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数理論理教(科学教)の研究

数理論理(科学)はどこから来て、どのような影響を与え、どこに行こうとしているのか、少しでも考えてみたいと思います。人文系

原発と安全保障(6)小泉・細川元首相の革新的政治運動、潜在的核武装の行方?

2014-02-02 20:37:06 | 原発と安全保障
東京都知事選挙では、細川・小泉元首相が反原発を掲げて、戦っておられます。両者の演説で話される内容は、まさに今回の原発災害及び原子力政策(国策原発)の核心をついていると思います。
 政治家の演説を聞いて、これほど(涙が出るほど)感動したことはありません。また南相馬の桜井市長の演説は、エネルギーを貪る都会人に対する「檄文」(福島原発公害の責任は日本人一人一人が本当に自覚しないといけない)のような内容です。

 
 しかし、核武装国〔米国・ロシア・中国など(狂っているとしか思えないですが)〕に囲まれている日本は、「潜在的核武装」を「武装解除」した場合、本当にやっていくことができるのでしょうか(外国から侵略を防げるのでしょうか)?

 今回の福島原発災害では、自国に「死の灰(放射性廃棄物)」が大量にばら撒かれてしまいました。さらにメルトアウトや使用済み核燃料による危機(さらなる「死の灰」の放出・漏出)が間近に迫っています。
 それに地震や火山噴火などにより、他の原発でも重大な災害(「死の灰」の放出・漏出)が起こるかもしれません。原発は止まっていても、そこに収用されている使用済み核燃料が冷却できなくなればアウトになります。
 
 もはや本当に滅亡に近づいているかもしれません。

 それでも潜在的核武装(国策原発)は必要でしょうか?

〔反原発による経済的なエネルギーの安全保障問題は、最悪でも生活哲学を変えれば対処できると思います。それなりにエネルギーを使用しない社会システムというのも可能かと思います。何も経済大国であり続ける必要もないと思います。〕

 しかし軍事的な安全保障の問題は別かもしれません。

 戦後の日本の安全保障は、表面的には「日米安全保障条約」によって保たれたきたと思いますが、より根幹的には「潜在的核武装(国策原発)」により担保されてきたと思います〔平和憲法下での実質的な抑止力〕。

 どんなにきれいごとを言っても、軍事的なバックグラウンドがなければ、外交では相手にされないと思います。あの北朝鮮でさえ、核問題でかろうじて外交交渉を行なっているようです。

 有馬哲夫 早稲田大学教授の「原発と安全保障」(WASEDA ONLINE)という記事を見ますと、国策原発は外交交渉上の最大の武器となったようです。

「サンフランシスコ平和条約と同時に結んだ安保条約は、占領を終結させるためのまざるを得なかったもので、幕末の不平等条約にまさるとも劣らない日本にとって不利なものだった。
 この条約では、米軍は日本を防衛する義務を負わないにもかかわらず、日本のどこにでも駐留でき、核兵器の持込に際してもなんら制限されなかった。しかも、この条約は期限がなく、日本の側からは破棄できないものだった。
 岸はこれをより平等なものに改定したかった。つまり、日本は米軍にいくつかの基地を提供するが、地上部隊の大部分は日本から撤退してもらう。日本を核戦争に巻き込む可能性のある核兵器の持ち込みはさせない。改定後の条約の期限は10年とし、10年毎に両国で協議のうえ更新する。
 この岸の改定案の問題点は、米軍の地上軍のかなりの部分が撤退し、ほとんど無防備になった状態で、日本が中国とソ連の脅威にさらされることだ。この両国は50年に同盟を結んでいて、とくにソ連は核兵器を保有していた。
 そこで、岸は現行の憲法でも自衛のための核武装は可能であると主張した。たしかに、そう主張しない限り、岸が考えている改定は現実的とはいえなかった。
 米国側はこの核武装合憲発言に大きな衝撃を受けた。事実、CIAは岸が帰国したあと、日本の核武装能力について本格的に調査した。以下に引用するのは、57年7月26日付のCIAインテリジェンス報告書の要旨だ。

 有能な米国政府当局者は、日本が貯蔵していると最近報告したウランを原子炉の燃料に利用することに成功するなら、日本はどの国の助けも得ずに67年までに核兵器を製造できると考えている。日本はこの邪魔になる条件(貯蔵量を報告する、以下カッコ中は著者注)を免れるためにあらゆる努力をしている。日本政府は米国と英国が核燃料の輸出に関してその副産物(プルトニウムなど)の利用について課している制限を受けずに大規模な原子力プログラムを行うのに十分なウラニウムを確保するための国内外のプログラムを急いで進めている。
(中略)

もし日本が、制限が課されていない核燃料の供給を受け、かつ、自前の原発を製造することに成功するなら、日本は核兵器に使うことができる核物質(プルトニウム)を得ることになるだろう。原子炉が英国製の「コルダーホール型」や天然ウランを使用する型のものだった場合、その供給はきわめて多量になる。(米国第二公文書館所蔵国務省文書から)

 当時岸政権で原子力委員長(兼国家公安委員長)を務めていた正力松太郎は、米国政府の反対にもかかわらず、英国からコルダーホール型の原発の導入を進めていた。したがって、岸の自衛核武装論は机上の空論ではなかった。
 米国政府は安保条約の改定に応じるか、さもなければ日本に核武装を許すかの選択を迫られた。そして、前者を選んだ。その他のさまざまな経緯を経たのち、60年に安保条約は改定された。
 66年に日本初の東海発電所が稼動を始め、1年におよそ50キログラムのプルトニウムを産出するようになると、米国は日本の核武装能力に縛りをかけるためにNPT(核拡散防止条約)への加入を迫った。当時の総理大臣佐藤栄作は、この条約に加盟すべきか、それとも核武装すべきか検討するよう研究者に命じた。(内閣情報調査局の秘密文書「日本の核政策に関する基礎的研究」などがある)。
 その結果、日本は、当分は核武装せず、米国から引き続き核燃料の供給を受け、原子力発電によって急増する電力需要をまかない、経済的繁栄を目指すことにした。70年、日本はNPTに署名したが、米国政府の苛立ちを後目に国会での批准を引き伸ばし、正式に加盟したのは沖縄が返還され、日中国交回復が成し遂げられたあとの74年だった。(引用終わり)」

 岸さんは最悪「米国と刺し違える覚悟」で交渉に当たっていたようです。このような軍事的な脅かしにより、初めて米国も折れたのではないでしょうか。
 岸さんも正力さんも「CIAのエージェント」と言われることがありますが、米国を利用して、また米国と戦って、自らの利権拡大も行い、核心的には民族的な自立に努力されたのかもしれません。

 しかし、福島原発災害によって、この「潜在的核武装(国策原発)」は諸刃の剣であることがはっきりしました。日本では、プレートの海溝型地震や、活断層による直下型地震が多発します。自国の原発施設が安全保障上の最大の脅威になってしまいました。また今回の地震活動期は平安時代の大地動乱に酷似しているとの指摘もされています。もはやロシアンルーレットのような状況かもしれません。

 田母神さんは都知事選挙で「原発推進」を掲げていますが、反原発陣営からは今更何を言っているのかと呆れられているようです。

 田母神さんは討論では、「原発推進」の理由を経済エネルギーの問題だけとして言及していますが、本当に言いたいことは、「潜在的核武装」を放棄することにより、他国からの侵略を許してしまうということだと思います。
 つまり「国策原発」を止めて丸裸になってしまえば、米国主導の自衛隊など何の抑止力にもならなくなってしまう。中国が核攻撃で脅かしてきた場合、米国は果たして助けてくれるのか?米国の議会は核戦争の危険を犯してまで日本を守る決断をするだろうか?また米国に万が一重大なトラブルがあった場合、その隙を突いて中国が侵攻してきた場合、防衛することができるのか?

 これはこれで論理的な主張かもしれません。中国に制圧されれば、チベットのような状況に陥るかもしれません(これもこれで民族浄化による滅亡に繋がるかもしれません)。

 そういう意味では、疫学的な頻度による放射能汚染の被害などはまったく問題ないと考えているのかもしれません。侵略されて滅亡するより、多少の健康被害など問題ではないという訳かもしれません〔演説では、ICRPの基準を引き合いにして、福島ではまったく健康被害はないと強弁しているようですが…〕。

 しかし原発を攻撃されれば(テロ攻撃でも)、終わりになりますよね。そのため核武装して、攻撃されないように、日中の核のチキンレースを行なおうというつもりでしょうか。地震・火山噴火による原発震災というチキンレースの他に、核兵器のチキンレースもしようというつもりでしょうか。

 小泉元首相や細川元首相がおっしゃっている原発の危険性は真実だと思います。

 小泉元首相が言っていた、「原発なくてもやっていける陣営と原発なければやっていけない陣営の戦いなんだ」「これは話し合ったって解決できない、国民が選択しないといけないんだ」というのは、まったくもって正しい見方だと思います。

 ある意味、「軍事闘争なき内戦」だと思います。小泉元首相は、米国との同盟を維持しながら、基本的な資本主義制度も維持しながら、国家滅亡に繋がる国策原発政策を止め、新たな科学技術によって創造的・共生的なシステムを構築していこうという考えだと思います。そしてそれは世界的なムーブメントになると確信しているように思われます。
 
 小泉・細川元首相は、現実的な反原発の「選択肢」を創出されたのだと思います。都知事選以降も、この対立軸は鮮明になっていくと思われます。福島(首都圏まで含め)での健康被害が露になっていくにつれて、この対立は先鋭すると思います。

 ある政党は、反原発・日米安保反対・自衛隊違憲などと唱えられていますが、これはあまりにも無責任なのではないでしょうか。どうやって安全保障を担保されるのでしょうか?

 今後、原発から先に手を引いた国が生き残るということになるかもしれません。

 また米国も日本の「国策原発」はもう危ない、脅威だと感じ始めているのかもしれません。

 今のところ小泉さんや細川さんに対する検察や税務又はマスコミの謀略的な攻撃はないようです。日本の諜報・謀略組織は表向きは警察公安や公安調査庁ですが、実質的には米国CIAや軍部に直接管理される非公式な組織(官・民含めて)があるとのことです(題名は忘れましたが陸軍中野学校関連の本に書かれてありました)。

 都知事選ですので、それほど干渉しないということも考えられますが、もし米国が反原発運動を安全保障上の障害と見れば、何らかの謀略が行なわれると思います。

 米国は日本の原発災害から直接的に放射能汚染を受けるということが、今回はっきり分かったのだと思います。地震大国の日本の原発はもはや「最大級の脅威」とみなしているのではないでしょうか。

 また米国は核兵器に代わる、重力兵器:CSM(Conventional Strike Missile) 、電磁波応用兵器(高周波活性オーロラ調査プログラムなど)、レーザー兵器、その他最先端科学兵器により安全保障を十分担保できると考えているようです。

 そにため日本には、もはや原発もプルトニウム備蓄も必要ないという考えているのかもしれません。

 米国自身も核関連兵器・施設をどうにか処分したいと思っているかもしれません。

 小泉・細川元首相は、内部被曝の危険性については具体的に言及していないと思います。これは米国との最低限の約束なのかも知れません(左派の政党も内部被曝には言及していないと思いますが…)。

 こうなると「日本の国策原発グループ」と「米国での原子力利権派」は、徐々に包囲されていくということでしょうか?

 私は、小泉・細川元首相の新たな政治哲学に賛同致します。この現実的な政治革新運動が大きくなることを期待致します。 

 

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原発と安全保障(5) 原発震災、石橋克彦教授の警告

2013-12-08 20:00:24 | 原発と安全保障
「原発震災」という言葉があるそうです。


「原発震災(げんぱつしんさい、英語: Genpatsu-shinsai)とは、原子力発電所(原発)が地震で大事故を起こし、通常の震災と放射能災害とが複合・増幅しあう破局的災害のことである。」

「地震学者・石橋克彦による造語。石橋は、『科学』1997年10月号の論文「原発震災--破滅を避けるために」にて、以下の危険性を警告した。

地震が街に被害を及ぼすと同時に原発にも事故を発生させ、通常の震災に加えて放射性物質による被曝でも多くの人が死傷する。原発から大量の放射性物質が漏れ出すと、被曝を恐れ、地震被災地に救援物資や応援部隊を送り込むことができなくなる。交通網の寸断で避難も難しくなる。

1999年の東海村JCO臨界事故発生や、東海地震による浜岡原子力発電所の大事故の危険性の指摘などにより、原発震災についての議論が深められていった。

2007年7月16日の新潟県中越沖地震では、柏崎刈羽原子力発電所が想定を超える揺れにより損傷し、火災が発生。放射性物質漏洩も確認されるなど、警告が現実のものとなった。

イギリスの「タイムズ」は、 Genpatsu-shinsai: the language of disaster that is stalking Japan (原発震災:日本に忍びよる大惨事の言葉)の見出しで、<日本語には世界的に有名な、死を意味するツナミ、カミカゼ、ヒロシマなど恐ろしい言葉があるが、ゲンパツシンサイもその一つに加わるのかもしれない。石橋克彦教授ら学者たちは原発の建設について政府に対し、強く警告してきた>[1]との記事を掲載[2]。欧米でも、この語が用いられるようになった。(引用終わり)」

 すでに石橋教授が今回の福島原発事故のような災害を正確に予測して、警告していました。しかしこの警告は活かされませんでした。


 
 
1.活断層は発見されているもの以外に、表面からは分からない無数の活断層がある可能性がある。現在の活断層だけからは判断できない、そのため原発近辺での直下型地震は起こりえる。特に日本海沿岸地域(日本海の岩板と東北日本岩板が衝突している地帯である)では直下型地震が起こる可能性は高い。またマグニチュード8級の東海地震では、連動してM7.5級の直下地震が複数起こる可能性がある。これらに対して現在の原発の耐震強度では対応するこはできない。
 また東南海・南海と連動すれば巨大な大津波も予想される。
 
2.配管・弁・ポンプ類・原子炉そのものなども耐震性に問題がある。大津波などによる全電源喪失などとも相まって、メルトダウンの危険性もある。そうなれば広範囲に放射性汚染にまみれる(浜岡であれば首都圏も直撃する)。

3.地震防災論や震災対策は、原発震災抜きでは考えられない。防災基本計画から地域防災計画や民間対策まで、全国規模で原発震災を具体的の想定したものに改める必要がある。

 どうしてこの警告は活かされなかったのか?これほど正確に危険性を指摘されていたのに、どうして実施できなかったのか?

 安全保障というと、強面の方が、核兵器が必要だ!憲法改正・再軍備!などと警告・主張されていますが、自国の原発の危険性は考えてこなかったのでしょうか?

 とにかく「自由な選挙で選ばれた国会議員さんたち」が政策を決めてきた訳ですから(実質は官僚さんでも)、「国策原発」は良くも悪くも国民が選択してきたということでしょう。確かにメリットもありました。エネルギー供給が安定し、また潜在的核保有国として安全保障にも寄与していたと思います(とにかく米国・旧ソ連(ロシア)・中国と核武装国に囲まれている訳ですので)。

 しかし、その原発の安全規制・災害対策について合理的な検討をしてこなかったということは、なぜでしょうか?

 原発の安全保障(テロ対策・安全規制・災害対策)は右も左もなく行なわなければならない最重要な問題のはずです(国家滅亡につながります、それも永遠の放射能汚染で二度と再興できません)。なぜ手抜きになってしまったのか?なぜそれほどまでに安易に済ませてしまったのか?

 科学技術とどうしてまともに向き合えなかったのか?その真実の姿をどうして見ようとしなかったのか?基本的に日本人すべてが「科学技術」を真に消化できていないのだと思います。「科学技術」とは何なのか?どこから来て、どのような影響を与え、どこに行こうとしているのか?その真実の姿を見るべきです。そしてそれは宗教的な実存哲学の問題に繋がります。

 石橋教授の警告は福島原発事故以後も継続しています。次はどの原発が大災害に襲われるか分かりません。至急「原発震災」を想定した具体的な防災対策を立てるべきかと思います。もう手遅れですが、さらなる惨事にならないために。

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原発と安全保障(4)米国原子力防災対策、福島も同レベルであれば

2013-11-29 20:49:08 | 原発と安全保障

「米国では、1954年の原子力エネルギー法(The Atomic Energy Act)および1974年のエネルギー再編成法(The Energy Reorganization Act)に基づいて、放射線緊急事態のための準備に関する責任を原子力規制委員会(NRC)の許認可権限に求め、NRCに広範な法的権限を与えている。緊急時に対応する連邦機関は、その施設・事故の種別により定められているが、商用原子力発電所はNRCが担当している。米国での原子力防災(緊急時対応)対策は、事業者、州および地方政府、そして連邦政府諸機関の連携の下に実施される。公衆に対する緊急時対応はまず地方政府がその任にあたり、緊急時対応対策にかかわる意思決定は州政府が行う。米国では1979年3月に発生したスリーマイル島2号炉(TMI)における事故を契機に原子力施設の緊急時対応計画が全面的に見直され、その後幾つかの改訂を経て現在に至っている。一方、原子力施設におけるテロリストによる脅威またはテロ行為も、放射線緊急事態と想定され、2001年9月11日に発生した同時多発テロの結果として、国家緊急事態に対応する基本的な変更が行われた。」

「TMI事故後、NRCは規則改正により商用原子力発電所の緊急時計画および準備の大幅な変更を実施した。1980年には連邦規則である10CFR50の付則を改訂し、(1)緊急時計画の情報、(2)緊急時計画の内容、(3)緊急時計画の実施手順、および(4)緊急時対応データシステムを定め、10CFR50.47を追加した。これによって緊急時計画は敷地外まで拡張され、新規則にしたがって緊急時計画を改訂することが全原子力発電所に義務付けられた。緊急時計画は、許認可発給の条件の1つとなっており、事業者がサイト内で実施するオンサイト緊急時計画と、地元の州・地方政府が公衆の防護のためにサイト外で実施するオフサイト緊急時計画がある。NRCは、このオフサイト緊急時計画に対する連邦緊急事態管理庁(FEMA)の妥当性評価に基づき、オフサイト緊急時計画の整合性等を評価することになっている。事業者および州と地方政府の作成する緊急時計画の統一的な評価基準は、NRCとFEMAが共同作成したNUREG-0654(FEMA-REP-1)Rev.1(1980年11月付)「原子力発電所支援のための放射線緊急事態対応計画および準備の作成・評価基準」に示されている。これら緊急時計画の作成の流れを図1に示す。
 
 一方、原子力施設におけるテロリストによる脅威またはテロ行為も、放射線緊急事態と想定されるが、2001年9月11日に発生した同時多発テロの結果として、国家緊急事態に対応する基本的な変更が行われた。国土安全保障法(Homeland Security Act of 2002)」が2002年に成立し、テロ対策に関係する8省庁および22政府機関を統合した国土安全保障省(DHS)が設置された。この中には、それまで災害準備の統括を行っていたFEMAも含まれている。その後、DHSは2004年12月付で国家対応計画(NRP:National Response Plan)を作成した。NRPは、米国内での自然災害や原子力災害に加え、テロ攻撃への対処も含めた災害の防止、準備、対応、および復旧計画を1つの計画に統合したもので、初期国家対応計画(INRP)、連邦対応計画(FRP)、米国政府省庁間国内テロ対応計画(CONPLAN)および連邦放射線緊急事態対応計画(FRERP:Federal Radiological Emergency Response Plan)の対応計画等を再編した。NRPに示されている国家非常事態管理システム(NIMS:National Incident Management System)に基づく各組織(中央と現地)の連携に係る基本形を図2に示す。
 NRPに示されている原子力事故/放射線事故時の主管官庁(Coordinating Agency)を表1に示すが、これは、これまでFRERPで規定されていたものにテロ事案を追加した形に再編されている。事故時の対応機能とそれを主導する政府機関については、表2に示すようになっている。また、NRCとDHSの関係を図3に示す。」

「2.緊急時対応に係る事業者、州および地方政府、NRC、連邦政府の役割
 緊急時対応に係る事業者、州および地方政府、NRC、そして連邦政府の役割は次のとおりである。
 事業者は、炉心の保護、および環境への放射性物質の放出抑制など事故の制御と影響の緩和を図る。また、緊急事態発生から15分以内に外部の関連当局に緊急事態発生の旨通知し、必要ならば公衆に対する避難等の防護対策に関する勧告を州および地方政府に行う。
 州および地方政府は、公衆を事故の影響から守るとともに、事故に関する情報を公衆に通知し、必要ならば防護対策を実施する。防護対策実施の意思決定は州政府が行う。
 NRCは事業者の緊急時対応をモニターするとともに、事業者から要請があれば技術支援を行う。また、連邦政府の緊急時対応の中で技術面での中心的役割を担う。NRCサイトチームが現場に到着し、機関の指導的役割を引き受ける旨を宣言すると直ちに、同チームには、連邦政府の対応を指揮する権限が付与される。(引用終わり)」

 原子力規制委員会(NRC)、国土安全保障省(DHS)〔その配下の連邦緊急事態管理庁(FAMA)〕、エネルギー省、事業者、州および地方政府が複層になり防護体制を取っているようです。

 そして防護対策実施の意思決定は州政府が行なうとのことです。

 またNRCサイトチームが到着し、指導的役割を引き受ける旨を宣言すると直ちに、連邦政府の指揮権限が付与されます。

 これは当たり前の話だと思います。地元の政治的組織が最終意志決定し(そのための有識者チームや強力な組織があることが前提ですが)、原子力防災の専門機関のNRCが政府から権限を付与され、事故対策に当たるということです。

 そして事前に厳重な安全規制チェックと綿密な事故対応訓練を行なうことが必須です。もちろんオンサイトのみでなく、オフサイトにおいても実施されます。

 特に2001年9月11日のテロ事件から、その防御体制がさらに厳しくなったとのことです。テロ対策を考えれば、全電源喪失など当たり前の危機管理になると思います。交流電源・直流電源が全て失われたとき、どのように手動で対応するか、詳細なマニュアルと訓練が必要です。


 「各許可事業者は、爆発や火災によってプラントの大きな領域が失われた状況(the circumstances associated with loss of large areas of the plant due to explosions or fire)の下で、炉心冷却、閉じ込め、使用済燃料プール冷却を維持または復旧するための手順と戦略を開発・実装しなければならない。

 その具体的内容の多くは福島第一原発事故の前は「保安関連情報(Security Related Information)」として非公表(Official Use Only)とされていたが、日本政府の原子力安全・保安院には秘密裏に提供されていた。」

「これらB5bが想定する事態の一つが全電源喪失だった。B5bの指導文書ではこれを「LIPD(a loss of internal power distribution)」という略称で呼び、それへの対策は、発電所内外の直流電源も交流電源も使えない状態(without any off-site or on-site AC or DC power)で実施可能なものでなければならないとされている。」

「検査官は、被害緩和戦略の実施のために準備されている可搬の装備が十分かを評価した。評価対象の装備には、屋外の消火栓、ホース置き場、屋内の水供給パイプ、ホース置き場、可搬のディーゼルポンプと吸引・発射ホースなどが含まれている。検査官はまた、B5b関連装備が非常時に使えるかどうかという観点から、その保管場所を評価した(たとえば、100ヤード以上、プラントから離れているかなど)。

 発電所のスタッフとの議論や、文書の閲覧、プラントの踏査によって、検査官は、原子炉隔離時冷却系(RCIC)が交流電源や直流電源がない状態で手動で制御できるかを評価した。検査官は、『直流電源なしのRCIC手動制御』という発電所の手順書にその方法が示されていることを確認した。(引用終わり)」

 福島原発事故で最も苦しんだのは、全電源喪失(交流・直流)による手動操作の困難性でした。それを行なう詳細なマニュアルがなく、また設備・装備もありませんした。やはり福島原発事故は「人災」だと思います。備えるべき対策が行なわれていなかったのだと思います。

 米国では、それでもテロ対策には不十分だという議論がされています。



「 FEMA の本部はワシントンD.C. にあり、全米に10 か所の地方局がある。常勤職員約3,700名のほかに約4,000 名の臨時職員がいる。

 FEMA の組織機構は、救助・救援、復興、事前準備、被害軽減という危機管理の四つの
役割に基本的には対応したものとなっている。

 FEMA が総合調整役である国家対応枠組には、連邦政府等の38 の関係機関に対する15
の緊急支援業務ごとに調整機関、主要機関、支援機関の分担が定められている。災害時、
FEMA の緊急業務センターに主務官庁の課長レベルが集結し、連絡調整することとなって
いる。

 FEMA は、危機管理に関する常設の総合的一元的行政機関であるが、このような組織は
我が国にはない。

 ウィット元FEMA 長官、レオ・ボスナー元FEMA 危機管理専門官は、我が国の災害対
応能力を強化するため、内閣府災害担当部局、内閣官房危機管理室、総務省消防庁を中核
として統合し、日本版FEMA を設立することを提言している。

 我が国と比較した場合、米国の危機管理における最大の特徴は教育にある。ウィット元
FEMA 長官は米国の緊急事態管理研究所(EMI)をモデルとした「国立危機管理教育訓練
センター」といった組織を設立し、危機管理専門家を育成し、国、都道府県、市町村等に
配置することを提言している。(引用終わり)」

 東京湾北部地震、東海・東南海・南海三連動地震、富士山噴火、原発テロ、福島メルトアウト災害・使用済核燃料管理の継続などなど、今後も日本での危機は続きます。

 至急総合的(「省益」という幕藩体制を解消して)な緊急管理組織と教育・訓練が必要だと思います。アベノミクスで踊っている場合ではないと思います。いくら企業が利益を上げても、巨大災害で木っ端微塵になってしまいます。もう仮想現実(マスコミ洗脳)は止めて、現実を直視しましょう。それに中国の不穏な動きもあります…

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原発と安全保障(3)米国原子力規制委員会 規制の虜 

2013-11-22 21:19:26 | 原発と安全保障
米国の原子力規制の中心は、『米国原子力規制委員会』です。

 
「1.原子力規制委員会の構成
 1974年、米国議会は原子力の利用について国民の生活の安全、環境の保全、および国の防衛と保安の観点から、原子力規制委員会(NRC:Nuclear Regulatory Commission)を独立機関として設立した。
 図1は組織の概要を示す。原子力委員は定員5名であり、委員と委員長は大統領に任命される。委員会は、政策、規制、許認可、法的な裁定に係る。
 総局長は、委員会の政策と決定を実施し、計画の進行を管理する。三人の副局長は、それぞれ1)原子炉と緊急時対策、2)放射性物質、廃棄物、研究開発及び法令順守、及び3)マネージメントを担当する。マネージメントの中でコンピュータ保安室が高位に在るのは、今日の情報社会を反映している。
 図2は、本部と支所の配置を示す。本部はメリーランド州ロックビルにある。予算は約917百万ドル(2007年)、多くが許認可の業務費で,職員3,535人(2007年)。」


 職員3,500人をようする独立機関で、政策・規制・許認可・法的な裁定にも係っています。

 しかし、米国の原子力規制当局も「ザル」だったようです。

 〔ただし日本の場合は網目の荒いザルで水がジャージャー漏れるの比べ、米国では網目が細かくチョロチョロ漏れるようです。〕


「NRC を規制の虜(regulatory capture)の一例として批判的に見る向きもあり 、憂慮する科学者同盟(英語版) (Union of Concerned Scientists) からは十分な役割を果たしていないと糾弾されている 」

「規制の虜(きせいのとりこ、英:Regulatory Capture)とは、規制機関が被規制側の勢力に実質的に支配されてしまうような状況であり、この状況下では、被規制産業が規制当局をコントロールできてしまう余地がありうる。政府の失敗の1つである。その場合には、負の外部性が発生しており、そのような規制当局は、「虜にされた規制当局(captured agencies)」と呼ばれる。」

「1987年の「NRCと産業界の甘い関係」("NRC Coziness with Industry")と題された米国議会報告は、NRCは「原子力産業界の『利害に左右されない規制の姿勢』(arms length regulatory posture) の維持をおこたり…、いくつかの批判的であるべき分野で、完全なる規制者としての役割を放棄している」と結論付けている[12]。 以下に3つの例を引用する:

 1986年の米国議会報告はNRCのスタッフが運用免許の取得を求めていた電力事業者に対して、重要な技術的援助を与えていたことを明らかにしている。1980年代の後半にはNRCは、運用免許所持者の状態に関して強制する立場を取らないという「非強制政策」を提唱して、1989年9月から1994年にかけて、「NRCは原子炉の規制強化を340回以上に渡って放棄または選択しなかった」。最後に批判者は、NRCは規制者としての重要な権能を、スリーマイル島原子力発電所事故を契機に事業者自身が創設した原子力発電運転協会(英語版) (Institute for Nuclear Power Operations : INPO)に明け渡してしまったと糾弾している[12]。

 Byrne と Hoffman によれば、1980年代からNRCは概して原子力産業の利益に好意的であり、産業界の懸念に対して不適切に敏感であった。NRCはしばしば、強い規制を遂行することに失敗している。同時にNRCは規制プロセスへの公衆のアクセスを拒否または阻害し、公衆の参加に対する新たな障壁を設けている[13]。

 Frank N. von Hippel によれば、1979年のスリーマイル島事故 (ペンシルベニア州)にもかかわらず、NRCは米国内の104の商業用原子炉が安全に運用されるよう保証する上では、しばしば過度に及び腰であった:

 原子力は「規制の虜」の教科書的な実例である。この状態においては、産業界はそれを規制するはずの規制機関をコントロール下に置いてしまう。規制の虜は公衆による旺盛な吟味と議会による監督においてのみ打破することが可能であるが、スリーマイル島事故から32年を経過して、原子力規制に対する関心は極めて急激に低下している[14]。

 規制の失敗にはいろいろな形態があり得るが、これには規制者と産業界の共通認識による規制条項の死文化が含まれる:

 ミルストーン原子力発電所(英語版)(コネチカット州)のある職員(George Galatis)は管理者に対して、定期検査を早く終わらせる目的で使用済み核燃料を使用済み燃料プールに速く入れすぎる点と、プール内の使用済み核燃料の数が定格をオーバーしている点を常々警告してきた。管理者は彼を無視したので、彼は直接NRCを訪れた。NRCは最終的にはこの2つの違反行為について知っていたこと、同様の行為が他の多数のプラントでも行なわれていたこと、しかしその事実を無視することを選択したことを認めた。この内部通報者(whistleblower)は解雇されブラックリストに載せられた[15](この事件はタイム誌が1996年3月に取り上げたことで明るみに出ることとなり、NRCは強い批判にさらされることとなった)。」

 
 どうも米国でも、規制当局と電力会社は癒着関係にあったようです。

 しかし、「規制の虜」と批判して議論しているところが日本よりマシかもしれません。日本では「規制の虜」は常識になっているのでないでしょうか?それを真面目に批判する公的な組織はないと思います。

 〔国会事故調がこの「規制の虜」のことを取り上げていましたが、日本の「癒着構造」はあまりにも根深く、国家・自治体ぐるみのような感じがしてなりません。参考:高橋洋一さんの現代ビジネスの記事『天下りによ「規制の虜」にはまったのは東電と原発だけではない』〕
  

 保安院が自然災害(大地震)と原発シビアアクシデントの同時発生について対策「案」を作成したところ、他の関係省庁から事前に話がない、お前ら(みたいな弱小組織)にそんな権限はないと、袋叩き遭ってしまったようです。また地元の自治体からも、地方に責任を押し付け過ぎる、「寝た子を起こす」ことになり住民への今までの説得が無になると、散々な目に遭ったようです。最後には反省文のようなものまで公表せざるを得なくなったとのことです。(『レベル7 東京新聞原発事故取材班著』より)

 これでは、元々ガス抜き組織の「保安院」も、本当に単なるお飾りになってしまっても仕方がないと思います。


 話は変わりますが、米国の州議会は強力なようです。

「バーモント州では、福島第一原子力発電所事故を引き起こした東北地方太平洋沖地震の前日、NRCはバーモントヤンキー原子力発電所(英語版)の運転免許の20年間の期間延長を許可したが、バーモント州の議会は圧倒的多数でこの延長を拒否する議決をした[16]。このプラントでは地下埋設の配管を通して放射性物質が漏れ出ていることが確認されていたが、運用者のEntergy社は宣誓下でそれを否定していた。バーモント州議会天然資源およびエネルギー委員会の Tony Klein 委員長は、2009年の公聴会でNRCにその配管について質問したが、NRCはそれが存在することすら知らなかった[16]。」

 州議会のエネルギー委員会というのは、知識も胆力もある人たちが集まっているのですかね。

 日本の地方自治体は、原子力災害の防護に対して無力・非力過ぎるのではないでしょうか?福島県前知事の佐藤栄佐久さんや新潟県知事の泉田さんなど頑張っている方もいらっしゃいますが…、県議会のエネルギー委員会ってあるんですかね、真面目に研究・勉強しているのでしょうか?



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原発と安全保障(2)、フクシマは米国の安全保障の最大の脅威?

2013-11-08 20:56:35 | 原発と安全保障
福島原発公害は、日本だけの問題ではないようです。福島原発からの放射性物質は多くが海側に流れ、日本にとっては「九死に一生」を得たようですが、その流れは西に西に流れ、米国西海岸まで至っているようです。

 福島原発公害の放射性物質の大量放出・漏出は、いわば「放射能兵器」で攻撃されたのと同じことだと思います。そしてその余波は米国にも及びます

 福島原発公害は日本にとって国家存亡の安全保障上の脅威・危機ですが、米国にとっても現在米国本土を襲う可能性がある最大の安全保障上の脅威だと思います。


 昨年から警告されていますが、事態はますます悪化しているようです。




 セシウム濃度は薄まっても、生物の食物連鎖による濃縮などの懸念があると思います。セシウム以外の核種の影響はどうなるのでしょうか?



 米国は原子力戦略のため放射能の内部被曝の健康被害を隠蔽しているため、どんなに米国で被害が出ても、公式には日本に抗議はできない状況だと思います。

 何か皮肉な感じがします。しかし被害が目に見えるようになれば(使用済み核燃料が漏出して放射能汚染濃度が高まれば)、米国市民は黙っていないと思います。それこそ国が内部被曝の隠蔽を続ければ、市民は銃を取って立ち上がり、内乱のようなことになる可能性もあるかもしれません。
 

 米国も今、こう思っているのではないでしょうか?(私の妄想です)

《いくら内部被曝隠蔽を命じたからと言って、「原子力安全神話」に本当に染まって、規制当局も安全審査や災害対策をまったく考えていなかったとは、本当にクレイジーだ。

 お前らは「安全保障」を本当に考えたことがあるのか?活断層が無数に走り、海溝型地震の巣の狭い国土(なおかつ人口密集地帯)に50基以上も原発を造り、その安全規制や災害対策も無いに等しい、事故が起こったらそのままってことがあるのか?

 お前らは本当に「サル」か?「科学技術立国」などと言っていて、原発の安全規制をまったく考えられなかったのは、要するに合理的精神がまったくなかった、拝金教などの偶像崇拝思想にどっぷり染まっていたということか?

 いい加減にしてくれよ、お前たちが放射能まみれになるは、自業自得だが、俺たちまで巻き込まないでほしい!

 と言っても、漏れてしまえば防ぎようがない。こちらも覚悟(放射能兵器による攻撃と同じ体制)を決めないといけない。しかし、もし俺たちが放射能まみれになったら、ただでは済まないぞ!》

 米国も日本で展開した原子力戦略が裏目に出て、それこそ自業自得になるかもしれません。日米や太平洋沿岸諸国も巻き込んだ「放射能戦争(防護対策)」はこれから始まるようです。各国も最悪の事態になったら、国の安全保障が脅かされます。

 〔11/22追記 米国自身の使用済み核燃料による危機もとんでもないようです。農業情報研究所さんのサイト 『米国原発プールにぎゅう詰めの使用済み核燃料 アメリカ人に福島以上の脅威 米研究機関』を見ると、米国も放射能まみれになって、「この世の最期」になる危険性も十二分にありそうです。〕

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