No,15
ヘラルド・ダーフィット、「ミルクスープの聖母子」、15世紀ネーデルランド、フランドル派、ブリュッゲ派。
これもまた美しい。聖母マリアは、永遠の母性のイメージだ。太古のヴィーナスから始まり、絶え間なく描かれる人間の、母に対する永遠のあこがれの象徴である。
処女で母であるというのは、人間の男の、究極のわがままを兼ね備えた存在と言える。可憐なる少女であり、恋人であり、母であるという、あり得ない女性のイメージだ。男はマリアに永遠に憧れを持つ。だが、その思いは届くことはない。決して汚してはいけない女性なのだ。
これはまた、永遠にかなうことのない恋でもある。男は、女に、永遠にかなうことのない恋をしているのだともいえる。
男はこれからも、聖母のイメージを描き続けることだろう。
この画家の描く聖母は、清らかにも美しい。男は、母はこういうものであってほしいと、願っているのだ。