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黛信彦の時事ブログ

浜矩子語録(164) 政治主導=民意を聞く力

2012年07月15日 | 浜矩子語録

NHK15日放送の日曜討論は、民主党の分裂などで国民の政治に対する信頼が揺らいでいる、として“日本政治のゆくえ、いま何が必要か”を探った。 招かれた論客は、慶應義塾大学教授・片山善博、野村総合研究所顧問・増田寛也、同志社大学大学院教授・浜矩子、北海道大学大学院教授・山口二郎、名古屋外国語大学教授・高瀬淳一、批評家・宇野常寛、司会はNHK解説委員・島田敏男。 尚、番組進行に用いられたNHK世論調査結果は、7月6~8日の調査データである。  以下、Q~は島田敏夫、A~は妖艶なエコノミスト・浜矩子の語録.。

●どう見る、民主党分裂

世論調査結果:小沢新党への期待

大いに期待する・・・・08%

ある程度は期待・・・・11%

あまり期待せず・・・・30%

全く期待しない・・・・52%

Q~ 小沢新党、浜さんも厳しい見方を?

A~ 調査結果から、国民は良く分かっていて賢いな!という結果であると思います。 小沢新党は「国民の生活が第一」というネーミングになっている訳ですけれども、というよりも「自分の生活が第一だろう!」という雰囲気を国民が見透かしているという事ではなかろうかと思います。 ですから、「これ(調査結果)をしっかり受け止めないと」という国民の怒りを、でもこれを小沢さんに期待する必要はないし、(小沢さんには)期待できない。 むしろ山口さんが言われたように、民主党マイナス小沢は自民党に接近するという流れを回避して、小沢さんが出たということで如何に自分の声を発信するか、そこが問われていると思います。

●民主党マニフェストは?

Q~ 3年前の政権交代は、民主党のマニフェストに根拠のない数字が書いてあって、その数字に騙された国民が「本当らしさを感じた」結果だったと突き放す人もいますが?

A~ そもそも、財源とか数字がマニフェストとの関わりで問題になる事がおかしなことです。 マニフェストという言葉で私のイメージでぱっと出て来るのは共産党宣言ですが、その言葉の意味するものは「思いをあらわにする」、心情を謳いあげることに意味があるもので、誰になんぼカネを与える、そのためにカネをどこから捻出するか、消費税をどうするかというようなことを、そもそも書いた事自体、マニフェストに対する理解の浅さ、或いはマニフェストというものを非常に低いレベルに引き下げて、そこで国民に語りかけることに思想性の浅薄さが集中的に表れていたものだと思います。

そういうものにしたことには小沢さんの影響が相当あったと思いますから、それを掲げてどうのこうの(と新党を立ち上げる、と)言うのは、そもそもマニフェストというものに合わないのです。

●政権交代どう評価

Q~ 浜さん、先週、私がここに座って小沢さんにインタビューしたときに、「今回民主党と袂を別ったが、かつて自民党と袂を別って民主党と自由党が合流した勢力で新勢力を実現したことは意義があった」と強調していましたが、一方で、それが政治の混迷を生む事になったのではないか?という側面もありますが?

A~ 小沢さんがどう思っているかは別として、私は2009年の政権交代は本当に大きな意味のある本質的な政権交代だったと思います。 それまでの政治との決別を選んだわけで、それをあたかも「どうでも良かった」というように思ってしまうのは、危険な発想だと思います。 如何に呉越同舟であろうと、良く見れば如何に同じような顔触れであろうと、こういう人たちが違うフオーメーションをしないと政権を取れないという事を国民が彼らに示したわけですから、相当しっかり評価しておかなければならないと考えています。

その次にどういう展開になって行くかという事とについては色々言うべきところがありますが、責任与党そして責任野党という事の振る舞いができていない事が上げられます。

Q~ それは、現在進行形でもあります。

A~ まったくその通りです。 

●民自公連携をどう評価する?

世論調査結果:政権の枠組みで民自公3党の連携の支持政党別評価

支持政党    望ましい 望ましくない

調査の全体   44%  49% 

民主党支持者  69%  28%

自民党支持者  57%  40%

支持政党なし  36%  59%

Q~ 世論調査の結果をどう見る?

A~ 苦悩が滲み出ている気が致します。 山口さんがおっしゃったように「なんとしても元に戻させてはいけない」という思いでこう言わざるを得ない自己嫌悪を感じながら、「でも、これしかないよな」と。 3党連携などという言葉が定着することは、私はナンセンスだと思います。

そういう方向に進むと宇野さんが言われたように「何も変わらないじゃん、やっぱりそうか」と言われてしまうわけで、こういう方向ではない形で理念・思いを貫いて行くところにもっと民主党は進まなければいけません。

民主党は小沢さんが、うるさい邪魔な奴がいなくなったわけですから、もっとそこのところきちんと考えて行かなければいけない。 安易にこういう格好(3党連携)にもっていくことが、彼らを信じた有権者たちの思いを如何に傷つけているか、ということがこの数字に表れていると思います。 

●2大政党、既成政党、地域政党

世論調査結果:政党支持率

民主党・・・・15・2%

自民党・・・・19・8%

無党派・・・・52・0%

Q~ 世論調査の結果では無党派層が52%、同方式にした8年前の調査以来最高値。 2大政党制に期待し過ぎという指摘もあるが、次の総選挙を睨んでどうでしょう?

A~ 紹介をいただいた世論調査の数字は凄く恐ろしい数字です。 この無党派層のところから、先ほど来、高瀬さんから何度かご指摘のある地域政党、あるいは第三勢力、そういうものに流れて行く母体がそこ(無党派層)にあるわけですが、そういう政治状況になっていくことは民主主義の危機に繋がるものだと思います。 そういう状態を作ってしまったところのいわゆる2大政党の責任は重いと思います。 山口さんが言われたように、それでも(民主・自民が)これだけの支持を与えられていることに世論の苦悶が表れている。 宇野さんがおっしゃったようなことを、宇野さんのような世代の人々に言わせないような政治を行う事を考えなくてはいけません。

Q~ 片山さんから、民主も自民も党員がいなくて(少なくて)組織が占拠をしているというような話があるが、政党助成金を拒否している共産党は自前の組織力を持って主張している訳ですが、政党が足腰を鍛えることは今後出て来る新しい政党にも重要な課題だと思いますが?

A~ 政党の体をなしていないがために言ってしまって評価されるのは拙いことです。 2大政党を3年で諦めてしまうことはナンセンスだと思っています。 岩盤をようやく打ち破ったところでありますから、これから我々長生きしなくてはならないわけですから、忍耐強く見据えることが重要です。 

●日本政治の行方、いま政治に何が必要か?

Q~ 鳩山政権は「官僚は敵だ」と言って排除、管政権はそれでも「悶えた」、ところが野田さんになって官僚に「すっぽりハマって」しまった。 鳩山政権では「官僚は敵」と言っていたのに野田政権は「官僚は素敵だ」となってしまったと、片山さんが言うが政治主導については?

A~ 政治主導は当たり前というのは全くそのとおりです。 ということは政治主導の意味はどういうことかと言えば、国民の言うことを良く聞くことが本質的意味だと思っております。 そこを誤解して、「官僚をやっつけることだ」というレベルでしか考えなかったことが情けない。 政治は最大のサービス業でして、サービス業は、お客様は神様、神様の思いをしっかり受け止めることが最大のポイント。 「政治主導ってそういうことだよ」というところから出発すべきところだったと思います。

お客様(=神様=国民)のほうは粘り強く苦悶しながら、もうちょっと改善させられないかと言っている訳ですから、それに対して聞く力、政治主導とは、すなわち聞く力だと思います。

Q~ 誰がやってもそうだということですね。

A~ おっしゃるとおりです。

Q~ 有権者にとって、政治にとって何が必要か?

A~ キーワードは忍耐力だと思います。 知的忍耐力ともいうべきものです。 これは、有権者の側そして政治家の側の双方にとって、ここは知的粘りを持って、今の状況にあまり左右されずに突き進んでいくことが必要なところだと思います。


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