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「どうする日本!」

右と左の真ん中で日本と世界を眺める

黛信彦の時事ブログ

2012年元旦、5大紙社説。『力を出せ、日本!』

2012年01月02日 | 5大紙社説

韓国紙の中央日報が2011年3月12日付の第一面で東日本大震災発生当日の状況を「日本沈没」という見出しを付けて報じた事は「災害に苦しむ日本人を傷つけた」と、12月27日付で「反省文」を掲載し、新たに「力を出せ、日本」との見出しで編集し直したという。

李明博大統領が、さきの来日で見せた我儘な発言で消えかかったグローバルコリアの炎が、なんとか再燃した格好だ。

 

小欄も2012年の始まりにあたり『力を出せ日本!』と訴えたい。

具体的には、東日本大震災、福島原発事故からの復興に対してであり、グローバルな経済危機への創意工夫に対してであり、迂闊な政権交代を招いた政治意識の勇気ある反省に対してである。

 

さて、年頭の5大紙社説の要点は以下であり、難しい時代の世界に日本はどう対応すべきかを主張している。

「国を開け。シルバー(高齢化)とグリーン(環境)で成熟社会実現」:朝日

「歴史に学び世界に友を求めよ」:日経

「主要国の指導部の交代の年、パワーゲームに負けないための憲法改正」:産経

「国民にしかできない有権者としての判断を下せ」:毎日

「消費税、沖縄、TPP、原発の各課題を先送するな」

 

以下、その抄録である。

●朝日新聞(社説):ポスト成長の年明け―すべて将来世代のために 新しい年も難問が続く。

難問が織り重なったのは偶然だが、なにか共通した問題を暗示しているように思う。

それは、戦後ずっと続いてきた「成長の時代」が、先進国ではいよいよ終わろうとしているということだ。

 

経済成長は多くの問題を解決してくれる魔法の杖には違いないが、そのタネを見つけられぬまま財政と金融に頼って成長の夢を追った結果、各国とも難問を抱えこんでしまっている。

従来の手法が経済成長を生まない。そんな歴史の大きなトレンドが変わりつつある。

 

地球大での環境や資源の限界を考えても、低成長に適応していくことは好ましい。

だがしかし、経済成長をしないで、巨額の財政赤字を処理しつつ、急激に進む少子高齢化を乗り切っていけるのか。

ここで、次なる難問に突き当たる。

新興国が激しく追い上げてくる大競争の時代、人口が減りだした日本は、のんきに構えてはいられない。よほど努力しないと現状維持すら難しい。

だから、国をもっと開いて打って出て、新興国の成長力を取り込み、世界に伍(ご)していける若い人材を育てていかねばならない。それを怠れば、この国の将来が危うくなる。

 

シルバー(高齢化)とグリーン(環境)が、次の活力ある経済をつくるタネになり得る。ここに力を注ぐべきだ。

それは成長から成熟へ、社会を切り替えることでもある。

 

●産経新聞(年のはじめに:中静敬一郎):日本復活の合言葉「負けるな」

「負けるな うそを言うな 弱いものをいじめるな」。江戸期、薩摩藩の武士の子弟を育てた郷中(ごじゅう)教育の訓戒だ。この郷中教育から西郷隆盛、大久保利通ら強い明治をつくった偉人が輩出した。

鹿児島市立清水小学校ではこの訓戒が「清水魂」とされ、脈々と今に引き継がれている。

毎年盛夏、4年生以上が桜島から対岸の鹿児島市までの錦江湾4・2キロの横断遠泳を試みる。

驚くのは、100人前後の希望者のほぼ全員が猛訓練に耐え、完泳することだ。学校、父母、地域が一体になって励ますからだという。とりわけ年長組が年少組を教え導くことが大きい。死力を尽くして目標を制覇できた児童は大きな自信を得て晴れやかになる。

 

「負けるな」は、昨年3月の東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の被災現場でも心の合言葉になった。だが、戦後日本はこれらを忘れてしまっていたのではないか。

 

日本が強い国に生まれ変わるためには胆力と構想力を持った指導者が欠かせない。今年、主要国の指導部の交代により、国家間のパワーゲームは熾烈(しれつ)を極める。狡猾(こうかつ)な手口は中露にとってお手のものだ。したたかに、しなやかに自由と民主主義を守る国々と連携を強め、繁栄と安全という国益を守る必要がある。これまでのように特殊事情を釈明して逃げ回るのではなく、自らのアイデア、世界経綸(けいりん)、独立自存の精神が問われている。負けてはならないのだ。

 

昨夏の清水小学校の遠泳では、白帽の4年生と隊列を組んで泳ぐオレンジ帽の6年生が「白帽がんばれ」「東北がんばれ」「日本がんばれ」と声をかけ合ったという。日本の底力を信じたい。

 

●日本経済新聞(社説):転換期日本変化の芽を伸ばす(1) 資本主義を進化させるために

~・~ 「日本は今悩んでいる。日本はどこへ行くのだ。日本は何をするのだ。日本はどうなるのだ」「日本はもう(中略)進むだけ進んだのではないか。生々たる発育期をすぎて、静止状態に入ったのではないか。注意すべきは発足期にたつ支那(原文のまま。中国をさす)であって、日本の時代は過ぎたのではないか」 ~・~

こんな書きだしで、はじまる本をみつけた。そっくりそのまま今に当てはまる内容で、本のタイトルも『転換期の日本』である。

奥付をみると、発行日は19291018日。世界恐慌がおこった暗黒の木曜日である1024日の6日前である。

著者は中外商業新報(日本経済新聞の前身)で外報部長をつとめ、戦争批判の『暗黒日記』で知られる自由主義者の評論家・清沢洌(きよし)だ。彼が筆をとった192030年代と、現在との類似性がしばしばいわれる。

 

当時は帝国主義の時代だが、第1次グローバル化の時代ともよばれる。終わりを告げたのは世界大戦だ。世界のリード役が英国から米国にかわっていく過渡期でもあった。第2次グローバル化の時代といえる現在、歴史の教訓にしっかり学ぶ必要がある。

 

民主主義、資本主義にかわる新たな理念は、今のところ見つからない。だとすると、民主主義、資本主義のあり方を改良しながら使っていくしかない。新年を、資本主義を進化させる年にしたい。

 

清沢は『転換期の日本』を以下のように締めくくっている。

~・~ 「日本が再出発するためには」「国家の目標を高く掲ぐるを要する」「国家の目標とは(中略)、世界を家とし、世界に友を求めることである」 ~・~

これはまさに現在に通じる。今様にいいかえると次のようになるだろう。日本再生のためには、国家目標としてグローバル社会で生きぬくことを高く掲げ、転換期を乗りこえていこう――。

 

●毎日新聞(社説):2012年激動の年 問題解決できる政治を

ユーロ危機で見えてきたのは、マーケットの千変万化の要求に対し、各国間、各国内の利害調整がなかなか追いつかない、という民主政治の苦悶であった。一方、アラブの春も、直面しているのはいかに民意を代表できる新しい政体をつくり上げるか、という民主政治の試行錯誤である。本来民主政治の本家として、こういった国際経済、政治の危機管理に中枢的役割を果たすはずの米国も、国内政治に足をすくわれその問題解決能力をフルに発揮できずにいる。

 

ひるがえって日本はどうか。

野田佳彦内閣の現状は、決して万全ではない。それどころか、八ッ場ダム建設決定でマニフェスト総崩れと言われ、党内求心力と支持率の低下に苦しんでいる。国民には政治への幻滅が再び広がり始めている。

 

さて、政治家が説明、説得、妥協の術を使い果たし、それでも問題解決ができない場合は、いよいよ我々国民の出番である。他に選択肢のない民主政治の中で、どの党とどの政治家が優れた判断力と強い情熱を持って彼らにしかできない仕事をしてきたか、また、する意思と能力があるのか。国民にしかできない有権者としての判断を下し、問題解決を後押ししようではないか。

 

世界で民主政治がさまざまな挑戦を受けている時に、日本から一つの誇るべき政治的プロセスと結果を発信できないか。ピンチをチャンスにつなげるのもまた政治である。

 

●読売新聞(社説):「危機」乗り越える統治能力を ポピュリズムと決別せよ

世界的に「危機」が常態化しつつある。

日本経済は、欧米の混乱に伴う超円高と株安に苦しみ、企業の生産拠点の海外移転による産業空洞化も加速している。復興を進めて経済を成長軌道に乗せたい。

 

それには、政治が機能不全から脱却する必要がある。民主党政権の統治能力も問われている。

 

野田首相は、社会保障の財源としての消費税率引き上げに道筋をつけ、成長のカギを握る自由貿易を推進し、現実的なエネルギー政策を確立しなければならない。

 

 沖縄、TPP、原発の各課題は、いずれも先送りできない。日本が「3・11」を克服し、平和と繁栄の方向に歩を進められるか。世界が注目している。


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