数理論理教(科学教)の研究

数理論理(科学)はどこから来て、どのような影響を与え、どこに行こうとしているのか、少しでも考えてみたいと思います。人文系

IgG4抗体増加と免疫低下

2023-10-20 11:01:46 | 免疫
1.IgG4とは
 IgGとはB細胞が産出する免疫ブログリン(抗体)の一つで、主に血液中に存在しています。その他にIgE(上皮組織に存在し、花粉症などアレルギー引き起こす)などがあります。
 IgGの中にもまた種類があり、IgG4はその中では比率が一番少なく(通常4%ほど)、免疫活性化は弱いようです。IgG4は抗原の刺激により、主にアレルギー反応に関係するTh2タイプのサイトカインであるIL4、IL-13によって産生誘導されるよです。Th2が優位な状態で、さらにregulatory T細胞(IL-10を産生する)が活性化さされると、IgG4が産生誘導されると考えられています。Th2サイトカインは、IgEや好酸球浸潤を誘導し、またregulatory T細胞はTGFβを産生して線維化を促進します。これらのサイトカインがIgG4関連疾患で見られるIgE高値、好酸球浸潤、病変の線維化に関与すると考えられています。

「ヒトには 4 つの IgG サブクラス (IgG1、2、3、および 4) があり、血清中の存在量の多い順に名前が付けられています (IgG1 が最も豊富です)。 

 IgG サブクラスの相反する特性 (補体を固定するものと固定しないもの、FcR に結合するものと結合しないもの)、およびほとんどの抗原に対する免疫応答には 4 つのサブクラスすべての混合が含まれるという事実を考慮すると、IgG がどのように機能するかを理解することは困難でした。サブクラスは連携して防御免疫を提供できます。2013 年に、ヒト IgE および IgG 機能の時間モデルが提案されました。このモデルは、IgG3 (および IgE) が応答の初期に現れることを示唆しています。IgG3 は親和性が比較的低いですが、外来抗原を除去する際に IgG を介した防御が IgM を介した防御に加わることを可能にします。続いて、より親和性の高い IgG1 および IgG2 が生成されます。形成される免疫複合体におけるこれらのサブクラスの相対的なバランスは、その後の炎症プロセスの強さを決定するのに役立ちます。最後に、抗原が存続すると、高親和性 IgG4 が生成され、FcR 介在プロセスの抑制を助けることで炎症を抑えます。」

2.IgG4関連疾患
 このIgG4ですが、原因不明の全身性・慢性炎症性疾患によりその数値が上昇(IgG4を産生する「IgG4陽性形質細胞」の増加)することから、「IgG4関連疾患」と呼ばれているようです。
 東京理科大学の久保教授らのグループは、マウスを使った実験で、血中にIgG4抗体が存在すると、免疫系の細胞の一つで異物を破壊する能力を持つ「細胞傷害性T細胞」の組織傷害の程度が大きくなり、組織の炎症が増悪することを発見されました。血中にIgG4抗体が存在すると、T細胞と同じく免疫系の細胞の一つであり、体内に侵入した異物の特徴を他の細胞に提示する「樹状細胞」の働きが促進され、そのことによって細胞傷害性T細胞が活性化しやすくなっているとのことです。

「IgG4関連疾患(-かんれんしっかん、英:IgG4-related disease)とは、免疫グロブリンGのサブクラスIgG4が関係する血清IgG4高値と罹患臓器への著明なIgG4陽性形質細胞浸潤を特徴とする原因不明の全身性、慢性炎症性疾患である。日本から世界に発信している新しい疾患概念で、血清IgG4上昇を認めることからIgG4疾患とも呼ばれる。 
…IgG4関連疾患は、自己免疫性膵炎やキャッスルマン病を代表とする多彩な臓器疾患を包括する疾病概念で、高IgG4血症(血清IgG4高値)と共に、全身臓器に腫大や結節・肥厚性病変を認め、且つリンパ球、IgG4陽性形質細胞の著しい浸潤と線維化が生じる疾患と定義される。涙腺、唾液腺、膵臓、後腹膜、腎臓、前立腺、リンパ節などに病変を認めることが多い。患者数は増加傾向にあるが患者そのもののが増加したのでは無く、診断技術・能力の向上により従来は他疾患や診断不能であった患者が、IgG4関連疾患と診断された為である。」 

「IgG4は、健常人では全IgGの5%以下で、IgG1~G3と比べると最も少ない。その濃度は、1-140mg/dlと個人差がある。IgG4のFc領域は、補体(C1q)やFcγ受容体への結合が弱く、免疫活性化における役割は少ないと考えられている。興味深いことにIgG4は、形質細胞より分泌された後、他のIgGと異なり、Fab領域が他のFabと交換され、1分子で異なった2つの抗原を認識(bispecific Ab)できるようになることである。こうしたできたBispecific抗体は抗原を架橋せず、免疫複合体形成能の低下によって抗炎症作用を示すと考えられている。  
 IgG4産生は、抗原刺激下で、主にアレルギー反応に関与するTh2タイプのサイトカインであるIL4、IL-13によって産生誘導される。IgEもTh2タイプのサイトカインで産生誘導を受けるが、IL-10、IL-12、IL-21が存在すると、産生はIgEよりIgG4の方に傾く。Th2優位な状態において、さらにregulatory T細胞(IL-10を産生する)が活性化された状況のときに、IgG4が産生誘導されると考えられている。Th2サイトカインは、IgEや好酸球浸潤を誘導し、またregulatory T細胞はTGFβを産生して線維化を促進する。これらのサイトカインがIgG4関連疾患で見られるIgE高値、好酸球浸潤、病変の線維化に関与すると考えられる。
 IgG4関連疾患において産生されるIgG4の役割についてはよく解っていない。自己免疫として組織障害をおこす自己抗体として産生される、あるいは、炎症性の刺激に反応して産生される、との2つの考えがある。確かに、尋常性天疱瘡や落葉状天疱瘡での抗デスモグレイン抗体、血栓性血小板減少性紫斑病での抗ADAMTS13抗体として、IgG4クラスの自己抗体が報告されている。一方、上記したようなIgG4関連疾患では、確立した自己抗体が見つかっていないことや、IgG4は抗炎症作用を持つとの考えから、炎症性の刺激に対する反応として、IgG4が産生されるとの考えがある。」
「…IgG4は、細菌やウイルスなどの病原体に対して身体が抵抗するためのシステム「免疫」に関わるタンパク質です。身体に侵入した病原体や、病原体に既に侵された細胞などと結合し、病原体を無力化したり、白血球などの免疫細胞が病原体を攻撃する際の目印として働いたりする物質をまとめて抗体と呼びますが、IgG4もこの抗体の一つです。
 IgG4関連疾患の患者では、臓器に腫れがみられるほか、血中のIgG4の濃度が正常値と比べて高くなっており、IgG4を産生する「IgG4陽性形質細胞」が異常に増えて臓器に浸潤しています。逆に言えば、この三つを除いて患者同士で共通する特徴はあまりありません。炎症が起こる臓器は患者によってまちまちで、起きた臓器や炎症の程度によって自覚症状も異なります。ステロイド剤など免疫を抑える薬で症状が改善する場合が多いことから、自己免疫疾患であると考えられていますが、疾患の発生、進行などのメカニズムには不明な点が多く、治療法の開発のためにもメカニズムの解明が待たれていました。
 久保教授らのグループでは、マウスを使った実験で、血中にIgG4抗体が存在すると、免疫系の細胞の一つで異物を破壊する能力を持つ「細胞傷害性T細胞」による、組織傷害の程度が大きくなり、組織の炎症が増悪することを発見しました。血中にIgG4抗体が存在すると、T細胞と同じく免疫系の細胞の一つであり、体内に侵入した異物の特徴を他の細胞に提示する「樹状細胞」の働きが促進され、そのことによって細胞傷害性T細胞が活性化しやすくなっていました。これらのことから、IgG4関連疾患に特徴的な強い炎症はIgG4抗体と細胞傷害性T細胞の相乗効果によるものである可能性が示唆されました。」

3.IgG4増加とmRNAワクチン
 最近の調査でmRNAワクチンを2回以上接種した人のIgG4濃度が異常に高くなっていることが分かってきました。
 IgG4抗体の増加の重要な要因は、過剰な抗原濃度、反復接種、使用したワクチンの種類の3つであると言われています。
 mRNAワクチンの反復接種後のIgG4の増加は、保護メカニズムになるのではなく、むしろ天然の抗ウイルス応答を抑制することにより、SARS-CoV2の感染と複製を阻止できないスパイクタンパク質に対する免疫寛容のメカニズムになってしまうとのことです。また高抗原濃度のmRNAワクチン接種を繰り返すことにより、IgG4合成が増加して、自己免疫疾患の原因となり、感受性の高い人においては、がんの増殖や自己免疫性心筋炎を促進する可能性もあるとのことです。
「概要:コロナウイルスSARS-CoV-2の世界的な出現から1年も経たないうちに、mRNA技術に基づく新しいワクチンプラットフォームが市場に導入されました。世界では、多様なプラットフォームのCOVID-19ワクチン約133億8000万回分が投与されました。現在までに、全人口の72.3%が少なくとも一度はCOVID-19ワクチンを接種しています。これらのワクチンによる免疫力が急速に低下し、合併症を持つ人の入院や重症化を予防する能力が最近疑問視されています。また、他の多くのワクチンと同様に、滅菌免疫が得られず、再感染が頻繁に起こることが示されつつあります。また、最近の調査では、mRNAワクチンを2回以上接種した人のIgG4濃度が異常に高いことが判明しています。
 HIV、マラリア、百日咳の各ワクチンも、通常よりも高いIgG4合成を誘導することが報告されています。全体として、IgG4抗体へのクラス転換を決定する重要な要因は、過剰な抗原濃度、反復接種、使用したワクチンの種類、の3つであるとされています。IgG4レベルの増加は、IgE誘導作用を抑制することにより、アレルゲン特異的免疫療法の成功時に起こるのと同様に、免疫の過剰活性化を防ぐことで保護する役割を持つ可能性が示唆されている。しかし、mRNAワクチンの反復接種後に検出されたIgG4レベルの増加は、保護メカニズムではなく、むしろ、天然の抗ウイルス応答を抑制することにより、SARS-CoV2の感染と複製を阻止できないスパイクタンパク質に対する免疫寛容メカニズムである可能性を示す証拠が登場しています。また、高抗原濃度のmRNAワクチン接種の繰り返しによるIgG4合成の増加は、自己免疫疾患の原因となり、感受性の高い人においては、がんの増殖や自己免疫性心筋炎を促進する可能性があります。」

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免疫(12)獲得免疫 細胞性免疫 キラーT細胞

2023-10-06 09:30:20 | 免疫
 細胞性免疫の主役はT細胞、ヘルパーT細胞と細胞傷害性T細胞(キラーT細胞)です。液性免疫のB細胞ではIgGなどの「抗体」が病原体を直接攻撃(不活化や複合体形成(マクロファージなどに貪食される))しますが、キラーT細胞は感染された(又は変異した)自己の細胞が表示する標識を認識して、ヘルパーT細胞の指令により、その感染された又は変異した「自己細胞」を攻撃します。
 そのため、キラーT細胞が自己細胞を過剰に攻撃してしまった場合には、自己免疫疾患(関節リュウマチなど)にかかってしまうこともあります。そのことを防御するため、制御性T細胞がキラーT細胞の過剰攻撃を抑制をしています。
 T細胞にもB細胞の免疫グロブリン(抗体)のような多様な病原体を認識できる受容体があります。免疫グロブリンと同じように、定常部と可変部が存在します。抗体は遊離した抗原でも結合できますが、T細胞の受容体は細胞表面に存在する抗原としか結合しません。
 キラーT細胞は、細胞表面に提示された病原体(分解されたもの)・非自己や異常タンパク質とMHCクラスⅠタンパク質との複合体に結合することにより、活性化して増殖を開始します。その後、キラーT細胞が細胞表面に提示を受けたものと同じ病原体等とMHCⅠクラスタンパク質の複合体と結合すると、パフォーリンいう物質を出してその細胞を融解させたり、その細胞のFasという受容体に結合してその細胞をアポトーシス(プログラムされた細胞死)させます。


 
2種類のT細胞にはT細胞受容体が存在する
 B細胞と同じようにT細胞には特異的な膜受容体が存在する。しかし、T細胞受容体は免疫グロブリンではなく、IgGの半分程度の分子量の糖タンパク質である。それぞれ異なった遺伝子によってコードされている2本のペプチド鎖から構成されている。免疫グロブリンと同じように可変部と定常部が存在する。

        

 T細胞受容体をコードする遺伝子は免疫グロブリンの遺伝子と類似しており、進化的には共通の祖先の遺伝子に由来すると想像できる。免疫グロブリンと同じように定常部と可変部が存在し、可変部に特異的に抗原が結合する。免疫グロブリン(抗体)は遊離した抗原でも細胞表面に結合した抗原でも結合するが、T細胞受容体は抗原提示細胞および標的細胞の細胞表面に存在する抗原としか結合しない。
 T細胞が抗原によって活性化されると、増殖を開始してクローン集団が形成される。そして2種類のT細胞に分化していく。
 ■細胞傷害性T細胞(Tc細胞)はウイルスに感染した細胞や変異細胞を認識して、それを溶解して死滅させる。
 ■ヘルパーT細胞(Th細胞)は細胞性免疫応答や液性免疫応答を制御する。
 MHCタンパク質は免疫系に抗原を提示する
 動物の免疫システムは自己細胞を細胞表面のタンパク質で識別している。この過程には数種類のタンパク質が関与しているが、特に大切なのは主要組織適合抗原遺伝子複合体(MHC)と呼ばれる遺伝子群である。
…MHCがコードするタンパク質は細胞膜糖タンパク質である。ヒトのMHCタンパク質はHLA(ヒト白血球抗原)と、マウスのMHCはH-2タンパク質と呼ばれている。これらのタンパク質の主な機能は、自己抗原と非自己抗原を識別できるようにT細胞受容体に提示することである。MHCタンパク質は2つに大別できる。
 ■MHCクラスⅠタンパク質は動物の細胞核がある細胞のすべて(赤血球や血小板を除く)に存在する。細胞内タンパク質がプロテアソーム(細胞内タンパク質分解酵素複合体)によってペプチド断片に分解されると、MHCクラスⅠタンパク質が結合して細胞膜表面へ移行する。細胞由来のペプチドはMHCクラスⅠタンパク質との複合体として細胞傷害性T細胞に提示される。細胞傷害性T細胞の細胞表面にはMHCクラスⅠタンパク質を認識して結合するCD8というタンパク質が存在する。
 ■MHCクラスⅡタンパク質はB細胞、マクロファージ、その他の抗原提示細胞の細胞表面のみに存在する。抗原提示細胞がウイルスなど非自己抗原を貪食すると、ファゴソーム(異物を分解する細胞内小胞)で分解が行われる。そうして作られた断片にMHCクラスⅡタンパク質が結合し、複合体として細胞表面に移動し、ヘルパーT細胞に提示される。ヘルパーT細胞の細胞表面にはMHCクラスⅡタンパク質を認識して結合するCD4というタンパク質が存在する。
 細胞性免疫応答では細胞傷害性T細胞とMHCクラスⅠタンパク質が主役
 …ウイルスに感染した細胞や変異細胞では、非自己タンパク質や異常タンパク質の断片ペプチドがMHCクラスⅠタンパクと結合する。この複合体は細胞表面に移行し、細胞傷害性T細胞に提示される。細胞性傷害性T細胞は、これを認識してMHCクラスⅠタンパク質ー抗原複合体に結合すると、活性化され増殖を開始する(細胞性免疫応答)。
 細胞性免疫のエフェクター段階では、細胞傷害性T細胞は同じMHCクラスⅠタンパク質ー抗原複合体が表面に存在している細胞に結合する。するとパーフォリンという物質を産出して、その細胞を融解する。さらに、標的細胞のFasという特異的受容体に結合して、その細胞をアポトーシス(プログララムされた細胞死)させる。これら2つの細胞傷害は協調して異常になった自己細胞を除去していく。
 細胞傷害性T細胞は非自己抗原と自己MHCタンパク質との複合体を認識するため、ウイルス感染した自己細胞を除去することができる。また異常になった自己抗原(変異の結果などによる)とMHCタンパク質との複合体を認識することもできるので、遺伝子変異がもたらす異常タンパク質が原因となる腫瘍細胞も除去できる。
 T細胞の活性化には、MHCタンパク質ー抗原複合体と受容体の結合だけでなく、第二のシグナルが必要である。受容体への特異的結合の後に、抗原提示細胞のCD28タンパク質がT細胞受容体と結合することによって、この共刺激シグナルが生じる。この2番目の結合後にT細胞は活性化され、サイトカイン産生や増殖が開始される。また、同時にこれらの事象の抑制因子の産生も開始され、免疫応答が過剰にならないように適切な終結も行われる。この抑制因子は、細胞表面にあるCTLA4というタンパク質であり、CD28と競合し、特に自己抗原の場合に活性化過程を阻止する。
 MHCタンパク質は自己寛容の基盤である
 MHCタンパク質は自己寛容の確立の鍵を握ってる。自己寛容が破綻すると、動物は自分自身の免疫システムによって破綻されてしまうだろう。動物の生涯にわたって、発達過程のT細胞は胸腺で検証される。
①この細胞は自己のMHCタンパク質を認識できるのか?自己MHCを認識できないT細胞は、いかなる免疫反応も行うことが不可能なため、まったく役立たずということになる。このようなT細胞は不合格となり3日以内に死を迎える。
②この細胞は自己MHCタンパク質と自己抗原の複合体と結合するのか?結合するT細胞は生体にとって有害または致死的となる。やはり不合格となりアポトーシスする。
 上記の検証に合格したT細胞は細胞傷害性T細胞あるいはヘルパーT細胞へ成熟していく。
…ヒトではMHCは臓器移植治療の分野で特に重要になっている。MHCがコードするタンパク質は各個人で異なっているため、一卵性双生児間以外の移植では、非自己抗原ということになる。そのため、移植臓器では非自己と認識され免疫応答が惹起され攻撃される(非自己のMHCタンパク質は、T細胞により自己のMHCタンパク質ー非自己抗原複合体と同様に認識されるため、攻撃の対象になる。)(引用終わり)」
 
 
「…免疫細胞は誕生した直後に、胸腺という特殊な組織で身内の「顔」をしっかり記憶し、仲間を決して攻撃しないように教育されている、とかつての免疫学は教えてきた。
 だが、それはいささか楽観的にすぎたようだ。最近の研究では、胸腺にも手抜かりや不手際が少なからずあり、教育不行き届きの免疫細胞を送り出していることがわかってきた。私たちはの体にはわが身を敵とみなす恐ろしい自己反応性の免疫細胞がたくさんうろついて、正常な臓器や組織を攻撃しているのだ。
…免疫細胞たちがそうやって実際に引き起こす病気が、自己免疫疾患なのである。
 骨が溶け、最後には関節まで破壊されてしまう関節リウマチ、膵臓のインスリン生産細胞が破壊されてしまう1型糖尿病、脳や脊髄の神経細胞を覆う膜が攻撃されて多発性の硬い病巣組織ができうる多発性硬化症など枚挙にいとまがない。
 免疫の働きが過剰になったり、自己反応性の免疫細胞が悪さを始めたりしたときに、やりすぎを抑制して「撃ち方やめ」を周知徹底させる役割を担う細胞だ。…制御性T細胞である。
 キラーT細胞もヘルパーT細胞と同様に樹状細胞とつながっていて、抗原提示を受けている。すると、ヘルパーT細胞は近くにいるキラーT細胞に向かって情報伝達分子を放出して増殖を促す。
 ところが、ここに制御性T細胞が現れると、…樹状細胞の上に制御性T細胞がのしかかって、合体して、抗原提示の妨害をするからだ。
 このときの制御性T細胞の武器が、CTLA-4分子。制御性T細胞はこの分子を使って、樹状細胞の表面に出ているB7分子と結びついてしまうのだ。これは、本来であればヘルパーT細胞やキラーT細胞が落ち着くべき場所を、制御性T細胞が横取りしたことにほかならない。
…こうして、制御性T細胞が樹状細胞の表面を覆い尽くしたとしよう。そうなるともはや、ヘルパーT細胞などには樹状細胞と物理的に接触する余地がなくなってしまう。」

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