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ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
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ストリートピアノ論争

2025-03-27 23:38:20 | 時事


ストリートピアノが論争になっています。

きっかけは、とある商業施設においてあるストリートピアノがXに投稿したこと。
大雑把にいえば、ちゃんと弾けるようになってから弾け、へたくそな演奏を聴かされるのは苦痛だ、といったことでしょう。これが、プロミュージシャンやいわゆる文化人的な人たちを巻き込んだ騒動に発展しました。


論点はいくつかあると思いますが……私としては、音楽はもっと自由でいいんじゃないかと。

自由ということでいうと、自由と迷惑の葛藤というのが表れているという見方もできるんじゃないかと思います。誰かにとっての自由の行使が、他の誰かにとっては迷惑になる……そういう葛藤が生じたときに、この国では自由のほうが譲歩を迫られることが多いという、そういう問題です。結果としてストリートピアノ休止ということになったのは、そういうことなのではにないかと。

今回の件とは微妙に論点がずれているようにも思われますが……これは、隠れた問題としてあると思います。

私のよくいく商業施設にも、ピアノが置いてあります。

当初はフードコートにあったんですが、いつしか、下のようなスペースに移動していました。



フードコートに比べると、閑散としている場所です。
想像ではありますが、やはりクレームがきてたりもしたのかな、と……

今回の件は、音楽上のうまい、下手という論点から、「下手な奴が人前で演奏するな」という態度が炎上したと思うんですが、自由か迷惑かが論点になった場合、この国の世間は、むしろ「迷惑」の側に傾くような気もします。
関連するネット記事などを見ていると、ストリートピアノが苦情を受けて撤去されたり移動したりするトラブルは前からちらほらあるということで……そういうことは特に騒動にもならずにひっそり行われているということのほうが、むしろ興味深い気もします。
そうすると、今回のストリートピアノ論争からは実はかなり深い問題が垣間見えるのではないかとも思えるのです。



ミュージックの日 2025

2025-03-19 23:29:10 | 日記

今日3月19日は、「ミュージックの日」。
ということで、例年どおり、音楽動画特集です。



先日、ジミー・ペイジが英国のAI政策に反対の意思を示したという話を紹介しました。

あの声明のなかで、ジミー・ペイジは音楽を「魂のぶつかり合い」と表現しています。
その言葉どおり、彼は長いキャリアのなかでさまざまなミュージシャンたちと共演してきました。

今回は、そんな大物ミュージシャンたちの「魂のぶつかり合い」を特集しようと思います。


ジミー・ペイジが参加したスーパーグループ、The Firm。
ボーカルはポール・ロジャース、ドラムはユーライア・ヒープのクリス・スレイド、ベースは、トニー・フランクリンとなっています。

The Firm - Radioactive "Official Music Video"

このメンバーで集まってできた作品がこれなのか……というところはちょっとあって、一般的にもあまり評価はされていないと思われますが……しかし、ジミー・ペイジらしさを感じさせるギターは随所に聴くことができます。


トニー・フランクリンつながりでもう一つ、Blue Murder。
今年死去したジョン・サイクスが、カーマイン・アピスとともにやっていたバンドです。ベースはトニー・フランクリンが弾いていました。

Blue Murder - We All Fall Down


大物のコラボといえば、最近日本でも話題となりました。
布袋さんとCharさん。

布袋寅泰 / HOTEI 「Side by Side (feat. Char)」【Official Music Video】  



布袋さんは、これまでにもいろんな人たちとコラボしています。
たとえば、ブライアン・セッツァー。

布袋寅泰 / HOTEI vs Brian Setzer - 「BACK STREETS OF TOKYO」


あるいは、イエモン吉井さん。

布袋寅泰 / HOTEI - 「Dangerous feat. 吉井和哉」【OFFICIAL MUSIC VIDEO】


一方のChar さんは、Johnny, Louis, Char というグループをやっています。
ジョニー吉長に、ゴールデン・カップスをやっていたルイズ・ルイス・加部、そしてChar……という組み合わせ。これだけでもすごいですが、このグループが忌野清志郎とコラボした曲があります。

S.F.


最後に、これも最近実現した大物コラボとして、Ooochie Koochie。
奥田民生&吉川晃司という組み合わせのユニット。
この二人は高校生ぐらいからの友人なんだそうで……ともに広島出身ということは知ってましたが、それほど長い付き合いがあったとは知りませんでした。

Ooochie Koochie 「GOLD」Music Video

音楽というのは、やはりそこにいる人間というものも込みではないでしょうか。
ミュージシャンという人間がいて、そのドラマがある。人が音楽に触れるとき、その向こう側にいる人間のドラマにも触れている……これは、AIにはできないこととして残り続けるのではないかと思います。



Jimmy Page & The Black Crowes - No Speak No Slave

2025-03-16 22:43:07 | 音楽批評


最近、ネット上のニュースなどで、ジミー・ペイジの名前を耳にする機会がありました。

ジミー・ペイジの話はこれまで何度もしてきました。
もうあまり音楽活動そのもので話題になることはなくなった印象ですが、やはりそこはレジェンドギタリストということで、話題はいろいろとあるわけでしょう。
ニュースの一つは、ブラック・クロウズとの共演をおさめたライブアルバムがリリースされたという話。
といっても、やはり最近の音源ではなく、1999年に一度発表されたものの再発ですが……リミックス、リマスターが施されていて、99年盤には収録されていなかった曲もいくつか入っているとか。
その未発表音源の一つが、ブラッククロウズの No Speak No Slave という曲です。

Jimmy Page & The Black Crowes - No Speak No Slave

そしてジミー・ペイジといえば、最近もう一つ私の注目する話題がありました。

それは、英国政府が進めているAI関連の法整備に関するトピックです。

英国政府が、クリエイターの作品をAIにトレーニングさせる著作権法の例外規定を設けようとしていることに対して、ミュージシャンらが反対を表明しました。
デーモン・アルバーンや、ケイト・ブッシュ、アニー・レノックス、クラッシュ……といった英国のミュージシャンらが、Is This What We Want? (これは私たちの望んでいることなのか?)というアルバムを出しています。アルバムといっても、無音のトラックを集めたもの。沈黙による抗議です。それぞれのトラックタイトルは一単語になっていて、それらの単語をつなげると、英国政府はAI企業に利益をもたらすために音楽の盗用を合法化してはならない」と いうメッセージになっています。

で、ジミー・ペイジも、今回の件で反対の姿勢を示し、自身のインスタグラムで声明を発表しています。
その内容は、かいつまんでいうと次のようなものです。

・AIの生成する作品は、実体験から得られる芸術的本質が欠けている。

・既存の作品からデータを収集して音楽を生成するのは、窃盗であり、搾取である。

・オプトアウトは技術的に不可能である。
(※「オプトアウト」は、アーティストが自分の作品をAI学習に使用しないようブロックできる制度。ただし、そのためには、いくつもある研究機関の一つ一つに対してアーティスト側が申請しなければならず、非現実的と批判されている)

AIに関しては、このブログでも何度か書いてきましたが、今回英国のアーティストたちが表明した意見には私も基本的に賛同します。AI研究そのものの意義は否定しませんが、慎重にやっていく必要があるのではないか、と。

レッド・ツェッペリンという伝説のバンドでギターを弾き、三大ギタリストの一人と目されるジミー・ペイジの言葉には、相当な重みがあるんじゃないでしょうか。



東日本大震災から14年

2025-03-11 21:24:21 | 時事


今日は3月11日。
東日本大震災の発生から、今日で14年となりました。

毎年この頃になると、震災関連の記事が出ますが、それらのなかで気になったのは、住民の帰還に関する話題でしょうか。
全体的に帰還が進んでおらず、各自治体が掲げていた目標は軒並み達成されていない……といった記事です。
もう14年にもなってくると、避難先での生活が定着してしまっているということが背景として考えられているようです。まあ、それはそうでしょう。10年以上も生活していれば、一時的に身を寄せているとはいえないわけで、何か一念発起してでなければ帰還という話にはならないでしょう。で、帰還しようかとなったときにもろもろの障害が立ちはだかってくるので、相当に強い覚悟がなければ帰還できないということになっているんじゃないでしょうか。人を置き去りにした復興……という懸念は震災の数年後には出ていましたが、十数年が経って、いよいよそれがはっきりわかるかたちになってきたのではないかとも思えます。
そもそも、震災前から人口減少という問題はあって、そのトレンドが続ていくことが予想されていたにもかかわらず、“復興”という建前でそれが覆い隠され、結果として過剰な整備が行われてしまったという側面も指摘されます。“復興”のスローガンが錦の御旗のようになって、見当はずれの整備事業が行われてきたのだとしたら……そろそろ、そういうことを批判的に検証しなければならないときにきているんじゃないでしょうか。



Roberta Flack & Peabo Bryson - Tonight I Celebrate My Love

2025-03-03 22:33:30 | 音楽批評

先日、ロバータ・フラックが亡くなりました。

享年88歳。

死因は明らかにされていませんが、彼女は2022年にALSにかかっていることを公表していました。

ALS――筋萎縮性側索硬化症は、体中の随意筋が次第に麻痺していくという難病です。症状が進行していくと、手足を動かせなくなるというだけでなく、歌を歌うこともしゃべることもできなくなります。TOTOの故マイク・ポーカロもこの病気を患っていましたが、ミュージシャンにとってはきわめて残酷な病といえるでしょう。ロバータの場合、2022年の段階ですでに歌うことはできなくなっていたようです。


今回の訃報を受けて、多くのミュージシャンが追悼のメッセージを発しています。

そのなかには、ジョン・レノンの息子であるショーンやジュリアンも。ジョン・レノンがニューヨークに住んでいたときに、あのダコタハウスのお隣さんがロバータ・フラックだったということで、レノン一家とは家族ぐるみの付き合いがあるんだそうです。

また、ピーボ・ブライソンは、フェイスブックに投稿した追悼メッセージのなかでこんなことを書いています。

この象徴的で神から授かった才能を持つアーティストであり友人である彼女との関係は、私の音楽とエンターテイメントにおける人生を永遠に変えました。 彼女は私の最大のインスピレーションであり、芸術と人生の両方において卓越性を追求する上での礎として、常に私の心の中に存在し続けるでしょう。

ピーボ・ブライソンに関しては、若い頃ロバータが面倒をみたりもしていたそうで、それが追悼の言葉にもつながっているんでしょう。
ロバータ・フラックとのデュエット「愛のセレブレイション」は、大ヒットしました。

Roberta Flack & Peabo Bryson - Tonight I Celebrate My Love (Official Music Video)

ピーボ・ブライソンといえば、セリーヌ・ディオンとデュエットした「美女と野獣」も有名ですが、あの歌は世界中のいろんな人とデュエットしているようで、日本では本田美奈子と歌ったバージョンがありました。そういえば、本田美奈子はロバータ・フラックの代表曲「やさしく歌って」のカバーをやってたなあ……といったことも思い出され、ロバータ・フラックという人がいかにリスペクトされていたかがうかがわれるのです。