数理論理教(科学教)の研究

数理論理(科学)はどこから来て、どのような影響を与え、どこに行こうとしているのか、少しでも考えてみたいと思います。人文系

免疫(3)自然免疫 化学バリア 唾液、抗菌ペプチド

2023-08-02 10:22:52 | 免疫
自然免疫
2.化学バリア
(1)唾液
 唾液はリゾチーム、ペルオキシダーゼ、免疫グロブリン、ラクトフェリンなどを含み、抗菌機能を有しています。
 リゾチームは真正細菌の細胞壁を構成するペプチドグリカンを加水分解します。かつて塩化リゾチームは風邪薬にも配合されていたようですが、有効性が確認できないとして2016年に販売中止しているそうです。(唾液の成分でもあるリゾチームが風邪薬として堂々と売られていた?)
 ペルオキシダーゼは、過酸化水素を無害な水に分解したりして、酸化ストレスを解消したりしているようです。
 ラクトフェリンは、細菌の必須ミネラルの鉄を奪って抑制したり、細菌の細胞膜・細胞壁を脆弱化したりする機能があるようです。母乳の初乳には、ラクトフェリンが多く含まれ、免疫系が未熟な新生児を守っています。またラクトフェリンはC型肝炎ウイルス(HCV)のエンベロープに結合することで浸入を阻害しています。
 免疫グロブリンは抗体(獲得免疫)です。唾液に含まれるのはIgAのタイプのものです。
 唾を傷口に付けたりするのは、一定の効果はあるようです。猫がよく体中を舐めていますが、抗菌的な作用もあるのでしょうか。なお、傷口を舐めるのは、微生物の感染の可能性があるので避けた方がよいようです。
 汗腺が発達してない動物では、唾液で体温調節を行っているようです。犬が暑い時は涎だらけになっているのも体温調節のためということらしいです。

「唾液(だえき、saliva)は、唾液腺から口腔内に分泌される分泌液である。水、電解質、粘液、多くの種類の酵素からなる。ヒトでは、正常なら1日に1-1.5リットル程度(安静時唾液で700-800ミリリットル程度)分泌される。成分の99.5%が水分であり、無機質と有機質が残りの約半分ずつを占める。
 デンプンをマルトース(麦芽糖)へと分解するアミラーゼを含む消化液として知られる他、口腔粘膜の保護や洗浄、殺菌、抗菌、排泄などの作用を行う。
また緩衝液としてpHが急激に低下しないように働くことで、う蝕(虫歯)の予防も行っている。
…イヌなどの汗腺の少ない、もしくは他の汗腺を持たない動物(鳥や爬虫類など)では、汗腺を持つ動物が汗で体温調節を行うのと同様に唾液で体温調節を行っている。(汗腺を持つ動物でもこの作用は持つ。)
 牛は1日に約100リットルもの唾液を分泌する。」

「抗菌
リゾチーム、ペルオキシダーゼ、免疫グロブリン、ラクトフェリンなどを含む唾液は、口内に侵入した細菌の活動を抑えています。自浄作用とともに細菌の繁殖を阻害する重要なはたらきです。」
(免疫グロブリンは抗体(獲得免疫)です)

「リゾチーム(英語名: Lysozyme、別名: ムラミダーゼ)とは、糖質加水分解酵素ファミリー22に分類される酵素であり、真正細菌の細胞壁を構成するペプチドグリカンを加水分解する機能を持つ。具体的には、ペプチドグリカンを構成するN-アセチルムラミン酸とN-アセチルグルコサミンとの間に形成されるβ-(1→4)グリコシド結合を加水分解する。
…食品添加物としては日持ちを向上させるために用いられる。特にグリシンと併用したり有機酸によりpHを調整することで効果が高まることから、卵白リゾチーム-グリシン-有機酸を組み合わせた製剤の形で食品メーカー向けに流通している。 
…塩化リゾチーム(リゾチーム塩酸塩)は、グリコサミノグリカンを分解する作用があるとして日本でも医薬品として主に風邪薬、副鼻腔炎向けなどに広く用いられていたが、有効性が確認できないとして製造販売を行っていた各社は、2016年3月販売中止と回収を発表した。 」

「ペルオキシダーゼ は、ペルオキシド構造を酸化的に切断して2つのヒドロキシル基に分解する酵素である。
…ミトコンドリアの電子伝達系では、スーパーオキシドアニオン(O2-)などの活性酸素種が常に発生している。活性酸素は生体分子を破壊し有害であるため、防御機構が存在する。スーパーオキシドアニオンは、まずスーパーオキシドディスムターゼ(SOD) によって過酸化水素に変換され、ペルオキシダーゼによって無害な水に分解される。
 機構の詳細は分かっていないが、ペルオキシダーゼは植物の感染防御に関与している。
 グルタチオンペルオキシダーゼはセレノシステインを含む酵素である。グルタチオンを電子供与体として用い、過酸化水素だけでなく有機過酸化物にも作用し、酸化ストレスから生体を守っている。」

「ラクトフェリン(別名:ラクトトランスフェリン)は、母乳・涙・汗・唾液などの外分泌液中に含まれる鉄結合性の糖タンパク質である。
…ラクトフェリンは、強力な抗菌活性を持つことが知られている。グラム陽性・グラム陰性に関係なく多くの細菌は、生育に鉄が必要である。トランスフェリンと同様、ラクトフェリンは鉄を奪い去ることで、細菌の増殖を抑制する。
…この鉄依存性のメカニズムとは別に、ラクトフェリンはグラム陰性菌の細胞膜の主要な構成成分であるリポポリサッカライド(LPS)と結合することで、細胞膜構造を脆弱化し、抗菌活性を示す 。また、ラクトフェリンは緑膿菌によるバイオフィルムの形成を阻害する。ラクトフェリンをペプシンで分解した部分ペプチドであるラクトフェリシンは、細菌の細胞壁に傷害を与えることで、ラクトフェリンよりも10倍以上強力な抗菌活性を示す。 母乳の中でも、とりわけ出産後数日間に分泌される初乳にはラクトフェリンが多く含まれている。授乳により免疫グロブリンやラクトペルオキシダーゼなどと共に、母体からラクトフェリンが新生児に取り込まれる。ラクトフェリンはこれらの因子と共同で、免疫系が未熟な新生児を外敵から防御していると考えられる。
…ラクトフェリンはC型肝炎ウイルス(HCV)のエンベロープに結合することで、標的細胞への浸入を阻害する。」

(2)抗菌ペプチド
 抗菌ペプチドとは、十から数十個のアミノ酸からなるタンパク質(アミノ酸の数が少ないものをペプチドという)であり、あらゆる生物が持っている生体防御の物質です。
 1987年にアフリカツメガエルの粘膜から発見されてから、今まで約3000種類(動物起源が2248種類、植物起源が344種類,微生物起源が366種類)の抗菌ペプチドが見つかっているようです。
 抗菌ペプチドは主に細胞壁(細菌にはあり、動物にはない(細胞膜しかない))を直接攻撃することで殺菌するようです。抗菌ペプチドは抗生物質のように耐性菌を作り難いので、抗生物質に代わる抗菌薬としても注目されています。
 また抗菌ペプチドは免疫調整剤の機能もあることが分かっているようです。未だにどのような機能があるのかは分からないようです(研究中)のようです。
 なお抗菌薬のうち細菌(バクテリア)が産出する抗菌物資(他の細菌を攻撃する武器)を特に抗生物質といいます。ヒトは細菌同士が戦う武器(抗生物質)を借用して医薬品として利用しています。そのため世界中の土壌に生息してる細菌を探しまくっているようです。
  
「抗菌ペプチドとは、名前から想像できるように「菌に抗(あらが)うペプチド」のことを指します。抗菌ペプチドは、タンパク質の最小単位であるアミノ酸が約十~数十個連なって形成されており、我々ヒトを含めた哺乳類や植物、昆虫などあらゆる多細胞生物に菌と戦うための生体防御の機能として備わっている物質です。ペニシリンに代表される抗生物質が菌のDNA合成を阻害したり、タンパク質の生成を阻害したりするのに対し、抗菌ペプチドは菌の細胞膜を直接攻撃することで殺菌作用を発揮します。その作用は、抗生物質のような耐性菌を生み出しにくいことから、有用性が着目されています。
 ヒトでは、外部と接触する皮膚や口腔、消化器、泌尿器など、ありとあらゆる部位で抗菌ペプチドが産生されており、菌の増殖を抑制することで生体と菌との共生関係の維持に大いに関係しています。抗菌ペプチドの減少や欠如が疾患と関係する事例もあることから、抗菌ペプチドが生体防御にとっていかに重要であるかがわかります。 」

「The Antimicrobial Peptide Database(http://aps.unmc.edu/AP/)には,2018年12月現在で約3,000種類の抗菌ペプチドが登録されている.これらの抗菌ペプチドは,動物起源が2,248種類,植物起源が344種類,微生物起源が366種類(バクテリオシンを含む),およびその他となっている.また,これらの抗菌ペプチドが有する抗酸化,プロテアーゼ阻害,抗炎症,創傷治癒促進(血管新生,細胞遊走,細胞増殖が促進されて傷がはやく治癒すること)などの生理活性も,このデータベースを用いて検索することができる.すなわち,多くの抗菌ペプチドは,複数の生理活性を兼ね備えていることが明らかになっている. 
…1987年にアフリカツメガエルの粘膜からmagainin 2が発見され,1996年にアジアヒキガエルの胃組織からbuforin 2が見いだされた.前者は細胞膜破壊型の作用機序を有する抗菌ペプチドであり,後者は細胞膜通過型の抗菌ペプチドである.その後,多くの生物から抗菌ペプチドが発見され,それらの構造と機能が解析された.抗菌ペプチドは,それらの構造から,主にβ-sheet, α-helical, loop,およびextendedの4種類のタイプに分類され,その多くは分子中に塩基性アミノ酸(アルギニン,リジン)を多く含んでおり,負に帯電した細胞膜と静電的相互作用によって結合する.これらの抗菌ペプチドは,細胞膜の損傷・破壊作用によって殺菌効果を示す場合とタンパク質合成システムや特定の酵素などを阻害することによって殺菌効果を示す場合が報告されているが,特に後者の場合の作用機序は未解明な部分が多い.」 

「かつて、カエルの皮膚の切開手術をしていた科学者がいました。彼は、傷口に特別な処置をしないままカエルを飼育水中に戻しても、元気に生き続けることを経験的に知っていました(筆者も同じ頃、同じことに気付いていました)。ある時、その科学者はこのことを不思議に思い、ひょっとしたらカエルの皮膚には細菌の感染を抑制する物質が存在するのではないかという考えを持ちました(筆者も同じことを思いました)。そして彼は、ゼノパスの皮膚からMagaininという抗菌性を有する物質を、ペプチドとして単離することに成功しました。抗菌活性を有するペプチドが初めて単離された瞬間でした。
…抗菌ペプチドの発見が何ゆえエキサイティングであるかというと、抗菌活性がペプチドの構造に由来するものであり、広い範囲の微生物に作用する点にあります。これが、ピンポイントで効く抗生物質と大きく異なる点です。私たち哺乳動物は異物の侵入に対し働く免疫系がよく発達していますが、カエルではあまり発達していません。まして我々と同じような免疫系をもたない生物もたくさんいます。このような生物では我が身を守る手段として、抗菌ペプチドが重要な役割を果たしています。
 平たくいうと、抗菌ペプチドはカエルの体外に分泌されるとバネのようならせん状構造になり、またプラスの電荷を帯びます。ターゲットである微生物の細胞膜はマイナスに荷電しているので、両者は引き合います。加えて、これらのペプチドやタンパク質中に見られるらせん構造は、細胞膜中の脂質と馴染み、膜を突き抜け易い、という化学的な性質があるので、その結果、抗菌ペプチドが大量に集積した部分では、微生物の細胞膜に穴があく、というわけです。 」

「抗微生物ペプチド(こうびせいぶつペプチド;宿主防御ペプチド[しゅくしゅぼうぎょペプチド]とも呼ばれる)は、進化的に保存された自然免疫反応の1種として機能するペプチドの総称であり、あらゆる種類の生命で認められる。
 原核生物と真核生物の細胞には基本的な違いがあり、それは抗微生物ペプチドの標的の違いを表しているのかもしれない。これらのペプチドは薬効を持ち、広いスペクトルをもつ抗生物質であり、新規治療薬としての可能性を示している。抗微生物ペプチドはグラム陰性およびグラム陽性細菌(通常の抗生物質に耐性のある種を含む)、マイコバクテリウム属 (結核菌を含む)、エンベロープを持つウイルス、真菌、および濃度によっては哺乳類細胞でさえ殺すことが示されている。通常の抗生物質の多くとは異なり、抗微生物ペプチドは 免疫調節薬として機能することで免疫力を高めることができるようにみえる。


「抗微生物タンパク質は,早くから抗菌剤としての利用が見込まれ,その利用に関する研究も進められてきた.ことに薬剤耐性菌対策は喫緊の課題である.WHOによれば,現在薬剤耐性細菌の感染症により年間70万人が死亡しており,今後有効な抗菌剤が開発されなければ2050年には死者が年間1000万人に増加すると予想されている.抗微生物タンパク質は既存の抗生物質とは異なる作用機構をもち,薬剤耐性菌に対しても効果を示すことが多く,抗微生物タンパク質に対する耐性菌は生じにくいと考えられている.また,多くの抗微生物タンパク質がLPS中和によるTNF-α発現の抑制,種々の免疫細胞の走化,活性化,関連遺伝子の活性化などの免疫調整作用をもち,感染抑制や創傷治癒を促進する機能をもつことも大きなメリットと考えられる.また,バイオフィルム形成阻害活性や,一部のがん細胞に対する選択的な効果も見られる.このため,抗微生物タンパク質をリード化合物とした新規薬剤開発に期待が集まっている.オリジナルの抗微生物タンパク質を改変し,抗原性を減らすための低分子化や,活性や安定性を強化するための構造変換が行われ,これまでに多くの抗微生物ペプチドが臨床試験に進んでおり,実用化に向けた研究が続けられている. 」
 
「抗生物質(こうせいぶっしつ、英語: antibiotic)は、微生物が産生する、他の微生物や細胞に作用してその発育などを抑制する作用を持つ物質のことである。これまでに200種類以上の抗生物質が細菌感染症の治療と予防に広く使用されている。また、抗生物質の抗菌作用を利用した薬剤の総称として抗生剤と呼ばれることもある。抗生物質は細菌に対して作用する抗菌薬として使用されるのみならず、真菌や寄生虫、腫瘍に対して用いられることもある。
…抗生物質を合成の観点から捉えると、抗生物質は放線菌などの微生物が、生存に必須な一次代謝産物を基に合成する二次代謝産物である。これまでに臨床的に使用されてきた抗生物質の約60%は放線菌に由来し、抗生物質は土壌から抗生物質を産生する放線菌のような微生物を分離することで発見されてきた。ほとんどの抗生物質は化学的に合成することが困難な構造を持つため、その生産は発酵によって成し遂げられる。また、発酵により産生した抗生物質はさらに化学的な修飾を加えることで、半合成の抗生物質として用いられることもある。このように生産された抗生物質はヒトの医療用途で治療・予防に使用されるほか、動物や植物に対して使用されることもある。
…1928年9月3日のフレミングによるペニシリンの発見は一つの失敗を機に成されたものであり、セレンディピティとしても知られる。フレミングは休日を終えて当時の職場であるセント・メアリーズ病院に出勤し、実験台で培養していたペトリ皿のブドウ球菌にカビがコンタミしていることに気づく。この時、フレミングはコンタミしたカビが周囲の細菌の増殖を抑制している様子を観察し、この増殖抑制がアオカビの産生する物質によるものであることと、その物質をペニシリンと名付けたことを論文として投稿した。その後オックスフォード大学のハワード・フローリーとエルンスト・ボリス・チェーンらの研究により大量生産が可能になると、フローリーらはペニシリンの臨床試験を1941年から1942年にかけて実施する。この臨床試験でペニシリンは何ら副作用を示さずに絶大な効果を発揮した。 
…抗生物質の分類は、化学構造からの分類と作用による分類の2つがある。前者は新しい抗生物質の分類ができず、後者では作用機序が厳密に調べられていない抗生物質が分類できないことがある。従って両者を考慮した分類が理想的とされる。
 化学構造からの分類では、β-ラクタム系、アミノグリコシド系、マクロライド系、テトラサイクリン系、ペプチド系、核酸系、ポリエン系などに大別されるが、さらに細かくペニシリン系、セフェム系、モノバクタム系を加える場合もある。
 作用からの分類では、抗細菌性、抗カビ(真菌)性、抗腫瘍性などに分けられる。用途を重視する場合は、医療用、動物用、農業用などで分類される。作用域から、広範囲・狭域で区分される事もある。作用機序から、細胞壁作用性などの呼称もある。
…細菌に対する作用機序による抗菌薬の分類の一例としては、細胞壁合成阻害薬、タンパク質合成阻害薬、核酸合成阻害薬の3つに大きく分けるものがある。また、葉酸代謝阻害薬を加えて4つに分類することもある。



 
【1928年にフレミングが青カビの培養液から、その周囲の雑菌の生育を強く阻害する物質を発見してから、1938年にその成分(ペニシリン)が取り出されるのに成功し、1941年にペニシリンの感染症への治療実験が始められ、驚異的な成功が収められました。
 しかし、その後にペニシリンに対する耐性菌が現れ、ヒトが新たにその耐性菌を殺菌する抗生物質を開発(新たに発見)しても、すぐに新たな抗生物質にも耐性菌ができてしまうといういたちごっこが起きています。細菌対ヒトの戦いは続いており、耐性菌の問題は喫緊の課題となっています。】





 








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