ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
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『ホテル・カリフォルニアの殺人』制作裏話 ~ロック探偵はいかにして誕生したか~

2017-09-28 18:45:59 | 『ホテル・カリフォルニアの殺人』
これまで、拙著『ホテル・カリフォルニアの殺人』の内容紹介をしてきました。
しかし、あらすじに関しては、大まかなことはもう書きました。
これ以上書くと、ネタバレになってしまいます。

なので、ここからは、『ホテル・カリフォルニアの殺人』制作裏話的なことを書いていこうと思います。番宣といえば、メイキングも定番ですからね。

まずは、主人公であるトミーこと富井仁というキャラクターがいかにして生まれたかということについて。

トミーという名が、The Who のロックオペラ“TOMMY”からとられていることは、『ホテル・カリフォルニアの殺人』についている川出正樹さんの解説でもあきらかにされているとおりですが、実はトミーは、この作品で初めて出てきたのではありません。

トミーの登場作品は、私のいわゆる「自分内シリーズ」になっているのです。

トミーがはじめて出てきたのは、いまからもう7年ほども前に書いた作品でした。
その時ある新人賞に出すためにミステリー作品を書いていて、そこでトミーが探偵役として初登場しました。“音楽を手がかりにして謎を解くロック探偵”という発想自体はもっと前からありましたが、それが具体的に形をとったのです。

そのときは、ジョン・レノンの「イマジン」をモチーフにした作品でした。
音楽を手がかりにして謎を解くという趣向は同じで、章立てを「一章」「二章」……とせずに Track.1、Track.2 ……として、それぞれに題材となっているアーティストの曲名を使うというスタイルも、このときからありました。

しかしながら、そのときのトミーは、いわばプロトタイプのようなもので、『ホテル~』に出てくるトミーとはかなり設定が違っていました。

まず、年齢が30代の後半で、いわゆるアラフォー。
若いころにプロミュージシャンを目指していたものの、その夢がかなわず、それでもあきらめきれずに、その日暮らしをしていたところを、伝説的なロックミュージシャンとたまたま知り合いローディになった……という人物でした。

ちなみに、ローディというのは、ミュージシャンの楽器などを管理するマネージャーのような職業です。プロゴルファーにとってのキャディのようなものと思ってもらえればいいでしょうか。その点からしても、後のトミーとはだいぶ違います。

また、あろうことか、そのときのトミーには下の名前がありませんでした。
作品全編をとおして、一度も下の名前が出てこないのです。周りからはたいてい「トミー」としか呼ばれないので話の進行において支障はないのですが、しかし、いくらなんでもフルネームがわからないのは問題があるだろうという話ですね。

また、作中のトミーはアフロヘアという設定もありました。
これは、彼が仕えている大物ミュージシャンというのが忌野清志郎をモデルとしていることに関係があります。キヨシローがマネージャー(だったと思います)のパッとしない髪形をみて、「こうなったら俺がなんとかしてやる」といってアフロヘアにしたという逸話があって、それをもとにして、トミーもアフロヘアにされてしまったのでした。イメージとしては、下図のような感じです。



結果として、その作品は、受賞とはなりませんでした。
途中経過を確認していない(これもありえない話ですが、その当時の私は「受賞しないなら一次も二次も関係ない!」と思っていました)ので通過成績もわからないのですが、まあおそらく一次選考も通っていないでしょう。
「これはもう受賞間違いなしだろ!」と思って投稿した(応募者は、たいてい誰でもいつもでそう思ってるものです。たぶん)作品があえなく撃沈……以来、トミーというキャラクターもしばし封印されることになります。
では、そんな彼がいかにして復活するにいたったか――それについては、次回書きたいと思います。


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