過去記事です。
Primal Scream について書いています。
プライマル・スクリームといえば、彼らがブレイクするきっかけとなったアルバム
Screamadelica が、今年で発売30周年を迎えました。
30周年といえば、ニルヴァーナの
Nevermind
もそうでした。1991年という年は、ほかにもメタリカのブラックアルバムがあり、レッチリの
Blood Sugar Sex Magik
がありと、ロック史的に重要な年だったのです。
アニバーサリーということで、プライマル・スクリームはYoutubeの公式チャンネルでHDリマスター動画をアップしたりしています。来年には、収録曲をすべて演奏する記念ライブも計画しているということです。
せっかくなので、このアルバムに収録されている曲の動画を一つ。
Come Together です。
Primal Scream - Come Together (Official HD Video)
ストーン・ローゼズのライバル的存在ということでプライマル・スクリームが出てきたわけですが……元記事でも書いたように、ストーン・ローゼズの解散後ベースのマニはプライマル・スクリームに参加していました。
ここからは、そのマニが在籍していた時期のプライマル・スクリームの歴史をたどってみようと思います。
まずは、マニが参加した最初のアルバム
Vanishing Point です。
元記事の Star
もこのアルバムの収録曲だったわけですが、そこから Kowalski を。
Primal Scream - Kowalski (Official Video)
アルバムタイトルのもとにもなった映画バニシングポイントをモチーフにした曲。
このアルバムの時点ではマニの参加はまだ限定的であり、この曲のベースはマニではありません。
次に、アルバムEXTRMNTR
から、Kill All Hippies。
元記事で紹介した
Swastika Eyes も、このアルバムの収録曲。
プライマル・スクリームが一時期エレクトロニカ的な方向に傾いていたときの代表作であり、Kill All Hippies はその幕開けとなる一曲目。
Primal Scream - Kill All Hippies (Official Video)
「すべてのヒッピーを殺せ」とは穏やかではありませんが、これはパンクなんかでよく見られる、悪役の側の立場で歌うというロック語法だと私は解釈しています。
歌の冒頭に出てくる女司令官のような人が、「すべてのヒッピーを殺せ」といっているわけですが、「お前は金を持っている/俺は魂を持っている」と歌うプライマル・スクリームはそれに抗して戦う側とみるのが妥当でしょう。女司令官は「ディスコにはむかむかする」ともいっていますが、このあたりは、90年代にイギリスで成立した反レイヴ法とそれに対するプライマル・スクリームの抗議といったことが思い起こされもするのです。
ディストピア化していく世界との闘い――2000年に発表されたこのアルバムは、きたるべき21世紀の予言であったのかもしれません。
その21世紀に、プライマル・スクリームが最初に発表したアルバムが
Evil Heat。
収録曲のMiss Lucifer。
アルバムにタイトルチューンはありませんが、この曲の歌詞中に
evil heat という言葉が出てきます。
Primal Scream - Miss Lucifer (Official Video)
前作の方向性をさらに推し進めたアルバムでしたが、世間の評価はあまり芳しくなく、本人たちにとってもちょっと行き過ぎという感覚があったようで……次作ではがらりと作風を変えてきます。
その次作が、Riot City Blues。
収録曲 Country Girl の動画を。
前作と同様の趣向で、アルバムのタイトルチューンはない代わりに、この曲のなかで riot city blues という言葉が使われています。
Primal Scream - Country Girl (Official Video)
そしてさらに次の作品が
Beautiful Future。
元記事でも書いたとおり、ストーン・ローゼズ再結成でマニは脱退しますが、このアルバムはマニが参加した最後の作品でもあります。
このアルバムにはタイトルチューンがあります。そのBeautiful Future を。
Beautiful Future
音楽性は別として、EXTRMNTRの世界観に戻っているようにも思えます。タイトルは「美しい未来」ということですが、そこで描かれるのディストピアです。
街をちょっと乗り回して
何が見えるかいってごらん
空っぽの家? 燃えている車?
木にぶらさがる裸の死体?
思っていることを口にしてはいけないよ
口にする前によく考えることさ
間違った考えを口にすれば
あの男がきみを連れ去りにくるからね
きみには美しい未来がある
自由はいいものだというんだね
わからないかい 君は自由だったことなんてないと
きみは剣によって生き 剣によって死ぬ
ただ手の届かないものを買う自由があるだけさ
きみには美しい未来がある
「車が燃えている」というモチーフはローゼズの
Made of Stone にもありました。
やはり、ライバルといいながらも、彼らは同じスピリッツを共有していたのでしょう。だからこそ、マニがプライマル・スクリームに加入するということもできたのだろうな、と……