今回も、前回に引き続き、政治ネタをからめた音楽記事です。
登場するのは、マギー・ロジャーズというシンガー。
2019年デビューということで、このブログで扱っているアーティストとしては、比較的新しい人といえるでしょう。
大学の授業で曲を作ったところ、それを聞いたファレル・ウィリアムズが感極まって涙を流したとか……そんなことで話題になり、注目されている人です。
その曲が、Alaskaです。
Maggie Rogers - Alaska (Official Video)
ニューポート・フォークフェスティバルなんかにも出ていて、フォークの方も向いているようで……そういうこともあってか、昨年ジョーン・バエズと共演したりしていました。チベット支援のイベントで、We Shall Overcome などを一緒に歌っています。
で、最近また、彼女がジョーン・バエズと共演した話題がありました。
しかも、そこでのメインは、ニール・ヤングだったのです。
その舞台となったのは、バーニー・サンダースが主催する政治集会。
サンダースといえば、米大統領選にも何度か無所属で出馬している闘士。トランプ批判の急先鋒でもあり、各地で集会を開いているようです。先日、ロサンゼルスで大規模な集会があり、そこにマギー・ロジャーズも参加。この集会で、ジョーン・バエズ、ニール・ヤングとの共演となったわけです。
ジョーン・バエズは、まさにフォーク界伝説の歌姫。そしてニール・ヤングも、60年代フォーク的なスピリットを色濃くもつロッカーです。そんな二人のレジェンドと共演するマギー・ロジャーズという人が、いかにすごいかということでしょう。
3人が共演している様子を集会参加者が撮影した動画があります。
Neil Young at LA Ca Bernie Sanders AOC Fighting Oligarchy Rally w/ Joan Baez & Maggie Rogers
ニール・ヤングが二曲目に披露しているのは、Rockin' in the Free World。
ロック史にさまざまな逸話を残す名曲です。
自由な世界でロックし続けよう――という歌詞は、発表当時の文脈においては一種の反語表現だったわけですが……現実が我々の理解を超越するほどにドリフトしてしまうと、反語はもはや反語として機能しなくなってしまいます。
ロシアによるウクライナ侵攻開始直後にロバート・フリップ夫妻がこの曲をカバーしたのは、そういうことだったでしょう。
そして、2025年のアメリカでもまた、そのときと同程度に現実がドリフトしています。
それがすなわち、トランプ大統領が世界にもたらした混乱です。
関税問題に端を発する混乱からトランプ氏への逆風が強まっていますが、いまアメリカで起きている反トランプのうねりは、多様性という観点ともつながっています。
トランプ大統領が打ち出してきた反DEIの態度は、かねてから批判されていました。50501などの運動は、むしろそちらが主流でしょう。その点がどうあれ、経済に関しては間違ったことはしないだろうと考えるトランプ支持者も少なからずいたと思われますが……今回の経済の大混乱を受けて、そこもあやしいとなってきて、反トランプの声が俄然高まってきているわけです。二期目に比べて思い切ったことができる体制になったことで、むしろトランプという人のダメな部分が露わになったということでしょう。私に言わせれば、そんなの最初からわかってたことじゃないかというところですが……ここまでの事態を引き起こしたからには、今後の動向でどうにか市場の混乱が収束をみたとしても、トランプ大統領に政策のセンスがからっきしないという評価は動かしがたいものとして定着すると思われます。上記の問題以外にも、移民問題で司法と対立したり、助成金の問題でハーバードと対立したりといったこともあります。そういったさまざまな問題の帰結として、世界中で“アメリカ離れ”を招き、アメリカへの旅行者が激減するという事態に直面してもいます。こうなったうえは、もう任期途中で辞任に追い込まれるというニクソン以来の不名誉な記録を作って、合衆国政治史に汚名を残してもらいたいところです。
マギー・ロジャーズに話を戻すと……この人は、ビョークなんかにも影響を受けているんだそうで、政治活動への参加というのは、そういったところもあるんでしょうか。ローリン・ヒルをよく聴いていたというような話もありますが、そうすると、フォークとはまたずいぶん違った趣もあります。ニール・ヤングやジョーン・バエズといった人たちは、もうその方面ではおなじみですが、こうしてもっと若い世代、違うジャンルからこういうアーティストが出て来て異議申し立てをするのは、頼もしいところです。