ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
『ホテル・カリフォルニアの殺人』(宝島社文庫)発売中です!

自民党総裁選から一年

2022-09-29 22:32:09 | 過去記事

岸田文雄氏、自民党新総裁に

自民党総裁選の投開票の結果、岸田文雄さんが新総裁に選出されました。まあ、事前に蓋然性が高いと考えられたシナリオの一つが実現したという感じでしょう。予想外のことがあったとすれば......


一年前に、こんな記事がありました。

すなわち、岸田政権もそろそろ一周年ということになるわけです。

「一年ぐらいでもたなくなりそう」とこの記事では書きましたが、衆院選に続いて参院選も乗り切り、黄金の三年間などといわれる長期安定の様相もみせていました。
ただ、ここにきて支持率は低下傾向……案外、国葬の一件が躓きの石ということになるかもしれません。

黄金の三年間をなげうって解散総選挙に乗り出すという観測も一部にあるようですが、さあ、どうなるでしょうか。



カプリオーレ 国葬に思う

2022-09-27 22:52:43 | 時事


安倍元総理の国葬が行なわれました。

武道館での国葬。靖国通りを封鎖して……
そのニュースをみていて、私はタイマーズの「カプリオーレ」という歌を思い出しました。
 
  足の速いカプリオーレ
  さすがのお前も今日は走れない
  すべてのハイウェイ鎖された

というこの歌は、直接的には昭和天皇の大喪の礼をモチーフにしています。

  国を挙げてのお葬式の日は
  彼女のトラックも走れない
  やだな やだな
  やだやだやだな
  すべてのハイウェイ鎖された

  エンジン休ませてカプリオーレ
  高速道路にポリスが並ぶ
  なんだか大変だね ご苦労さん

私としては、君主制が存続している国で君主の死去に際して国葬というのは、まあ儀礼的なものとして受け入れられなくもありません。
しかし、政治家という場合はどうか。
警備のためにずらりと居並ぶ警察官……私には、どこか異様に感じられます。
タイマーズというのはいうまでもなく忌野清志郎がやっていたバンド。こういう仰々しさ、ものものしさを茶化す諧謔精神が今ほど必要とされるときはないんじゃないでしょうか。


いっぽう葬儀に対して反対するのは失礼だというような意見もあるようですが……これは国葬だといっているわけですから、そういう話でもないでしょう。
個人が私的に行なう葬儀であれば、誰も反対はしません。しかし、多数の警官を動員して、公道を通行止めにして公的行事として行うとなれば、話は別。反対派は黙っていろなどという態度は、国家儀礼の私物化というそしりを免れません。


また、タイミングとしては、静岡の水害・断水というのもあります。
カナダのトルドー首相はハリケーン被害に対応するために直前で出席をとりやめましたが、この国では静岡の水害があっても国葬を実行するという……これがすべてを象徴しているように私には思えます。

世論調査をみても、軒並み反対多数という状況。
おそらく、実行する側にもやめたほうがいいと思っている人が少なからずいると思うんですが、しかし、そう思っても言い出せないというところでしょうか。それだとロシアみたいなことになってしまうわけですが……



ロシア、さらに泥沼へ……

2022-09-24 21:24:49 | 時事


ロシアによるウクライナ侵攻開始から今日で七か月が経ちました。

この戦争では最近ちょっと動きがあり、ロシア側はとうとう「部分的動員令」に踏み切りました。
総動員とはいかないまでも、予備役をおよそ30万人召集して戦力の増強をはかるということです。

かつての大日本帝国をなぞるような振る舞いをみせてきたロシアですが……旧日本軍の失敗としばしば指摘される“戦力の逐次投入”ということも再現し始めたようです。
現在のロシアの姿をみていて、あれは「一気に増派すると意思決定者の判断の間違いを認めることになるから」という理由もあったんだなあとわかる……ますますロシアが生ける反面教師のようになってきています。

もちろんウクライナの反転攻勢がかなり顕著になってきているということが背景にあるわけですが……しかし、多少の戦力増強では、そううまくいくとも思えません。
この点はやはり、旧日本軍の失敗が教訓となるでしょう。
前に書きましたが、敵の領土に攻め込んでいって、その相手が国外から支援を受けている場合、侵攻する側にとっては際限のない消耗戦となってしまいます。これはまさに、かつての大日本帝国が大陸で犯した過ちです。叩いても叩いても敵の力はいっこうに弱まらず、こちらの投入した軍事資源が無為に損耗していくばかり……そうして、進むも地獄、退くも地獄という状況に陥ってしまいます。
今回の動員で、ロシア国内では反戦運動が再燃しているといいます。
また、ロシアから国外に脱出する人も増えているとか……それらの動機は自分が死にたくないからということかもしれませんが、それで大いに結構です。寺山修司の言葉でいえば「身捨つるほどの祖国はありや」と問われる状況で……いまのロシアだったら、答えはあきらかにノーでしょう。いかれた独裁者の支配する国家のために命を捨てるなどというのはまったくばかげたことです。国外脱出するなり、腕を折るなりして、どんどん召集を逃れてほしいと思います。



宮沢賢治「烏の北斗七星」

2022-09-21 22:14:28 | 小説


今日9月21日は、賢治忌ということです。

昭和8年、宮沢賢治がこの世を去った日……ということで、今回は、宮沢賢治について書こうと思います。



唐突ですが、宮沢賢治と金子みすゞは、どこか似ていると思うのです。

どちらも、生前にはほとんど無名だった詩人。
そうなった要因は、両者の共通点と、その時代背景があると私は考えています。そのあたりについて、ちょっと思うところを書いてみようと思います。


共通点の一つは、相対主義。

たとえば、有名な「注文の多い料理店」。
この作品においては、主と客、食うものと食われるものの関係が反転します。
それは、「向こうがわから見たらどうなのか」ということなのです。
人間はほかの生物を食うことで生存している。それを食われる側からみたらどうなのか……このモチーフは、金子みすゞの「大漁」の詩に重なるところがあるでしょう。このモチーフは、賢治の「よだかの星」などにも表現されています。

そして、イノセンス。

たとえば「貝の火」という短編は、非常にわかりやすい寓話といえるでしょう。

この作品では、善行を施した主人公の兎ホモイが「貝の火」という宝を手に入れます。手入れ次第でどんなに立派にもなるという宝珠ですが、一生満足にもっていることができたものはほとんどいない……ホモイも、やがて慢心し、増長していくことにより、宝珠の輝きは失われ、そのなかに燃えている炎はくすんでいってしまうのです。

僭越ではありますが、この作品は私が先日このブログに掲載した掌編「夏祭り」のテーマと通ずるものがあると思います。
ただ、一応申し上げておくと、私はこの作品をパクったわけではありません。
実は、私がこの「貝の火」という短編を読んだのはつい数日前のこと。賢治について何か書いてみるかということで全集の中からいくつか拾い読みしているときに、たまたま出会ったのです。つまりは、イノセンスとその喪失というテーマを共有しているということなのです。とりあえず、そういうことにしておいていただきたい。


それはさておき……記事のタイトルに掲げた「烏の北斗七星」です。

これも、全集の中から今回初読の作品。
あまり有名でない作品を取り上げようということで、これを選びました。相対主義とイノセンスということがよく表れていて、また、今の世界情勢に照らしてタイムリーでもあろうと思います。

描かれるのは、烏の戦い。
主人公である烏の大尉は、敵対している山烏との戦いに臨みますが、その敵を心底から憎むことができません。
結果としては、山烏と戦って相手を倒すわけなんですが……その戦功によって少佐となった烏は、北斗七星(烏たちのあいだでは「マヂエル」と呼ばれている)にむかってこう祈ります。


あゝ、マヂエル様、どうか憎むことのできない敵を殺さないでいゝやうに早くこの世界がなりますやうに、そのためならば、わたくしのからだなどは、何べん引き裂かれてもかまひません。


読者が束の間当惑してしまうほどのピュア……
この一節こそが、宮沢賢治が生前評価を受けなかった理由をもっともはっきり表しているように思われます。
ここからわかるように、宮沢賢治の作品世界は、富国強兵・植民地主義という思想とは相いれないわけです。
そしてそれが、金子みすゞともつながってくることになるでしょう。
「向こう側からみたらどうなのか」という視点は、富国強兵・植民地主義――つまりは帝国主義に対する根源的な批判を投げかけます。
それが、大日本帝国には受け入れられないものだった……宮沢賢治や金子みすゞが生前にほとんど評価を受けなかったのは、そういうこともあるんじゃないでしょうか。

最後に、この作品の朗読がYoutubeにあったので、リンクさせておきます。


【朗読】宮沢賢治「烏の北斗七星」

サムネ画面に、先に引用した部分が書かれています。
朗読動画はいくつかありますが、同じようになっているものが他にもありました。やはり、この一節が本作のハイライトということでしょう。



3DCG夏祭り

2022-09-18 21:52:09 | 3DCG

今回は、ひさびさに3DCGを。

前に短編小説「夏祭り」というのをやりましたが、そのイメージにあわせた3DCGを作ってみました。

使用ソフトは例によってblender。
モデルはもちろん、あの小説の主人公である山田聖美です。まあ、前に出した山田聖美と同じで、別のフィギュアをちょっといじったものなんですが……


夕暮れふうに。
動かせるようにはしてありますが、首より下の部分は浴衣でごまかしてます……


おまけに、小説のモチーフである「夏祭り」の動画を。
前にジッタリン・ジンのバージョンを紹介しましたが、今回は Whiteberry のカバー。イメージとしてはこっちのほうが近いかもしれません。

Whiteberry「夏祭り」MUSIC VIDEO