数理論理教(科学教)の研究

数理論理(科学)はどこから来て、どのような影響を与え、どこに行こうとしているのか、少しでも考えてみたいと思います。人文系

ウイルスとは何か(4)ウイルスの種類  ビルガウイルス科 小麦・タバコモザイクウイルス、ジャガイモ モップトップ ウイルス

2023-06-24 10:11:24 | ウイルス
1.ウイルスの種類
(1)RNAウイルス
(ⅰ)一本鎖RNA
  ビルガウイルス
 この科のウイルスは、植物(小麦、ジャガイモ、トマトなど)を宿主にしています。棒状の単一分子のタンパク質でできた殻(螺旋状につながり鞘のようになっている)の中にRNAが入っています。また植物の細胞間を移動するタンパク質なども持っています。
 この科には、世界で初めて発見されたウイルスである、タバコモザイクウイルスが属しています。研究(実験)材料ととして重宝がられているようです。
 感染方法としては、土壌性の菌類や寄生性の原生生物などを媒介にするものもいるようです。それにしても、ウイルスの宿主、媒介生物や形状などは千差万別といいいましょうか、カオスなような多様性があると思います。

「ビルガウイルス科は、プラス鎖 RNA ウイルスのファミリーです。植物は自然宿主として機能します。この科のウイルスはすべて棒状であるため、この科の名前はラテン語のvirga (桿) に由来しています。現在、この科には 59 種があり、7 属に分かれています。 
 ビルガウイルス科のウイルスはエンベロープを持たず、硬い螺旋状の棒状の幾何学的形状を持ち、螺旋対称性を持っています。直径は約 20 ~ 25 nm で、ビリオンには中央の「運河」があります。ゲノムは、 3'-tRNA 様構造を持ち、ポリ A テールを持たない、直鎖状の一本鎖ポジティブセンス RNA です。属に応じて、1 つ、2 つ、または 3 つのセグメントに分かれる場合があります。コートタンパク質は約 19 ~ 24キロダルトンです。 」

 この属のウイルスは小麦などに主に感染するようです。農業の収穫収量を減らし、経済的な損失につながっているようです。
「フロウイルスは、ビルガウイルス科のウイルスの属です。イネ科、冬小麦、小麦、ライコムギ、エンバク、モロコシ、植物が自然宿主となる。この属には 6 つの種があります。この属に関連する病気には以下が含まれます: (SBWMV): 緑色と黄色のモザイク。 
  • 中国小麦モザイクウイルス
  • 日本の土壌伝染性コムギモザイクウイルス
  • オーツ麦ゴールデンストライプウイルス
  • 土壌伝染性穀物モザイクウイルス
  • 土壌伝染性小麦モザイクウイルス
  • ソルガム萎黄斑点ウイルス                                  
 フロウイルス属のウイルスはエンベロープがなく、棒状の幾何学的形状を持ち、螺旋対称性を持っています。直径は約20nm、長さは260〜300nmです。ゲノムは線状でセグメント化されており、長さは約 3.5 ~ 3.6 kb です。」 

「土壌伝染性小麦モザイクウイルスは現在、米国東部および中部の大部分に分布しています。1960年にヨーロッパで初めて報告されて以来、このウイルスはヨーロッパ大陸に急速に広がり、フランス、ドイツ、イタリア、イギリスで蔓延しています。土壌伝染性コムギモザイクウイルスの初期研究によると、ロゼット発育阻害の影響を受けやすい宿主遺伝子型が一般的であり、収量損失が 50% 以上記録されています。

 土壌性の小麦ウイルスはカビ類により伝染されるようです。https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjphytopath/80/100th_Anniversary/80_S143/_pdf/-char/ja
「菌類により媒介される土壌伝染性ウイルスは,ネコブカビ類とツボカビ類によって伝搬されるウイルスに大別され る.両媒介生物はいずれも植物の根に活物寄生し,同じよう な生活環,感染過程を示す.」

 この属のウイルスは小麦・大麦などを宿主としていますが、このウイルスに対して耐性をもっている宿主もいるようです。
 植物と病原体の戦いには凄まじいものがあるようです。

 「植物の主な病原体となっているのは、真核生物の真菌(植物の病原菌は菌糸を形成するものがほとんどであうため糸状菌という用語が使われることが多い)、原核生物の細菌、そしてウイルスの3つです。
…この植物と病原微生物のせめぎ合いは、「分子レベルの軍拡競争」に喩えられ、あたかも植物と病原微生物が互いに権謀術数をめぐらして、いかに相手を出し抜か競っているかのようです。(『植物たちの戦争』から)」
 どこもかしこも「戦争」だらけ? 

「ホルデイウイルス属のウイルスはエンベロープがなく、棒状の形状をしています。直径は約 20 ~ 25 nm、長さは 20 ~ 25 nm です。ゲノムは線状でセグメント化されており、三部分または四部分に分かれており、長さは約 3.3 kb です。 」
「ホルデウイルス属の大麦縞モザイク ウイルス(BSMV)は、主な宿主が大麦と小麦である RNA ウイルス性植物病原体です。BSMV の一般的な症状は、黄色の縞や斑点、モザイク、葉、成長阻害などです。これは主に感染した種子を介して広がりますが、感染した宿主と感染していない宿主の機械的移入によっても広がる可能性があります。BSMV に感染した植物は、気温が高いほど症状が現れやすくなります。耐性宿主と器具の滅菌は、病原体の蔓延を制御する最良の方法です。BSMV は大麦の収量を最大 25% 減少させることが知られていますが、大麦には抵抗性品種があるため、大きな問題ではありません。 」
 
 このウイルスは寄生性の原生生物(真核生物のうち菌界・植物界・動物界にも属さない生物の総称)(ネコブカビ類 )を媒介にして、ジャガイモに感染するようです。
 「ジャガイモ モップトップ ウイルス (PMTV) は、ジャガイモに影響を及ぼすベクターSpongospora subterraneaを介して伝播する植物病原性ウイルスです。PMTV は、ビルガウイルス科およびポモウイルス属( Po tato mo p-top ウイルス)に属しますこのウイルスは 1966 年に英国のカルバートとハリソンによって初めて確認され、現在では米国、カナダ、中国、パキスタン、日本、南米諸国および多くの地域を含む世界の他の多くのジャガイモ栽培地域で報告されています。」


  この科のウイルスは広範囲な植物(アブラナ科・ウリ科・アオイ科・ナス科)に感染するようです。 

「トバモウイルスは、ビルガウイルス科のプラス鎖 RNA ウイルスの属です。タバコ、ジャガイモ、トマト、カボチャなどの多くの植物が自然宿主として機能します。この属に関連する病気には以下が含まれます: 葉の壊死性病変。トバモウイルスという名前は、最初に発見されたウイルス (タバコモザイクウイルス) の宿主と症状に由来しています。
 この属には 4 つの非公式のサブグループがあります。これらは、アブラナ科、ウリ科、アオイ科、およびナス科の植物に感染するトバモウイルスです。これらのグループ間の主な違いは、ゲノム配列とそれぞれの宿主植物の範囲です。この属には 37 種があります。」

「タバコモザイクウイルス(tobacco mosaic virus、TMV)は、タバコモザイク病を引き起こす病原体となる1本鎖+鎖型RNAウイルス。初めて可視化に成功したウイルスで、ウイルスの解明の初期の研究に大きな意義をもたらした。 
…TMVのウイルス粒子は棒状の外観を示し、長さ約300 nm、直径約18 nm。外側のカプシド(コート)は莫大な数の同一タンパク質分子からなり、らせん状(1周あたり16.3タンパク質分子)に結合して棒状構造を形成している。このタンパク質分子は158アミノ酸からなり(アミノ酸配列は最後に示す)、4本のαヘリックスがループ(ウイルス粒子軸の側に突き出る)を介して連結している。
 ウイルス粒子は内部に直径約4 nmの孔をもつ筒状であることが電子顕微鏡により示されている。RNAはその中の半径約6 nmの位置にらせんを作り、カプシドタンパク質により細胞のもつ酵素の攻撃から守られている。カプシドタンパク質1分子にRNAの3ヌクレオチドが結合している。
 RNA上にはカプシドのほか、RNAポリメラーゼ、植物内移動に関与するタンパク質などがコードされている。
 TMVは大量に得ることができ、数本のタバコ植物から簡単な操作でグラム単位のTMVが得られる。また動物には感染しない。これらの利点から、ウイルス粒子の会合・解離などに関する膨大な構造生物学・分子生物学的研究が行われてきた。」 

 どうも植物ウイルスは、傷口や媒介生物(昆虫・菌類等)により感染すると、細胞間を移動タンパク質により移行して、導管である維管束系に侵入して、全身へと広がっていくようです。
 必要最低限の遺伝子からこのようなパフォーマンスができるとは本当に驚異的です。物質・ウイルス・植物・動物(昆虫含む)は一つの複雑怪奇な生態系になって存在していうようです。

「植物ウイルスは植物体表面についた傷や昆虫などの媒介生物により植物細胞に侵入します。するとウイルスは直ちに植物細胞の翻訳機構を利用してウイルスタンパク質を翻訳し、ウイルスゲノムの『複製』を開始します。初期感染細胞で増殖したウイルスは、細胞間移行と呼ばれるステップに移りプラズモデスマータを介して隣の細胞に移行します。そして植物ウイルスは複製と細胞間移行を繰り返すことで周囲の細胞へと拡がったのちに、維管束系へと侵入し植物体全身へと拡大するのです(『長距離移行』)。 植物ウイルスは、『複製』・『細胞間移行』・『長距離移行』のすべてのステップで、自身のゲノムにコードされる限られた数の遺伝子を駆使し、植物細胞の代謝系に依存しながら植物タンパク質を巧妙に利用していると考えられています。 」

「植物ウイルスの伝染
 樹液を通して
 昆虫
 線虫
 ネコブカビ類」

「…CMVなどのモザイク病はアブラムシやハダニ、アザミウマなどの害虫がウイルスを運ぶことで発症するため、あらかじめ害虫の飛来を防ぐ工夫をしましょう。植物は、幼い苗の段階から防虫ネットや不織布(ふしょくふ)、寒冷紗(かんれいしゃ)をかぶせると防虫の効果があります。
 また、光るものを嫌うアブラムシの習性を利用し、植えつけの際にシルバーマルチを使用したり、株元にアルミホイルを敷く方法もおすすめです。そのほか、害虫を寄せつける粘着テープなども販売されているので、環境に合わせて試してみてください。」
 時々見かける「防虫ネット」や「寒冷紗」は、防虫が目的ですが、それが媒介するウイルスを防ぐ目的もあるようです。
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