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太宰治の作品の中で、一番好きなもの。
大学生のときにはじめて読んで以来、もう何回読み直したことか。
基本的に同じ作品を読み直すのが好きなほうではあるけれど、
それでも、もう一度読み直したいと思う作品は、残念ながら
そんなに多くはないのです。
でも、今回また斜陽を読み返して思うのは、やっぱり出だしが肝心なんだなということ。
朝、食堂でスウプを一さじ、すっと吸ってお母様が、
「あ」
と幽かな叫び声をお挙げになった。
たったこれだけで、食堂のダイニングテーブルにきちんと座って
平たいお皿に盛られたコンソメスープを、ちょっと大き目の銀のスプーンで
口にゆっくり運んでいる、ほんのり薄化粧をした「お母様」が目に浮かんできます。
もちろん、時代は戦後すぐなので、銀のスプーンやお化粧なんかはなかったかも
しれないし、コンソメスープもあり得ないかもしれないけど、
一応現代っ子のはしくれとしては、そんな情景を思い浮かべてしまうのです。
お話は、娘のかず子の目を通して描かれていきます。
最後には母も弟も死んでしまい、不倫の子を育てながら
強く生きていく決意をするかず子なのですが、どちらかというと
かず子のように現実に向き合わざるを得ないわたしは、
自分にはないフワフワ感や優雅な雰囲気を持つ
お母様について書かれている部分が好きなんだよなあ。
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