モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

雪の森の赤いマッチ棒(妻女山里山通信)

2009-12-23 | アウトドア・ネイチャーフォト
にほんブログ村 写真ブログ ネイチャーフォトへ にほんブログ村 写真ブログへ
ブログランキング・にほんブログ村へ

 展望台のある妻女山(赤坂山)から、雪の林道倉科坂線を辿って旧清野村大村の南に長く延びる月夜平に行ってみました。尾根を三つほど曲がると天城山(てしろやま)登山口辺りから延びる長い尾根の途中に着きます。途中に二箇所ほど深い谷があり、いずれも川中島合戦の折りに上杉謙信が大勢の兵を隠したという伝説があり、千人窪(千人ガ窪、千ガ窪)といわれています。千人窪と呼ばれる谷は、土口側にもう一カ所など数カ所あるのですが、それについては次回に書きたいと思います。

 月夜平は、陣場平からこの尾根までの小字名でもあるのですが、地名としての月夜平はこの尾根上の長い台地で物見台ともいいます。以前から探索したかったのですが、夏場は酷い藪でどうにもなりません。冬場を待ってやっと入ることができました。

 葉が落ち草が枯れた森は、思った以上に歩きやすい緩斜面で、古道の跡の窪みも見られました。真っ直ぐ数分歩くと尾根の先端に出ました。そこだけ木がなく石の祠が一列に九基並んでいました。訪れる人も今はないのでしょうか、二つが壊れて屋根が落ちていました。近くには小さな手水鉢もあることから、昔は村人が参拝に訪れていたのでしょう。眼下には清野氏の古峯神社があり、そこへ下りる道もありました。南方を見上げると、遙か上に清野氏の天空の山城、鞍骨城が見えます。

 撮影を済ませ、さて帰ろうと歩き出すと、目の前の切り株に極めて小さな赤い色が見えました。なんだろうと近づくと、朽ちた切り株に灰緑色のコケのようなものが生えていて、太さ1ミリ、長さ1センチほどの細い子柄の先に赤い玉のような子器がついています。子柄は、粉芽に覆われています。種名は思い出せませんでしたが、地衣類だと分かりました。早速マクロ撮影。白い雪と灰色茶褐色の風景の中では際立って目立ちます。
なんだか陸の珊瑚のようです。といっても、意識して見ようとしなければ、見えてこないほど小さなものですが…。

 帰って調べてみると、ハナゴケ科ハナゴケ属のコナアカミゴケ(粉赤実苔:Cladonia macilenta)だと分かりました。コケとついていますが、コケ類ではなく、地衣類です。
 国立科学博物館-地衣類の探究のサイトから引用させていただきますが、「地衣類とは、菌類の仲間で、必ず藻類と共生しているという特長をもっています。菌類は、藻類と共生すると"地衣体" と呼ばれる特殊なからだを作ります。そして、地衣類を構成している菌と藻は、互いに助け合って生活しています。菌は藻に安定した住み家と生活に必要な水分を与えるかわりに、 藻が光合成で作った栄養(炭水化物)を利用して生活します。両者の共生関係は非常に密接で、地衣体の形態、生理機能、分布などは単独の生物と同じように遺伝します。つまり、あたかも独立した生物のように見えるというわけです。」という不思議な生物です。

 日本では約1200種あるそうです。ただ、大気汚染や環境の変化に弱い種類が多く、大都市の周辺からは急速に消滅しているとか。ある意味、環境のバロメーターとなるものです。幻のキノコと言われる岩茸も実は地衣類です。食用にできる地衣類は珍しいので外国の本にも紹介されているそうです。天ぷらが一般的ですが、信州では岩茸のおやきというものもあって、食べたことはないのですが馬鹿旨だそうです。

 幻といいますが、少量ならば登山道脇の岩を注意して見ていると結構あります。でも岩に張り付いている乾燥した岩茸は、とても食べられそうに見えないので採る人もいません。1ミリ成長するのに2、3年もかかるそうですからミネラルなど栄養もたっぷりあるようで、不老不死の仙人のキノコとも言われています。韓国食材店にいくと結構安価で売られています。味は?有難い味がします。

 この地衣類の、菌類の仲間でありながら必ず藻類と共生しているという生態を広義に考えると、地球そのものが共生関係にある大きな生命体だととらえることができるのではないでしょうか。タルコフスキーの『惑星ソラリス』は、決して他の天体ではなく地球そのものだったともいえるのです。

★ネイチャーフォトは、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、地衣類、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、特殊な技法で作るパノラマ写真など。コケ・地衣類2の最後にハナゴケ科ハナゴケ属のコナアカミゴケを掲載しました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする