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IHR2005における国際的に懸念される公衆保健上の緊急事態(PHEIC)について

2019-07-24 | Public Health 母子保健

International Health Regulations (2005) Third edition

2016年更新、黄熱の接種証明書が10年から生涯の有効期間に変更される等の改訂あり

International Health Regulations (2005) Second edition(旧版)

国際保健規則(2005)(仮訳) 附録(仮訳)

「国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態(PHEIC: Public Health Emergency of International Concern)」とは、国際保健規則(IHR2005: International Health Regulation)に基づいて、次のとおり規定する異常事態をいう。

(i) 疾病の国際的拡大により他国に公衆の保健上の危険をもたらすと認められる事態。
(ii) 潜在的に国際的対策の調整が必要な事態。

「公衆の保健上の危険」とは、人の集団的健康に否定的な影響を及ぼすおそれのある事態をいい、とくに国際的に拡大するおそれのあるもの又は重大且つ直接の危険をもたらすおそれのあるものをいう。

通告について(IHR第6条)
1. 各参加国は、附録第2の決定手続に従って、自国領域内で発生した事象を評価しなければならない。
各参加国は、公衆の保健上の情報を評価した後24時間以内に、決定手続に従い自国領域内で発生した国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態を構成するおそれのあるすべての事象及びそれら事象に対して実施される一切の保健上の措置を、国内 IHR連絡窓口を通じて、利用できる最も効率的な伝達手段により、世界保健機関に通告しなければならない。
世界保健機関が受けた通告に国際原子力機関(IAEA)の権限事項が含まれる場合には、世界保健機関は直ちにそれを国際原子力機関に通告するものとする。

附録第2

検証について(IHR第10条)
1. 世界保健機関は、第9条に従って、国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態を構成するおそれのある事象が領域内で発生していると申し立てられた参加国に対し、通告又は協議以外の情報源からの報告を検証するよう要請するものとする。
この場合、世界保健機関は、検証を要請している報告のことを関係参加国に通知するものとする。

認定について(IHR第12条)
1. 事務局長は、(とくに自国の領域内で事象が発生している参加国から)受理した情報に基づき、当該事象が本規則に規定する基準並びに手続に照らして国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態を構成するか否かを認定するものとする。
2. 事務局長は、本規則の下で行なわれた評価に基づき、国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態が発生していると考える場合には、その予備的認定について自国の領域内で当該事象が発生している参加国と協議するものとする。事務局長と参加国がかかる認定について見解の一致をみた場合、事務局長は、第49条に規定する手続に従い、第48条に基づき設置された委員会(以下「緊急委員会」という)に適当な暫定的勧告に関する見解を求めるものとする。
3. 前記第2項の協議の後48時間以内に、事務局長と自国の領域内で事象が発生した参加国との間で当該事象が国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態を構成するか否かについて意見の一致に至らなかった場合には、第49条に規定する手続に従って認定が行なわれるものとする。
4. 事象が国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態を構成するか否かの認定に際して、事務局長は次のものを考慮しなければならない。

(a) 参加国から提供された情報、
(b) 附録第2に記載する決定手続、
(c) 緊急委員会の助言、
(d) 科学的諸原則及び入手可能な科学的証拠その他の関連情報、及び
(e) 人の健康に対する危険性、疾病の国際的拡大の危険性、及び国際交通を阻害する危険性の評価。

5. 事務局長は、自国の領域内で国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態が発生した参加国と協議した後、国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態が終わったと考える場合には、第49条に規定する手続に従って決定を行なうものとする。

緊急委員会について(IHR第48条)
1. 事務局長は緊急委員会を設置し、緊急委員会は事務局長の要請に基づき、次のものに関する見解を提供するものとする。

(a) 事象が国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態を構成するか否か。
(b) 国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態の終結。
(c) 暫定的勧告の発布、修正、延長又は解除の提案。

2. 緊急委員会は、IHR 専門家名簿から事務局長が選任した専門家及び適当な場合には本機関の他の専門家アドバイザリーパネルから構成されるものとする。事務局長は、特定の事象及びその帰結を考慮して委員会の継続性確保するという観点から委員の任期を決定するものとする。
事務局長は、個々の会期ごとに必要な専門知識並びに経験を考慮し且つ衡平な地理的配分の原則に適切に配慮して、緊急委員会の委員を選任するものとする。
なお、緊急委員会の少なくとも1名の委員は、自国の領域で事象が発生した参加国が指名した専門家であることが望ましい。
3. 事務局長は、自身の主導又は緊急委員会からの要請により、委員会に助言を行なう1名又はそれ以上の技術的専門家を任命することができる。

手続について(IHR第49条)
1. 事務局長は、発生している特定の事象に最も関連する専門知識及び経験分野を考慮して、第48条第2項に規定する者の中から専門家を選任し、緊急委員会の会合を召集するものとする。
本条の適用上、緊急委員会の「会合」には、電話会議、テレビ会議又は電子通信を含めることができる。
2. 事務局長は、議題及び事象に関する関連情報(参加国から提供された情報のほか、事務局長が提案する暫定的勧告も含まれる)を緊急委員会に提供するものとする。
3. 緊急委員会は議長を選出する。また、各会合の後、議事録及び勧告に関する助言を含む成果の概要報告書を作成するものとする。
4. 事務局長は、緊急委員会で見解を述べさせるため、自国の領域で事象が発生している参加国を会合に招請するものとする。
そのために事務局長は、必要な通知期間を確保して事前に、当該参加国に緊急委員会会合の日程並びに議題を通告するものとする。
但し、関係参加国は、自国の見解を提出するためであろうと、緊急委員会会合の延期を求めることはできない。
5. 緊急委員会の見解は検討のため事務局長に提出され、事務局長は当該事項について最終的な決定を行なうものとする。
6. 事務局長は、国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態の認定並びに終結、関係参加国によってとられたすべての保健上の措置、暫定的勧告及び勧告の修正、延長並びに解除を、緊急委員会の見解とともに、各参加国に伝達するものとする。
また事務局長は、暫定的勧告及びその修正、延長並びに解除を参加国及び関係の国際機関を通じて輸送機関の運行者にも告知するものとする。
さらに事務局長は、その後、前記の情報及び勧告を一般に公表するものとする。
7. 自国の領域で事象が発生した参加国は、事務局長に対し、国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態の終結及び/又は暫定的勧告の解除を提案でき、且つ、その旨を緊急委員会に提出することができる。

これまでのPHEIC宣言

  1. influenza A H1N1 2009 pdm (2009/4/25- 2010/8/10)



  2. 野生型ポリオウイルスの国際的な拡大(2014/5/5-)
    第10回緊急委員会は2016/8/11の時点でPHEICの状態であることを確認(2016/8/22)
    第11回緊急委員会は2016/11/11の時点でPHEICの状態であることを確認(2016/11/11)
    第12回緊急委員会は2017/1/7の時点でPHEICの状態であることを確認(2017/1/13)
    第13回緊急委員会は2017/4/24の時点でPHEICの状態であることを確認(2017/5/2)
    第14回緊急委員会は2017/8/3の時点でPHEICの状態であることを確認(2017/8/3)
    第15回緊急委員会は2017/11/14の時点でPHEICの状態であることを確認(2017/11/14)
    第16回緊急委員会は2018/2/7の時点でPHEICの状態であることを確認(2018/2/14)
    第17回緊急委員会は2018/4/30の時点でPHEICの状態であることを確認(2018/5/10)
    第18回緊急委員会は2018/8/15の時点でPHEICの状態であることを確認(2018/8/15)
    第19回緊急委員会は2018/11/27の時点でPHEICの状態であることを確認(2018/11/30)
    第20回緊急委員会は2019/2/19の時点でPHEICの状態であることを確認(2019/3/1)
    第21回緊急委員会は2019/5/14の時点でPHEICの状態であることを確認(2019/5/29)
    第22回緊急委員会は2019/9/16の時点でPHEICの状態であることを確認(2019/10/3)
    第23回緊急委員会は2019/12/11の時点でPHEICの状態であることを確認(2020/1/7)

  3. 西アフリカにおけるエボラの流行(2014/8/8-2016/3/29)

  4. ジカウイルス感染症および神経疾患と新生児奇形の増加(2016/2/1-2016/11)
    緊急委員会は2016/3/8の時点でPHEICの状態ではないと判断(2016/11/18)

  5. コンゴ民主共和国でのエボラウイルス病の流行2019/7/17-2020/6/25)
    緊急委員会は2020/2/10の時点でPHEICの状態であることを確認(2020/2/12)
    第7回緊急委員会は2020/4/10の時点でPHEICの状態であることを確認(2020/4/14)

  6. 中国の武漢から始まった新型コロナウイルスの流行(2020/1/30-2023/5/5)

  7. サル痘の世界的な流行 (2022/7/23-2023/5/10)

 

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