数理論理教(科学教)の研究

数理論理(科学)はどこから来て、どのような影響を与え、どこに行こうとしているのか、少しでも考えてみたいと思います。人文系

免疫(6)情報伝達物質(生理活性物質) サイトカイン

2023-08-16 09:43:21 | 免疫
1.サイトカイン
 主に免疫系の細胞間において情報伝達を行う低分子タンパク質のことを情報伝達物質といいます。この情報伝達分子は、その情報のやり取りよりも、その後の生理的な発現を重視して、生理活性物質(細胞を活性化する分子)と呼ばれることもあります。
 (主に免疫系)細胞は、トル様受容体(TLR)などが異物を感知したり、免疫細胞が抗原を認識したりすると、その情報により活性化され、いろいろな遺伝子を転写するようになり、サイトカインなどのタンパク質も産出し、細胞から分泌します。
 分泌されたサイトカインは、それの受容体を持つ細胞に結合して、今度はその細胞を活性化させます(自己の細胞が分泌したサイトカインで自己細胞自身が活性化されることもあります)。活性化された細胞は免疫応答などの様々な生理的な働きをするようになります。
 サイトカインにはインターロイキン(現在30種類以上が発見されている)やインターフェロン、腫瘍壊死因子(TNF)などがあります。
 サイトカインは、もちろん免疫に非常に有用な機能ですが、その活性が過度(暴走状態)になると自己免疫疾患関節リウマチなど)などを引き起こし、弊害を及ぼすことがあります。そのため、このサイトカインの過度の働きを抑制するための様々な「抗体医薬」も開発されています。

 
「情報伝達分子(サイトカイン)とは
 細胞から分泌されるたんぱく質で、特定の細胞に情報や命令を伝える生体分子のこと。主に免疫細胞と免疫細胞の間で伝令の役割を果たしている。情報伝達分子は標的の細胞にたどりつくと細胞表面にある受容体と結合、情報を受け取った細胞はさまざまな生理的な営みを体内で始める。
 情報伝達分子は情報の受け渡しよりも、その後に現れる効果の方を重視して生理活性物質と呼ばれることもある。また、「細胞を活性化する分子」という意味からサイトカインとも呼ばれている。
 著名な情報伝達分子としてはウイルスの増殖を抑えるインターフェロン、炎症を起こさせるインターロイキン6、がん細胞を殺す分子として発見されたTNF(腫瘍壊死因子)などが知られている。」

 
「情報伝達分子
 免疫細胞と免疫細胞の間には、情報伝達分子と呼ばれる生体分子が行き来していて、免疫の営みに欠かせない情報や命令を受け渡している。
 たとえば抗原提示を受けたT細胞は、B細胞に抗体の生産を開始するよう指示する。この際、T細胞はB細胞に向かって微量のたんぱく質を放出する。これが情報伝達分子だ。専門家は情報伝達分子をサイトカインとも呼ぶ。
 これまで発見された情報伝達分子の顔ぶれは多彩である。たとえばがんの特効薬として期待されたインターフェロンやTNF(腫瘍壊死因子)、筆者の岸本が発見したインターロイキン6(IL6)などがある。
 インターロイキンとは「白血球と白血球の間をつなぐ分子」という意味の言葉だ。IL6は…発見当初はT細胞がB細胞に抗体を生産を促すための分子と理解されていた。
 だが、この分子がもっているさまざまな働きが、やがて続々と判明した。このうち特に重要なのは、炎症を起こす営みだ。ケガをしたとき、患部が腫れて熱を出すのはこの働きのせいなのだが、そのおかげで傷は早く治る。こうした働きから、IL6は「炎症性」の情報伝達分子と呼ばれている。
 IL6は、悪の顔も持っている。端的な例は、関節リウマチとの深いかかわりだ。関節リウマチは、免疫細胞が自分の体に牙をむく自己免疫疾患で、骨が溶け、最後には関節まで破壊される恐ろしい病気だ。犯人は患部でうごめいているIL6やTNFであることが突きとめられている。」

「サイトカイン (cytokine) は、細胞から分泌される低分子のタンパク質で生理活性物質の総称。生理活性蛋白質とも呼ばれ、細胞間相互作用に関与し周囲の細胞に影響を与える。放出する細胞によって作用は変わるが、詳細な働きは解明途中である。 
…細胞シグナリングにおいて重要な小さい蛋白質(およそ5 - 20 kDa)であり、広範かつ緩やかな分類概念である。細胞からのサイトカイン分泌は周囲の細胞の行動に影響する。サイトカインはオートクリン、パラクリン、および内分泌のシグナリングに免疫調節因子として関与するといえる。サイトカインのホルモンとの明確な違いについては現在研究途上にある。サイトカインにはケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、および腫瘍壊死因子が含まれる一方、例えばエリスロポエチンのように多少の用語上の重複があるものの、一般的にはホルモンと成長因子は含まれない。サイトカインは多様な細胞により産生される。それにはマクロファージ、Bリンパ球、Tリンパ球、肥満細胞といった免疫細胞のほかに内皮細胞、線維芽細胞、各種の間葉系細胞をも含む。したがって、ある1つのサイトカインが多種類の細胞により産生されることがありうる。
 サイトカインは受容体を介して働き、免疫系において殊の外重要である。たとえば、サイトカインは液性免疫と細胞性免疫のバランスを調節し、ある特定の細胞集団の成熟、成長、および反応性を制御する。ある種のサイトカインは他のサイトカインの作用を複雑な方法で増進または抑制する。
 ホルモンもやはり重要な細胞シグナリング分子であるが、サイトカインは一般にホルモンとは異なる。ホルモンは特定の臓器の内分泌腺より血中に分泌され、比較的一定の範囲の濃度に保たれる。
 サイトカインは健康・病気いずれの状態においても重要であり、感染への宿主応答、免疫応答、炎症、外傷、敗血症、がん、生殖における重要性が特記される。

以下の様な分類がされる。
  1. インターロイキン(IL)
  2. 造血因子(CSF, EPO, TPO)
  3. インターフェロン(IFN)
  4. 腫瘍壊死因子(TNF)
  5. 増殖因子
  6. 増殖因子(EGF, FGF, PDGF)
  7. 7.ケモカイン(IL-8)
受容体(レセプター)
構造上類似しているものがあり、ファミリーが形成される。
  • a クラス I(ヘモポイエチンレセプター):IL-2〜7, 9, 11〜13, 15. GM-CSF, G-CSF, EPO, TPO, LIF, OSM, CNTF, GH, leptin.
  • b クラス II:インターフェロン、IL-10.
  • c Fas/TNFR:TNF, FasL, CD40L
  • d セリン/スレオニンキナーゼ:TGF-b, activin, inhibin.
  • e チロシンキナーゼ:EGF, PDGF, FGF, M-CSF, SCF.
  • f ケモカイン:IL-8, IL-16, Eotaxin, RANTES.
  • g TLR/IL-1R:IL-1, bacteria     
…最初に見つかったのはI型インターフェロンであるインターフェロン・アルファ (IFN-α) で、1954年に長野泰一らがウイルス干渉因子として発見したものが最初の報告とされる。ただし、インターフェロンの名は、アリック・アイザックスらが1957年に同様の因子を独自に発見したときに名付けたものであり、これが最初の発見とする研究者もいる。II型インターフェロンであるインターフェロン・ガンマ (IFN-γ) は1965年に記述された。マクロファージ遊走阻止因子 (MIF) の発見は1966年に2つのグループにより同時に報告された。
 1969年、ダドリー・デュモンド (Dudley DuMonde) が、これらの分子がいずれも広義の白血球(リンパ球、単球、マクロファージを含む)によって産生されることに着目し、「リンフォカイン」(lymphokine:白血球を意味する接頭語 lympho- とギリシア語で「動く」を意味する kinein からの造語)と総称することを提案した。その後、白血球の種類によって産生する分子に違いが見られることから、特にリンパ球系の細胞が産生するものは「リンフォカイン」、単球系(単球とマクロファージ)が産生するものは「モノカイン」(monokine:mono-は単球を意味するmonocytesに由来)と総称されるようになった。
 1974年、スタンリー・コーエンらはウイルスの感染した線維芽細胞がMIFを産生することを発表し、この蛋白の産生が免疫系細胞に限定されないことを示した。ここからコーエンは「サイトカイン」の語を提唱した。

…サイトカインはすでに数百種類が発見され、今日も発見が続いている。機能的には次のように分けられる(ただし重複するものも多い)。
  • インターロイキン (Interleukin (IL); インターリューキン):白血球が分泌し免疫系の調節に機能する。現在30種以上が知られる。
  • 同様に免疫系調節に関与するもので、リンパ球が分泌するものをリンフォカインという。また単球やマクロファージが分泌するものをモノカインということもある。
  • ケモカイン (chemokine):白血球の遊走を誘導する。
  • インターフェロン(Interferon; IFN):ウイルス増殖阻止や細胞増殖抑制の機能を持ち、免疫系でも重要である。
  • 造血因子:血球の分化・増殖を促進する。コロニー刺激因子(Coloney-Stimulating Factor (CSF):マクロファージを刺激)、顆粒球コロニー刺激因子(Granulocyte- (G-)CSF)、エリスロポエチン(Erythropoietin (EPO):赤血球を刺激)などがある。
  • 細胞増殖因子:特定の細胞に対して増殖を促進する。上皮成長因子(Epidermal Growth Factor (EGF))、線維芽細胞成長因子(Fibroblast Growth Factor (FGF))、血小板由来成長因子(Platelet-Derived Growth Factor (PDGF))、肝細胞成長因子(Hepatocyto Growth Factor (HGF))、トランスフォーミング成長因子(TGF)などがある。
  • 細胞傷害因子:腫瘍壊死因子(TNF-α)やリンフォトキシン(TNF-β)など、細胞にアポトーシスを誘発する。これらは構造的にも互いに類似しTNFスーパーファミリーと呼ばれる。
  • アディポカイン:脂肪組織から分泌されるレプチン、TNF-αなどで、食欲や脂質代謝の調節に関わる。
  • 神経栄養因子:神経成長因子(NGF)など、神経細胞の成長を促進する。
また構造的な類似から、多くのインターロイキンやCSF、G-CSF、EPOなどをまとめてI型サイトカイン、インターフェロンやIL-10などをII型サイトカインともいう。
  • コペンハーゲン大学医学部の教授(Bente Klarlund Pederson)により命名されたマイオカイン(Myokine)と呼ばれる運動因子誘発型インターロイキン6の一種が、最近になって成長ホルモンを増量させる効果があると言われるようになってきた。(引用終わり)」



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 免疫(5)細胞の病原体セン... | トップ | 免疫(7)インターロイキン... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

免疫」カテゴリの最新記事