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ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
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ヘドラの国、レミングの街

2021-11-14 23:37:07 | 時事


先日、ヘドラ50という記事を書きました。

そこで、ヘドラというのはこの国に澱んでいる泥濘の象徴だといいました。

そのあたりのことをもう少し具体的に説明すると――たとえば5年ほど前、安保法制のときに現れた若者のグループがいくつかありました。SEALDsが特に有名でしたが、結局のところそれらの団体のほとんどは、数年で解散し、活動を継続することができなかったようです。そうなるにいたったのは、要は、この国の“世間”が彼らにむける冷たい目のためではなかったかと私には思えます。
その頃私は投稿生活をしていて、同じように投稿をしている人のツイッターやブログを時々見たりしていたんですが……そのなかの一人が、「数年たてば恥ずかしい過去になる」といったようなことをつぶやいていました。(※記憶を頼りに大意を書いています。その方は後にデビューして今はプロになっていますが、デビュー時に過去ツイートをすべて削除してしまっているため原文は確認できません)
まさに、これでしょう。
『ゴジラ対ヘドラ』の記事でも書きましたが、これがヘドラなのです。
若者たちが松明を投げつけても微動だにせず、その若者たちを有毒ガスで制圧していくヘドラ。先日の『ゴジラVSヘドラ』でいえば、アスファルトの隙間に咲いた花を硫酸ミストで枯らし、ヘドロまみれにしてしまうヘドラ――これが、この国の“世間”の姿なのです。そしてそのゆえに、この国はどんどん衰亡の道を歩んでいます。先般の総選挙なんかも、そのことを象徴的に表しているように思えるのです。

では、ヘドラの国をどう建て直していくのか。

ツイッターのリベラル系アカウントとして知られている中嶋哲史さんがつぶやいておられたんですが、結局、教育から建て直すしかないのかもしれません。

集団に依存せず主体的に行動できる個人を育てること、そのうえで、合理精神、批判精神を涵養すること、社会参加の意識を持たせること……それしかないんじゃないかと思えてきました。
十年単位の時間がかかるかもしれませんが……それをしないと、結局みながレミングの集団になってしまう。

ここで、名曲を一曲。
伊勢正三さんの「レミングの街」です。

レミングの街 (1993渋谷公会堂)

  レモンジュースの雨
  森は枯れても
  欲望の影は あちこちで育つ
  さまよう時代は預言者を生み
  幸福はなぜ先を急ぐのか

この歌では、虚栄でしかない物質的幸福を求める人々の姿がレミングになぞらえられていますが、この令和の時代、状況はもっと深刻でしょう。幸福を望むことすらなく、ただ惰性に流されるままがけっぷちにむかって行進しているような……現状維持だけを望みながら、その実、そう遠くない未来に現状維持もままならなくなることが請け合いの道を歩んでいるという矛盾。断崖にむけて進むレミングの群れのなかで、「このままではまずい」と声をあげられる人間を一人でも増やしていくしか方法はないのかもしれません。