根底にあるもの。

2007-04-28 09:27:20 | 日記・エッセイ・コラム

犬がいた。「ラッキー」だ。
ラッキーは、小学生の頃飼い始めたシェトランドシープドック。
9年と9ヶ月生きて、ある年の冬に死んでしまった。

そのラッキーが、目の前にいる。

夢だ。そう確信した。
早く触れてあげなければ、と思った。
今触れなければ。目が覚める前にラッキーの頭をなでてやらなければ。
目が覚めてしまったら、次はいつ会えるかわからない。

「ラッキー!おいで!」
ラッキーは近寄ってきて、あの頃よく遊んだように、捕まえようとするとさっと離れる。
楽しそうで、軽やかに跳ねて、こっちまでうれしくなった。
そうだ、こんなに楽しくて幸せな日々を、過ごしていたんだっけ。
「ほら、遊ぶんじゃなくてこっちにおいでよ。ほら、ラッキーってば!」
ほんの少しだけ、やわらかな毛に触れた。
ああ、懐かしい。会いたかったんだよ。
元気そうでよかった。いいんだ、元気なら。
よかった、本当によかった。

いつの間にか目が覚めていた。
慌ただしくでかける支度をしながら、ラッキーと会ったんだ、とぼんやり思った。
あの時、もう少し早く病院に連れて行ってやれたら。
あの頃、もう少したくさん一緒に居られたら。
あの時、もう少し上手にお別れできたら。

ずっとずっと心にわだかまり続けている事。
晴れることはないであろう、永遠の雨。
一匹の犬がそこに座って、ずっとこちらを見つめ続けている。