数理論理教(科学教)の研究

数理論理(科学)はどこから来て、どのような影響を与え、どこに行こうとしているのか、少しでも考えてみたいと思います。人文系

ウイルスとは何か(5)ウイルスの種類 カリシウイルス科 ノロウイルス

2023-07-05 16:30:20 | ウイルス
1.ウイルスの種類
(1)RNAウイルス
(ⅰ)一本鎖RNA
    カリシウイルス
 この科には、ヒトの食虫毒(感染性胃腸)で有名な「ノーウォークウイルス(ノロウイルス)」や猫の風邪の原因である「猫カシリウイルス」などが属しており、宿主は、脊椎動物・爬虫類・両生類などのようです。
 ノンエンベロープウイルス(脂質等の膜で包まれていない)なので、コロナウイルスのようにアルコール消毒はあまり効きません。そのためノロウイルスには加熱と正しい手洗いが有効のようです。
 ノロウイルスはGIからGVの遺伝子群に分かれ、ヒトに感染するのはそのうちGⅠとGⅡタイプですが、さらにGⅠでは14種類(GI/1~GI/14)、GⅡでは21種類(GII/1~GII/21)の遺伝子型があるようです。ゲノムの組み換えにより、抗原性の違うタイプのものを作れるようです。まるで乱数製造装置のようなので、これでは抗体防御も難しいと思います。


「 カリシウイルス科(カリシウイルスか、Family Caliciviridae)とはウイルスの分類におけるピコルナウイルス目に属する一科で、2019年現在、11属13種に分類されている。カリシウイルス科に属するウイルスは直径30 - 38 nmの正二十面体構造のビリオンを形成し、単一のプラス鎖一本鎖RNAをゲノムに持ち、2 - 3種類のORFが存在する。エンベロープを持たないためクロロホルムやエーテルに対する耐性を持つ。酸(pH3-5)によって不活化される。ネガティブ染色による電子顕微鏡観察ではビリオンは「ダビデの星」と呼ばれる特徴的な形態を示す。
 宿主は脊椎動物で、ヒト、ウシ、ブタ、ネコ、イルカ、ニワトリ、爬虫類、両生類などが知られている。代表的な種としては、ヒトなどの感染性胃腸炎の原因となるノーウォークウイルス、ネコの呼吸器疾患を引き起こす猫カリシウイルス、ウサギに出血病を起こす兎出血病ウイルスが挙げられる。」

  ベシウイルス属
  猫カリシウイルス
 猫の一般的な風邪の原因となるウイルスのようです。
 猫の感染症には以下のものがあるようです。

「ネコカリシウイルス(英: feline calicivirus, FCV)は、ネコの感染症「ネコカリシウイルス感染症」の病原体となるカリシウイルス科のウイルス。 
 FCVはネコのかかる代表的な呼吸器感染症の1つであり、初期には高熱やくしゃみ、鼻水やよだれを垂らす、食欲減退などの症状を起こす。症状が長引くと舌や口に潰瘍が出来たり、口内炎が出来るときもある。また潰瘍や口内炎の二次感染として肺炎を起こし、最悪の場合死に至る。
 ウイルスの感染力は強く、感染したネコと直接触れ合ったことによる感染、感染したネコのくしゃみ等による空気感染、感染したネコと人間との接触を介しての感染など多岐にわたる。実験では、乾燥した環境下にウイルスを置いた場合、3~4週間もの間ウイルスが生存していることが確認されている。
 子ネコの場合は、生後3 - 9週間程度までは母ネコから受け継いだ免疫によって守られるが、それ以降、生後10週間以降の子ネコは受け継いだ免疫がなくなってしまうためFCVに感染しやすくなり、症状が重くなることも多い。ただし3歳を過ぎる頃になると、発症しても軽微な症状のみか、感染しても発症しないことが多い。」

  ラゴウイルス属
「ウサギ出血病ウイルス(ウサギしゅっけつびょうウイルス、Rabbit haemorrhagic disease virus:RHDV)とはカリシウイルス科ラゴウイルス属のタイプ種。同義語としてウサギカリシウイルス(rabbit calicivirus:RCV)。ウサギ出血病ウイルスはウサギに高い伝染性を有する疾病であるウサギ出血病を引き起こす重要な病原体である。ウサギ出血病ウイルスはウサギにのみ感染し、ウサギの生息数の管理のためにいくつかの国で使用されたことがある。 」
「兎出血病(うさぎしゅっけつびょう、英: rabbit hemorrhagic disease)とは、兎出血病ウイルス感染を原因とする兎の感染症。
 国際獣疫事務局においてリストB疾病に指定されている。日本では家畜伝染病予防法において届出伝染病に指定されており、対象動物は兎。なお、日本獣医学会の提言で法令上の名称が「兎ウイルス性出血病」から「兎出血病」に変更された。」

 ノロウイルス属 
 食中毒の原因はノロウイルスとレオウイルス科のロタウイルス(2本鎖RNA)が主なもののようです。
「ノロウイルス(英語: Norovirus)は、もっとも一般的な胃腸炎の原因である。感染者の症状は、非血性下痢、嘔吐、胃痛が特徴である。発熱や頭痛も発生する可能性がある。症状は、通常ウイルス曝露後12〜48時間で発症し、回復は通常1〜3日以内である。合併症はまれだが、特に若人、年配者、他の健康上の問題を抱えている人では、脱水症状が起こることがある。ノロウイルス属による集団感染は世界各地の学校や養護施設などで散発的に発生している。「NV」や「NoV」と略される。俗称は「冬の嘔吐虫(Winter vomiting bug)」。
 ウイルスは通常、糞口経路によって伝播し、汚染された食品や水、または人と人との接触による可能性がある。汚染された物体の表面を介したり、感染者の嘔吐物からの空気を介して広がることもある。リスクファクターには、不衛生な食事の準備、密集した場所の共有がある。診断は一般的に症状に基づいて行われる。検査は通常なされないが、発生時に公衆衛生機関によって実施される場合がある。
 予防には、適切な手洗いと、ウイルス汚染された表面の消毒がある。消毒用アルコールはノロウイルスに対して効果的ではない。ノロウイルスへのワクチンや、特別な治療法は存在しない。管理には、十分な水分や静脈内輸液を飲むなどの支持療法である。経口補水液は摂取に好ましい水分であるが、カフェインやアルコールを含まない他の飲み物も役立つ。
 世界では、年間約6億8500万件のノロウイルス発症者と、20万人の死亡をもたらしている。先進国と発展途上国の両方で一般的である。5歳未満の人が最も罹患しやすく、発展途上国ではこの人口グループにおいて約50,000人が死亡している。ノロウイルス感染症は、冬季により多く発生する。ときにアウトブレイクを起こし、それは人口密集地で起こることが多い。米国においては食中毒ケースの約半分がノロウイルスであった。
…ノロウイルス属(ノーウォークウイルス種)はヒトに経口感染して十二指腸から小腸上部で増殖し、伝染性の消化器感染症(感染性胃腸炎)を起こす。
毒素は分泌せずに、十二指腸付近の小腸上皮細胞を脱落させ、特有の症状を発生させる。死に至る重篤な例はまれであるが、苦痛がきわめて大きく、まれに十二指腸潰瘍を併発することもある。特異的な治療法は確立されていない。感染から発病までの潜伏期間は12時間 - 72時間(平均1 - 2日)で、症状が収まった後も便からのウイルスの排出は1 - 3週間程度続き、7週間を超える排出も報告されている。年間を通じて発症するが、11-3月の発症が多く報告される。また、感染しても典型的な食中毒症状を呈さない不顕感染の比率は不明であったが、2015年に新潟医療福祉大学などの研究グループは 1% 程度の不顕感染者がいることを報告している。
 2007年5月に報告された厚生労働省食中毒統計による2006年の食中毒報告患者数は、71%がノロウイルス属(ノーウォークウイルス種)感染症である。

 ノロウイルスは感染すると十二指腸から小腸上部で増殖するようですが、細胞の表面にあるタンパク質CD300lf, CD300ldがレセプターのようです。
「細胞の表面にあるタンパク質CD300lf, CD300ldがマウスノロウイルスレセプターであることを発見しました。 」

 ノロウイルスはゲノム組み換えなどにより、粒子表面のアミノ酸配列が変異するなど、変幻自在でその正体を突き詰めることが難しいようです。ウイルスというのは本当に精巧にできていると思います。
 
「ノーウォークウイルス種は約7.6kbの1本鎖(+)RNAをゲノムとして持っています。その塩基配列の相同性によりGIからGVの遺伝子群に分類されています。このうち,ヒトに感染するのはGI,GIIおよびGIVの3つの遺伝子群のウイルスで,ヒトの感染症や食中毒から検出されるノロウイルスの大半はGIとGIIに属しています。GIIIはウシから検出されたウイルスで,近年ノロウイルス属に含まれるウイルスの中で唯一培養細胞での増殖に成功したマウスノロウイルスはGVに属しています。
 GIおよびGIIの各遺伝子群は,それぞれ少なくても14種類(GI/1~GI/14),21種類(GII/1~GII/21)の遺伝子型に分類されています。異なる遺伝子型は基本的に抗原性が異なります。後述のように,近年全世界的に流行しているノロウイルスは遺伝子型GII/4に属しています。
 ノロウイルスのゲノムには,ORF1(ウイルスの複製に関与する非構造蛋白質をコード),ORF2(構造蛋白質VP1をコード)およびORF3(VP2をコード)の3つの読み取り枠が存在しています。VP1はウイルス粒子を構成する主要な蛋白質で,その粒子表面に位置するP-ドメインのアミノ酸配列は多様性に富み,流行の中で変異を繰り返しています。また,ノロウイルスはORF1とORF2のジャンクション領域で,ゲノムの組み換えを起こします。組み換えを起こしているウイルスはキメラウイルスと呼ばれています。 」

「ノロウイルスはRdRp領域とVP1領域の間でゲノムの組換え(リコンビネーション)を起こすことが知られている。この領域はORF1,2 junctionと呼ばれており、リコンビネーションのホットスポットとして認知されている(4, 9)。ノロウイルスのゲノムリコンビネーションは、ノロウイルスの宿主への適合やウイルス病原性の変化等を理解する上で重要な現象なのだが、ノロウイルスのゲノタイピングを混沌とした状態に陥れている元凶の一つでもある。つまり、ORF1,2 junction上流のRdRp領域を用いたゲノタイピングと、下流のVP1領域を用いたゲノタイピングで異なる結果を与えるリコンビナント株が存在するためである。厳密に言えば、ノロウイルスの場合、分子時計が算出できていないので、リコンビナントが元株なのか、元株がリコンビナントなのか断定できない。つまり、どちらが祖先で、どちらが子孫か分からないのである。
 ノロウイルスは、現在までにVP1領域のゲノタイピングを用いて、36種類以上のタイプが報告されている(7, 13, 14)。やっかいなことに、ノロウイルスは予想以上に多数のリコンビナント株が存在することに加え、新しいタイプを報告した研究者が、独自に命名したゲノタイプ番号を新しいゲノタイプに付けるため、混沌とした状況に陥っている。」

 食パン工場の検品時に、感染していた作業員からノロウイルスが食パンに付いてしまったようです。作業員はビニール手袋やマスクや作業着を着用して、始業前には手などの消毒もしていたとのことです。これだと防ぐのはなかなか難しいと思いました。

 サポウイルス属 
「1977年、日本・北海道札幌市で幼児に集団発生した胃腸炎から、古典的なカリシウイルスとして知られるラゴウイルス(Lagovirus )に似た構造の小型球形ウイルスが確認され、「サッポロウイルス」と名付けられた。」

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