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偽膜性腸炎

2010-04-20 | 感染症内科 各論
偽膜性腸炎の診断
- Clostridium difficile (C. difficile) やトキシンは、C. difficileによるイレウスが疑われない限り、下痢(非有形便)の時だけ検査されるべき (B-II)
- 症状のない患者検体による便検査は、治療効果の検査を含めて臨床的に有用でない。疫学的な調査を除いて検査は推奨されない (B-III)
- 便培養検査は最も感度が高く、疫学研究で重要な検査 (A-II)
- 便培養は時間がかかるため臨床的な実用性はないが、熟練した検査室で毒素産生の株を分離する感度と特異度は、他の検査と比較する時の標準的検査結果となる (B-III)
- CDトキシンA, Bに対する酵素免疫測定法(EIA)は迅速であるが感度はcell cytotoxin assayより低く診断には代替的手段である (B-II)
- トキシン検査は臨床的には重要であるが、感度が問題となる。この問題を解決する1つの手段が2段階の方法で、まずスクリーニングとしてGDHのEIA検出を行い、次に陽性例のみに対してcytotoxicity assayあるいは培養検査を行う。結果はGDHキットによって異なり、そのためGDH検査の感度データがより利用できるまでは暫定的な推奨となる (B-II)
- PCR検査は迅速で感度・特異度共に高く、最終的に考慮しうる検査であるが、日常の検査として推奨されるにはより多くのデータが必要である (B-II)
- 繰り返し同じエピソードの下痢に対して検査を行うことはあまり価値がなく、自重すべきだ

感染制御と予防
医療従事者、見舞人、患者
- 医療従事者と見舞人はCD感染者の部屋に入る時に手袋(A-I)とガウン(B-III)を着用しなくてはならない
- 手指消毒の意識を高めておく必要がある (A-II)
- アウトブレイクや感染者率が増加している場合、患者に触れた後に石鹸を用いて手を洗うように見舞人や医療従事者に指導する (B-III)
- 接触予防のために患者を個室に隔離する (B-III)、個室が使用できなければ、それぞれの患者専用のトイレを提供してその他の患者をfollowする。
- 下痢症状がある期間は接触予防を維持する (C-III)
- 感染制御目的の無症状の患者に対して繰り返し検査を行うことは推奨されない (A-III)、またそのような方法で診断された患者を治療することも有効でない (B-I)
環境清掃と消毒
- 廃棄可能な直腸検温計を含んだ、環境の感染源の同定と一掃は感染率を減少させる (B-II)
- 感染率の増加と関連している場所では、環境汚染に対処するため塩素を含んだ消毒薬や他の殺胞子活性のある消毒薬を使用する (B-II)
- CDに対するルーチンでの環境スクリーニングは推奨されない (C-III)
抗菌薬使用の制限
- CDのリスクを軽減するため、抗菌薬治療の頻度や期間や、処方する抗菌薬数を最小限にする (A-II)
- 抗菌薬管理プログラムを導入する (A-II)、ターゲットとなる抗菌薬は地域疫学やCD株によるが、外科予防使用以外のセフェム系抗菌薬やクリンダマイシンの制限は特に有用である (C-III)
整腸剤の使用
- 現在使用できる整腸剤の使用は推奨されない、この治療を支持する限られたデータがあるのみであり、菌血症の潜在的リスクがある (C-III)

治療
- できるだけ原因となっている、また再発のリスクに影響するかもしれない抗菌薬による治療を中止する (A-II)
- 重症、治療困難なCD感染が疑われたら、経験的治療をできるだけ早く開始する (C-III)
- 便のトキシン検査が陰性であれば、開始した治療を中止もしくは継続する判断は個々に判断される (C-III)
- 症状を曖昧にしたり、毒素性巨大結腸症を引き起こしたりすることがあるので、できれば腸蠕動抑制薬の使用を避ける (C-III)
- メトロニダゾールは軽症から中等症感染の初期治療に500mgx3/day 10-14日間で用いる (A-I)
- バンコマイシンは重症感染の初期治療に125mgx4/day 10-14日間用いる
- 経口バンコマイシン±静注メトロニダゾールは重症、難治性の感染に対する治療で、バンコマイシンは500mgx4/day、注腸で約100mlの生食に溶いて6時間毎、メトロニダゾールは500mgを8時間毎 C-III
- 状態の悪い患者では直腸切除を考慮する。血清乳酸値(>5mmol/L)と末梢WBC(>50,000/μL)の検査結果は、周術期の死亡を増加と関連があるため、迅速に手術の決定を行うのに有用であるかもしれない。外科的治療が必要であれば、直腸を温存して大腸亜全摘を行う (B-II)
- 最初の再発治療は初期治療と同様であるが、重症度に応じて評価されるべき (C-III)
- 蓄積性の神経毒性の潜在リスクのため、最初の再発期間を超えて、または長期慢性治療として、メトロニダゾールは使用しない (B-II)
- バンコマイシンを用いた2度目以降の再発治療は漸減療法もしくはパルス療法が次の戦略として好ましい (B-III)
- 基礎疾患に対して継続的な抗菌薬治療が必要な患者では再発性のCD感染の予防は推奨されない (C-III)

Clinical Practice Guidelines for Clostriium difficile Infection in Adults: 2010(SHEA, IDSA)
http://www.journals.uchicago.edu/doi/pdf/10.1086/651706

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