数理論理教(科学教)の研究

数理論理(科学)はどこから来て、どのような影響を与え、どこに行こうとしているのか、少しでも考えてみたいと思います。人文系

ウイルスとは何か(2) ウイルスの構造 エンベロープウイルスとノンエンベロープウイルス

2023-06-16 14:34:34 | ウイルス
1、ウイルスの構造
 ウイルスの構造は、基本的には「自己の遺伝子(DNAかRNA)」と「必要最低限の制御用タンパク質」と「それを覆うカプシド(タンパク質の殻)」からできていているようです。それに加えて、エンベロープ(エンベロープタンパク質+宿主細胞膜の断片)を持つものもいるようです。
「…核酸がタンパク質の殻(カプシド)に包まれた形というのは、あくまで最も単純なウイルスの形であって、…ウイルスにも多様性がある。
 子どもにポリオという病気をもたらす「ポリオウイルス」や、風邪などの原因となる「ライノウイルス」は、核酸がカプシドに包まれた単純な形をしているが、カプシドの周りに、さらに「エンベロープ」と呼ばれる膜のようなもを持ったウイルスもいる。
…エンベロープは、ウイルスが作り出すタンパク質(エンベロープータンパク質)とウイルスが感染していた宿主の細胞から飛び出したときに連れてきた、細胞の「細胞膜」の断片からできている。
 エンベロープをもたないウイルスを総称して「ノンエンベロープウイルス」、エンベロープをもつウイルスを総称して「エンベロープウイルス」という。(『新しいウイルス入門』より)」

 
「ウイルスの基本構造
 ウイルスは他の微生物とは大きく異なり,細胞壁,細胞膜,細胞質,核等の構造を持たない。(例 細菌の構造)
 ウイルスは遺伝子である核酸(DNAかRNA)を中心にして,その周囲を蛋白の殻(カプシッド capsid)で包んだ構造からできている(この構造をヌクレオカプシッドという)。
 ウイルスの種類によっては,ヌクレオカプシッドの外側にさらに脂質と糖タンパクからなる被膜(エンベロープ envelope)が存在する。 
 各部の機能
  1. 核酸
     ウイルスはゲノムとしてDNAかRNAどちらか一方の核酸をもつ
     ウイルスの複製に必要な遺伝情報がゲノムにコードされている。
     タンパク質合成系のないウイルスがrRNAやtRNAをもつことやこれらのRNAをコードする遺伝子を持つことはない
     ウイルスによっては、細胞に感染し、自身のタンパク質を合成する前に、ゲノムの複製が必要となることがある。このようなウイルスでは、複製に関与する酵素をウイルス粒子にパッケージしている。
  2. カプシッド(capsid)
     カプシッド(タンパク質の殻)はゲノムを包み、各種酵素(核酸分解酵素)からゲノムを保護する。
  3. エンベロープ (envelope)
     ウイルス粒子の感受性細胞への付着に関与する

     エンベロープ 内のタンパク質はウイルス自体の産物であるが、脂質は宿主細胞由来であり、エンベロープの脂質は宿主細胞の膜等に類似する。
     エンベロープは脂質二重層からなる膜で、細胞内で作られたヌクレオカプシッドが細胞から出芽し、完全な子ウイルス粒子(感染性を有する完全なウイルス粒子をビリオンと呼ぶ)に成熟し、形成される。
     エンベロープの獲得部位は細胞膜、小胞体膜、ゴルジ体膜、核膜のいずれかで、ウイルスによりことなる。 一般にエンベロープをもつウイルスはアルコールや石鹸など脂質を溶解する消毒薬に対して感受性が高く、逆にエンベロープをもたないウイルスは不活化されにくい。
     経口感染するウイルスは腸管内で胆汁酸に溶解されないためにエンベロープを持たない。(引用終わり」
「ウイルスの基本構造は、粒子の中心にあるウイルス核酸と、それを取り囲むカプシド (英: capsid) と呼ばれるタンパク質の殻から構成された粒子である。ウイルス核酸とカプシドを併せたものをヌクレオカプシド (英: nucleocapsid) と呼ぶ。ウイルスの形状はカプシドの形によって基本的には正20面体型(立方対称型)と螺旋対称型に分けられる。ウイルスによっては、エンベロープ (英: envelope) と呼ばれる膜成分など、ヌクレオカプシド以外の物質を含むものがある。これらの構成成分を含めて、そのウイルスにとって必要な構造を全て備え、宿主に対して感染可能な「完全なウイルス粒子」をビリオンと呼ぶ。 
…カプシド (英: capsid) は、ウイルス核酸を覆っているタンパク質であり、ウイルス粒子が細胞の外にあるときに内部の核酸をさまざまな障害から守る「殻」の役割をしていると考えられている。ウイルスが宿主細胞に侵入した後、カプシドが壊れて(脱殻、だっかく)内部のウイルス核酸が放出され、ウイルスの複製がはじまる。
 カプシドは、同じ構造を持つ小さなタンパク質(カプソマー)が多数組み合わさって構成されている。この方式は、ウイルスの限られた遺伝情報量を有効に活用するために役立っていると考えられている。小さなタンパク質はそれを作るのに必要とする遺伝子配列の長さが短くてすむため、大きなタンパク質を少数組み合わせて作るよりも、このように小さいタンパク質を多数組み合わせる方が効率がよいと考えられている。

…エンベロープ (英: envelope) は、単純ヘルペスウイルスやインフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルスなど一部のウイルス粒子に見られる膜状の構造のこと。これらのウイルスにおいて、エンベロープはウイルス粒子(ビリオン)の最も外側に位置しており、ウイルスの基本構造となるウイルスゲノムおよびカプシドタンパク質を覆っている。エンベロープの有無はウイルスの種類によって決まっており、分離されたウイルスがどの種類のものであるかを鑑別する際の指標の一つである。
 エンベロープは、ウイルスが感染した細胞内で増殖し、そこから細胞外に出る際に細胞膜あるいは核膜などの生体膜を被ったまま出芽することによって獲得されるものである。このため、基本的には宿主細胞の脂質二重膜に由来するものであるが、この他にウイルス遺伝子にコードされている膜タンパク質の一部を細胞膜などに発現した後で膜と一緒にウイルス粒子に取り込み、エンベロープタンパク質としてビリオン表面に発現させている。これらのエンベロープタンパク質には、そのウイルスが宿主細胞に吸着・侵入する際に細胞側が持つレセプターに結合したり、免疫などの生体防御機能を回避したりなど、様々な機能を持つものが知られており、ウイルスの感染に重要な役割を果たしている。
 細胞膜に由来するエンベロープがあるウイルスでは、エンベロープタンパク質が細胞側のレセプターに結合した後、ウイルスのエンベロープと細胞膜とが膜融合を起こすことで、エンベロープ内部に包まれていたウイルスの遺伝子やタンパク質を細胞内に送り込む仕組みのものが多い。」

「このコロナウイルスは、豪奢な糖の衣をまとっている。重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のトレードマークであるスパイクタンパク質の1つをコンピューター・シミュレーションで見たRommie Amaroは、目を見張った。ウイルスの表面から突き出すスパイクタンパク質には、糖鎖がびっしりと巻き付いていたのである。
 カリフォルニア大学サンディエゴ校(米国)の計算生物物理化学者であるAmaroは、「これだけの糖鎖で覆われていたら、ほとんど認識できません」と言う。
 実際、外側のタンパク質を糖鎖で覆い、羊の皮をかぶった狼のように私たちの免疫系の監視の目を欺いているウイルスは多い。」

2.ウイルス(エンベロープ又はノンエンベロープ型)の侵入の方法
 エンベロープを持つウイルスと持たないウイルスでは、宿主の細胞に侵入する方法が異なるようです。
 最近有名になったスパイクタンパク質(エンベロープから出ているトゲトゲ(糖タンパク質))には、細胞の受容体と結合して細胞膜と融合するためのトリガー機能があるようです。
「エンベロープウイルスの場合、エンベロープそのものが宿主の細胞膜と同じ脂質二重膜でできているから、その進入時には、エンベロープと細胞膜が融合し、中身(タンパク質ならびに核酸)だけが細胞内部に侵入する。HIVが、この方式で侵入するものの代表だろう。
 また別のエンベロープウイルスでは、エンベロープが細胞膜と融合せず、エンベロープごと細胞膜によって覆われるようにして侵入する。そうして細胞膜に覆われてあぶくのような状態になったものを「エンドソーム」と言う。インフルエンザウイルスが、この方式で侵入するものの代表だ。
 ノンエンベロープウイルスでは、細胞膜表面にペタペタと吸着したウイルスは、「被覆ピット」と呼ばれる細胞膜の「くぼみ」の中にたまっていき、やがてそのくぼみが細胞質側にくびれることで、ウイルスは細胞内へと侵入する。言ってみれば、細胞によって、「食べられる」のだ。
 細胞のこうした「食べる」行動を、「細胞内取り込み(エンドサイトーシス)」という。(『新しウイルス入門』より)」


 インフルエンザウイルスはエンドソーム内で酸性になり破壊される前に、その酸性状態を利用して脱殻してしまうようです(なんて巧妙な!)。

「インフルエンザウイルスは、糖タンパク質のシアル酸と結合することにより宿主細胞膜表面に吸着し、エンドサイトーシスによりエンドソームに取り込まれます。 その後、エンドソーム内のpHは、徐々に弱酸性まで低下します。
 A型インフルエンザウイルスの表面にはM2タンパク質と呼ばれる 97 アミノ酸残基から成る膜タンパク質が存在します。 このタンパク質は、4量体となり、H+を通過させるプロトンチャネルを形成します。 ウイルス粒子の外側のpHが低下すると、プロトンチャネルのゲートが開き、H+が粒子内に取り込まれます。 これを契機として、ウイルス粒子の脱殻が生じ、ウイルスの遺伝子であるRNAが細胞内に放出されます。
 このようにして、インフルエンザウイルスは、エンドソーム内pHの酸性化を利用することで、自己の遺伝子を宿主細胞内に送り込みます。」 
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