば、足して2で割ったような、ほとんど何も言っていないようなところに結局は着地してしまったということだと思います。
グローバル時代が、始まって以来の経済危機が続いているなかで開かれたサミットで、こういう言葉でしか語れないことが非常に問題だと思いますし、全体としてみれば締まりがない、「Gなんとか」がやたらあって何が何だかよくわからない。
しっかりした現状認識を示す、そして新しい時代に相応しい言葉で語るべきなのにできない、いわば過渡期のサミットという感じがしました。

Q~・~ 景気の現状と見通しは?
A~・~ 我々は今グローバル版「失われた10年」に足を踏み込んでいます。畠山さんが言われたように大激震を蒙ったわけですから、そこからまともにバランスのとれた状態に戻って行くためにはかなり時間がかかると思いますし、ある意味ではここで財政の大盤振る舞いなぞをやって、あまり早めに元に戻ることになると、その元の状態がまずかったわけですから、またそこから落ちてゆくことが心配になるわけです。
世の中で「山高ければ谷深し」と言いますが、では「谷深ければ山高し」でいいのか?
高かった山の上が非常に危険な場所だったから今ここに落ちているわけですね。
ですのに、「財政大盤振る舞いだ」というような恰好でまたその山のうえに登ってしまったら、又落ちることは目に見えているわけですから、こんなことを繰り返していたら失われた10年では済まなくなるのです。

Q~・~ 景気回復の道筋は?
A~・~ 財政主導で行くということには、2つ問題があると思います。
ひとつは、各国とも、「無い金を使おうとしている」ということです。
みなさん財政事情が厳しい中で、でも大盤振る舞いということですから、持ってない金を使う、つまり借金をする。そのことが金利を上げていく!
その金利高が経済の足を引っ張るようになるという矛盾した状況を生んでしまいかねない、今すでにそうなっている。

もう一つは、この調子で行くと下手をすると「お国頼みが癖になる」という状況に陥りかねない。だんだんだんだん、政府しかお金を使う人がいなくなる。徹底的にそれに行っちゃったら統制経済ですから、一気に行っちゃうことはないでしょうが、非常に危険な道に足を踏み入れることになる。これは結構危ない賭けになるのです。

Q~・~ アメリカはどうなる?
A~・~ アメリカについても気になることが2つありまして、ひとつは今言われた「のど元過ぎれば熱さ忘れる」という感じで、すぐに元に戻ってしまうということです。
もう一つ気にしていることは、オバマ大統領という人が「不本意男」化してしまうのではないか?ということです。
「不本意男」というのは何を言おうとしているかというと「不本意ながら、不本意ながら」「これは私の本意ではありません」と言いながら、どんどん非常にまずい方向に引っ張られてしまう。
たとえば、バイアメリカン条項というものが出て来るのを防げない、GMを国有化せざるを得ない。という風なことですね。
オバマさんには大きな期待を我々は掛けるわけですけれども、そして彼の本意というのは結構まともなところにある。
「アメリカを一国主義的な過去からきっと決別させる」というようなことを大いに宣言して、これは結構なのですが、その本意から「不本意ながら」と言いながら彼が遠ざかってしまうとこれはまずい展開になる。
「彼の今日の不本意男化度はどれぐらいか?」というようなことを我々はウオッチする必要があるのではないかと思います。

Q~・~ 台頭する新興国の成長は続くのか? 中国は?
A~・~ 先ほど島田さんが「屋台骨」という良い言葉を使われましたが、今の我々は「屋台骨たり得ない者に屋台骨役を果たしてもらわなければいけない」というところだと思うのです。
どちらかといえば中国は、屋台骨というよりはのど元に突き付けられたナイフのようなものではないかという気がします。
内部的なぜい弱性を持っているけれども成長性をもっている、だからそこに頼らざるを得ない、だけれどもそこが駄目になったら皆でダメになるという、非常に怖い存在ですね。
かつて戦後間もない頃には、世界はアメリカに依存しましたが、そのアメリカは圧倒的に強い、突出した存在だったから屋台骨たり得た。戦前においてはそれがイギリスでした。

今は、これがまさにグローバル化ということなのですが、「誰か一人が屋台骨を果たせない、それでもやっぱりこの人でしょう!」という誠にに危うい構築物を我々は目の当たりにしているのです。

Q~・~ どう解決?世界経済の課題 G8枠組み
A~・~ 今の世の中、Gは日替わりで良いのではないかと思うのです。
要するに、突出して強い存在が成り立ち得ないのがグローバル時代です。
そうであれば、もんだい問題ごとに適した「Gなんとやら」というものが形成されて行くのが今的なやり方ではないか。
いま福井さんが言われた「我が国のことは世界のこと、世界のことは我が国のこと」というのは物凄く重要なことで、そういう意味では今の時代は「一人は皆のため。皆は一人のため」という時代だと思うのです。
誰もが、問題によってはグルーピングを作ってゆく、「Gなんとか」でなければいけない、G決定打という発想自体が、今の時代にそぐわない。

Q~・~ 日本経済回復のカギは? 
A~・~ キーワードは「あなたさえ良ければ」という言葉だと思います。
「あなたさえ良ければ」、歌謡曲みたいですけれども、どういうことかといえば、日本の国内でも、企業たちが「自分さえ良ければ」「自分さえ生き残ることができれば」と、金融機関も「自分さえ生き延びることができれば」というようにして貸し渋りをしたり、派遣切りをしたり、すると結局自分で自分の首を絞めてしまうことになるのです。
そういう「自分さえ良ければ病」に陥らないという意味で、お互いに支え合ってゆく「あなたさえ良ければ」モデルを作ってゆく。
対外的にもそうですね。
冒頭(フリップに)数字が出てきましたが、日本の今年の成長率のマイナス度は突出して大きいわけですが、ということは、日本は最早、自分だけでは生きられない状況になってしまっていることが示されているわけです。
となれば、「あなたさえ良ければ主義」というのを内外において貫く、日本は決して「バイジャパニーズ」とは言わない、「ノンジャパニーズ」と言う、というふうなシナリオではないかと思います。

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1 コメント

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あなたさえ良ければ (一番星が)
2009-08-15 18:33:02
浜さんの「あなたさえ良ければ」という発言を聞いたとき、膝を打って共鳴いたしました。
大勢の方がこの言葉に耳を傾け手を止めたことに、私も大変嬉しく思います。
この言葉が世界中に広がることを願っております。
私も機会ある毎に多くの方にこの言葉を伝えてゆきます。
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