No,7
ベルト・モリゾ、「自画像」、19世紀フランス、印象派。
これは、女性は着飾らずとも美しいことを証明する絵である。夫と子供に恵まれ、仕事にも充実していた。その自信が画家を美しくしている。人間の女性の本来の美しさである。
フリーダは、愛する男から冷たい仕打ちを受けて深く傷ついたがゆえに、人間を超える美を持ってしまった。あまりに悲しい女性である。それに比べれば、19世紀に生きていたモリゾはまだ、幸せだった。
この時代ではまだ、男が誇り高かったからだ。
エドゥアール・マネは印象派の巨頭だった。印象派の画家の中で、彼を超えられたものはいない。19世紀はまだ、こういう男が、生きていくことができたのである。
だが20世紀に入ると、民主主義の広がりと定着の中で、より高い才能を持つものが嫉妬され、潰されるようになった。マネのような男は、成長段階でつぶされるのだ。
フリーダの愛したディエゴ・リベラは、それなりの画家だったが、マネほどの力はない。はっきり言って、表現者としては、フリーダのほうが上だ。
モリゾが輝いていたのは、マネのほうが実力的に上だったからだ。だからモリゾは許されたのである。だが、リベラを超えたフリーダは、許されなかった。男は、才能あるフリーダに嫉妬し、冷たい仕打ちをした。
ゆえに、フリーダの絵は、愛が生きて行けない世界の中で、断末魔の長い叫びのような、軋る命を激しく美しく表現しているのである。
20世紀は、女が男を超えた時代だった。