数理論理教(科学教)の研究

数理論理(科学)はどこから来て、どのような影響を与え、どこに行こうとしているのか、少しでも考えてみたいと思います。人文系

米国の科学研究体制(1)概要、比類なき数理論理王国

2016-06-03 20:38:18 | 数理論理戦争
米国の科学研究体制を少々調べてみることにします。

参考:『2017年度予算教書


 2017年度の予算規模は歳出約4.1兆ドル(435兆円〔106円/ドル、以下換算同じ〕)

「オバマ政権は2016年2月9日、2017年度予算要求を発表した。大統領は研究開発費として、2016年度予算レベルから4%増の1,520億ドルを要求し、その中で基礎研究費は同3%増に相当する9億7,500万ドル増の344億8,500万ドルとなっている。主要分野における具体的予算要求は以下の通り。

・国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH):前年度比2.6%増の331億ドルで、この中にはバイデン副大統領が主導する「がん撲滅ムーンショット(cancer moonshot)」予算6億8,000万ドル、プレシジョン・メディシン・イニシアティブ(Precision Medicine Initiative)予算2億3,000万ドル(前年度比1億ドル増)、「ブレイン(Brain Research through Advancing Innovative Neurotechnologies:BRAIN)」イニシアティブ予算1億9,500万ドル(前年度比4,500万ドル増)などが含まれる。
・食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA):前年度比約1%増の27億4,000万ドル。
・疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC):前年度比3.6%減の69億5,000万ドル。
・環境保護庁(Environmental Protection Agency:EPA):前年度比2.7%増の7億5,420万ドル。
・エネルギー省(Department of Energy)科学局(Office of Science):前年度比4.2%増の56億7,200万ドル。
・米航空宇宙局(National Aeronautics and Space Administration:NASA):前年度比1.3%減の190億2,500万ドルであるが、科学局予算は前年度とほぼ同じ56億100万ドルを要求。
・米国科学財団(National Science Foundation:NSF):前年度比6.7%増の79億6,400万ドル。

一方、教育省(Department of Education)の自由裁量予算として、前年度比2%増に相当する13億ドル増の694億ドルが請求されている他、新たに加えられた強制的拠出(mandatory funding)として1,397億ドルが予算に含まれている。高等教育関連の主要な内容は以下の通り。(引用終わり)」

 国防総省予算の研究開発費は714億ドル(7兆5684億円)とのこと。
 〔日本の防衛省の技術研究本部の予算は1500億円程度のようです。あまりにも少な過ぎると思います。軍事兵器開発と言っても、基礎科学を土台にした先端的科学技術を応用した機器開発ですので、民生用にも転用できると思います。参考:『技本の研究開発の現状と軍事技術の方向性 平成23年5月』「中国は我が国の約4倍、ロシアは約2倍(2007年)。韓国は、我が国を抜いて約1,800億円(2007年)(国防費の約5%)
→ 2012年までに7%、2020年までに、国防費の10%に引き上げる目標を掲げる(「2010~2014 国防科学技術振興政策書(修正本)」2009.12国防部)(引用終わり)」〕
 
 上記の国立衛生研究所(NIT)の予算は331億ドル(約3兆5千億円)です。バイオ関係研究は国防研究に次ぐ重要性があるようです。
〔日本の科学技術振興機構の予算は約1200億円くらい、理化学研究所が約850億円くらい、そもそも文部科学省の総予算が5兆3000億円くらいで、そのうち科学技術予算は約9600億円くらいのようです。科学研究では米国と日本は大人と子供ほどの差がありますね。〕

その他、エネルギー省科学局が56億7200万ドル(6012億円)、NASAが190億2500万ドル(2兆166億円)、米国科学財団が79億6400万ドル(8441億円)となっています。
〔日本の宇宙航空研究開発機構の予算が約1800億円、新エネルギー・産業技術総合開発機構の予算は約1300億円、米国に比べてやはり見劣りしますね。〕

 それに、どうも米国では専門的な科学研究者が、今後有望と判断したアイデア・研究に予算を付けるようです(当たり前ですが)。それに対して日本では、主に法文系の役人や学閥で権威的な学者及び政治家などの利権が絡み、縄張り的な組織に予算が付けられているように思われます?

「…NIH所外研究費の9割弱を占めるもので、NIH以外の大学・研究所・企業に属する研究者がアイデアを出すものです。NIHグラントの一部にはNIH側がアイデアを出し公募するsolicitationというのもありますが、全体の10%程度に過ぎません。したがって、NIHの研究費の大部分は、研究者がアイデアを出して申請し、獲得するものと考えてよいでしょう」
「NIHグラントは、申請・審査の仕組みが日本の科研費と大きく異なっています…
 …申請書は科学評価センター(Center of Scientific Review)に申請書を送ります。申請書は研究の内容に応じて、NIH内の20ある研究所またはセンター(たとえば、ガン研究ならNCI、腎臓の研究ならNIDDKといった具合)に割り当てられ、さらに、適切な審査委員会(スタディセクション)に割り当てられます。どの研究所、どのスタディセクションに割り当てられたかはこの時点で申請者に知らされます。
 審査でもっとも重要な役割を担うのがスタディセクションですが、スタディセクションとは300を超えるspecialismに分かれた審査員からなるグループで委託任命された一般研究者によって構成される集団です。通常ひとつのスタディセクションは16-20名のメンバーで構成されており、スタディセクションのメンバーの任期は4年で、年に3回の会議に呼び出され、旅費とわずかな謝礼(1日$200)が払われます。スタディセクションのメンバーは公開されています(http://www.csr.nih.gov/review/irgdesc.asp で見ることが可能)。また、各スタディセクションには1人の科学評価官(SRA=Scientific Review Administrator)がはりついています。SRAは博士号を持つ生命科学研究者上がりの事務官でスタディセクションの運営から申請者のフォローまでこなしています。」
「日本の研究費申請の場合、申請したあとは、通常、合格か不合格かが通知されるだけですが、NIH のグラントの場合、不合格であった場合にも、どこがダメだったかがきちんと示され、そのコメントを元に書き直して再提出することが可能です。それでもなお、審査に不服がある場合には申し立てをすることもできます。
 …当然のことですが、いい加減な申請書では公平な審査はできないので、アメリカの研究費申請書は質、量ともにものすごいボリュームがあります。実験計画はもちろん、詳しい実験方法、予想される結果、予想される結果がでなかった場合の対処方法に加え、ある程度のプレリミナリーデータ(予備実験の結果)が必要とされます。夢物語を書いたのでは通ることは難しく、現実可能な研究であることを論理的に説明しなければなりません。ページ数は 100 ページを超す場合もあります。(引用終わり)」


「 2017年度優先項目は前年度と同じだが海洋・北極問題が追加された。
① 気候変動
② クリーン・エネルギー
③ 地球観測
④ 先進製造と未来の産業
⑤ 生命科学・生物学・神経科学におけるイノベーション
⑥ 国家・国土安全保障
⑦ 情報技術と高性能計算(HPC)
⑧ 海洋・北極問題 (2017年度新規追加項目)
⑨ 知識に基づく政策形成・管理のための研究開発
(引用終わり)」

 優先項目の中で、「気候変動」「地球観測」「国家・国土安全保障」「海洋・北極問題」などは、『地球環境激変、太陽活動低下→宇宙線増加→気候寒冷化・マントル活発化、まだ始まったばかり?』にともなう「異変」(例えばイエローストンの破局噴火など)を想定した緊急研究体制ではないでしょうか。

 いずれにしても米国は比類なき数理論理王国であり、それにEUが続き、ロシアが国家財政破綻寸前でも健闘し、中国がその経済パワーを基に猛追しているようです。そして日本は、「科学立国」を標榜しているにもかかわらず、あまり利権に縁のない基礎科学研究には興味がないようです。

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