先日、ピロウズの解散という話がありましたが……
この件に関連するウェブ上の記事を読んでいたら、さわおさんがロックの方向に進むきっかけとして、マイケル・シェンカーの名が出ていました。
中学生の時にマイケル・シェンカー・グループのAre You Ready to Rockに出会い、これをギターで弾いたことが、大きな経験だったといいます。
Are You Ready to Rock (2008 Remaster)
「ロックの準備はできているか?」という問いかけに、さわおさんはイエスと答えたわけです。
ピロウズとMSGというのはちょっと意外な組み合わせという気もしますが……そこがさすがのマイケル・シェンカーということでしょう。この人は“神”とも称されるギタリストであり、ジャンルを問わず多くのアーティストにインスピレーションを与えてきたのです。
ここで一応、マイケル・シェンカーという人の基本情報。
マイケル・シェンカーは、スコーピオンズのルドルフ・シェンカーを兄に持つギタリストです。
代名詞のフライングVも、もともと兄がもっていたフライングVをちょっと借りて弾いたことがきっかけといいます。本人が「Vを探し求めたのではなく、Vが俺のところにやってきた」と語るように、出会いは偶然だったわけですが、Vの部分に足を差し込むようにして固定することでビブラートをより豊かに表現できる……というふうに、音楽上の利点もあるそうです。
シェンカー兄弟はドイツ出身でありスコーピオンズはドイツのバンドですが、マイケルがギタリストとしてワールドワイドに売り出したのは、ブリティッシュ・ハードロックのバンドUFOにおいてでした。
UFOは、ディープ・パープルやレッド・ツェッペリンといったレジェンド世代の存在です。このブログで以前書いたように、もうフェアウェルツアーをやって活動終了という状態ですが、再結成の噂もささやかれています。
昨年マイケルは、50周年を記念してUFOの楽曲をカバーするアルバムをリリースしています(自身が加入して初のアルバムとなるPhenomenonがリリースされたのが1974年で、そこを起点として50周年ということのようです)。
収録曲のいくつかはこのブログに載せてきたと思いますが、ここではRock Bottomの動画をリンクさせておきましょう。ハロウィンのカイ・ハンセンが参加しています。これも、前にどこかで紹介したような気はしますが……
MICHAEL SCHENKER - Rock Bottom feat. KAI HANSEN
私事ですが、ちょっと前に地元のライフハウスにいったら、そこでこの曲をカバーしているバンドがいました。もう半世紀も前の曲ですが、それがこうやって今でも演奏されている……マイケル・シェンカーというのは、そういう存在なのです。
この“神”にまつわる伝説はいろいろあるわけですが、オジー・オズボーンのバックギタリストに誘われたというのも、大物ぶりを示すエピソードでしょう。
オジー・オズボーンのバックギタリストとして知られるランディ・ローズが飛行機事故で死去した際、マイケルは、オジーから直々に後任の打診を受けていたといいます。
しかし、結果としてこれは破談に。
このときマイケル・シェンカーがプライベートジェットを要求したという話がありますが、マイケル本人によれば、これはわざと法外な要求を出して破談にもっていくためだったとか。その当時は状況的にオジーのバックにつくことが難しく、うまく断ることもできずにそういうふうにしたというのです。さすがにマイケル・シェンカーVSオジー・オズボーンともなれば、話のスケールが違います。
今年は、来日も予定されていますが……マイケル・シェンカーは日本にも結構愛着をもってくれているようです。
昨年は、先述した50周年記念の一環として、メインギターとして使用してきたギターDean V を日本のモバオクに出品するなどということもありました。このオークションの結果がどうなったのかというのはよくわかりませんが……悪質な転売屋の手に渡っていないことを願うばかりです。
最後に、もう一度さわおさんの話ですが、マイケル・シェンカーという人の考え方は、どことなくさわおさんに通ずるところがあるような気もします。
マイケルは自らを「音楽の修道士」と表現し、「本当に自分がやりたいことをやるだけ。誰かの真似をするのではなく、自分で選んだ方法でそれをやる場所にいるだけなんだ」と語っていますが、この言葉はピロウズのNEW ANIMAL という曲を思い出させます。
the pillows / NEW ANIMAL
この歌のなかでさわおさんは「審査員は自分自身のほかに誰もいらない」「誰かになりたいわけじゃなくて、今より自分を信じたいだけ」と歌いました。この孤高こそが、彼らを真のアーティストたらしめているものなのでしょう。
ちなみに、ここでさわおさんが弾いている白黒のV字ギターは、まさにマイケル・シェンカーへのリスペクトを示すものでしょう。さわおさんといえば白黒カラーのサイクロンも知られていますが、それだけマイケル・シェンカーにはリスペクをもっているわけです。ただそれは、歌詞にもあるとおり、マイケル・シェンカーの真似をしたいということではありません。自分がやりたいことをやる、誰かの真似をするのではなく――そういうアティチュードを共有するということなのです。だからこそ、彼らは力強いロックを奏でることができたのでしょう。