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黛信彦の時事ブログ

5大紙社説:首相問責決議で日経冷静、読売憤激

2012年08月30日 | 5大紙社説

5大紙は30日付の社説で、参院本会議が野田佳彦首相に対する問責決議案を可決したことを論評した。 自公を除く7会派が「反消費税増税」を掲げた決議案に自民党が乗って可決されたことで、自民党に対する風当たりが強い社説になり、特に読売が憤激した。

日経と毎日は、自民党をそのような振る舞いにさせた民主党の望ましくない対応を冷静に書いている。 以下に社説のポイント、末尾に毎日の抄録と日経の全文を記録した。 

小欄が感じる冷静度(最も冷静な日経を10とする)

●日経:10

●毎日:07

●朝日:05

●産経:05

●読売:01 

タイトル

●朝日:野田首相問責―無節操もきわまった

●産経:首相問責可決 この体たらくに終止符を

●日経:不毛な問責で国会審議をまひさせるな

●毎日:首相問責可決 責任放棄し幕引きとは

●読売:首相問責可決 自らを貶めた自民党の「賛成」 

自民党の対応

●朝日:自民党の自己否定にほかならない。

●産経:この決議に賛成するのは自己否定でしかない。

●日経:褒められたものではない。

●毎日:民主のやり口は非難すべきだが、問責決議案提出は筋違い、矛盾している。

●読売:政党として自らを貶(おとし)める行為だ。 

公明党の対応

●朝日:採決を退席した。こちらの方が筋が通っている。

●産経:公明党は反発して棄権した。

●読売:公明党は採決で棄権して、筋を通したではないか。 

民主党の対応

●朝日:党利党略を優先するという点では、民主党も(自民と)同じだ。

●産経:民主党も、問責可決の事態を回避する努力を見せなかった。

●日経:きっかけを与えたのは、与党の強引な国会運営である。

●毎日:「『近いうちに解散』は白紙だ」との無責任な発言が早くも聞こえてくる。 

残した重要課題

●朝日:一体改革の設計、赤字国債法案、原子力規制委員会の人事

●産経:特例公債法案、原子力規制委員会の同意人事、衆院小選挙区の「0増5減」

●日経:マイナンバー法案、ハーグ条約の批准、原子力規制委員会の同意人事

●読売:特例公債法案、マイナンバー法案、ハーグ条約承認案 

どうすればよい

●産経:歩み寄りができないなら、早期解散して国民の信を問うべきだ。

●毎日:まだ会期は1週間以上ある。 

毎日社説の抄録:首相問責可決 責任放棄し幕引きとは

民主、自民両党とも筋の通らぬ強硬策に訴えたあげくの混乱だが、実態は違憲状態である衆院の「1票の格差」など懸案を放り出し、国会の幕引きを図る茶番劇に等しい。「決めない政治」に逆戻りした首相と谷垣禎一自民党総裁の責任感を疑う。

どっちもどっちと言わざるを得ない攻防だ。

民主党は喫緊の課題である「1票の格差」是正に生煮えの選挙制度改革案などもあえて抱き合わせ、衆院通過を強行した。衆院解散の先送りを狙い、野党を挑発することで格差是正をつぶそうとしたのである。 

日経社説の全文:不毛な問責で国会審議をまひさせるな

野田佳彦首相の問責決議が野党多数の参院で可決された。このままでは国会審議が空転したまま9月8日の会期切れを迎える。赤字国債発行法案などの懸案を放置したままでよいのか。与野党は真剣に打開の道を探るべきだ。

参院での首相問責は2008年の福田康夫氏、09年の麻生太郎氏への決議に次いで3例目だ。きっかけを与えたのは、与党の強引な国会運営である。

最高裁は昨年、衆院の定数配分を「違憲状態」と判断した。1票の格差を是正する小選挙区の0増5減を実現しなくてはならない。

ところが民主党は政党同士の利害調整に時間がかかる比例代表の定数削減も混ぜ込んだ法案を与党単独で衆院通過させた。国会議員の身分に絡む法案を与党単独で採決したのは異例だ。野党の反発で法案成立は限りなく遠のいた。

民主党は野党に幹事長会談を呼びかけるでも、自党出身の横路孝弘衆院議長にあっせんを依頼するでもなかった。野田首相の解散権を封印する思惑から、違憲状態を続けたいと考えているとしか思えない。

ただ、それを参院での問責という形で意趣返しした自民党のやり方も褒められたものではない。決められない政治に逆戻りして困るのは民主党ではなく、国民だ。

憲法に規定された衆院での内閣不信任決議と異なり、参院の問責には法的な拘束力はない。問責された首相・閣僚相手の国会審議をしないという慣例にとらわれなければ、空転は直ちに解消できる。

積み残し案件は重要なものが多い。社会保障と税の共通番号法案(マイナンバー法案)は先に成立した消費増税法の関連法案だ。離婚時の子どもの親権に関するハーグ条約は長く日米の摩擦要因になっており、早く批准すべきだ。

与野党対立がこじれれば原子力規制委員会の人事案への国会同意まで先送りになり、同委の9月発足がずれ込むおそれもある。

福田、麻生両首相は問責から程なくして辞任に追い込まれた。自民党の思惑も早期の衆院解散を迫ることにあるのだろう。皮肉なことに民主党では「近いうちに解散との合意は白紙に戻った」として選挙先送り論が勢いづいている。

政治の駆け引きのための問責で国会審議がまひをする。こんな不毛な繰り返しに終止符を打ち、立法機関が本来の役割に立ち返ることを望む。


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