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monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

藤村の「落梅集」より

2012年03月24日 | 読書日記

 胸より胸に

  其一
  めぐり逢ふ
   君やいくたび

めぐり逢ふ君やいくたび
あぢきなき夜(よ)を日にかへす
吾(わが)命(いのち)暗(やみ)の谷間も
君あれば恋のあけぼの

樹(き)の枝に琴は懸けねど
朝風の来て弾(ひ)くごとく
面影に君はうつりて
吾胸(わがむね)を静かに渡る

雲迷(まよ)ふ身のわづらひも
紅(くれなゑ)の色に微笑み
流れつゝ冷(ひ)ゆる涙も
いと熱き思(おもひ)を宿す

知らざりし道の開(ひら)けて 
大空は今光なり
もろともにしばしたゝずみ
新しき眺めに入らん
 
   其二
  あゝさなり
    君のごとくに
 
あゝさなり君のごとくに
何かまた優しかるべき
帰り来てこがれ侘ぶなり
ねがはくは開けこの戸を

ひとたびは君を見棄てゝ
世に迷ふ羊なりきよ
あぢきなき石を枕に
思ひ知る君が牧場(まきば)を

楽しきはうらぶれ暮し
泉なき砂に伏す時
青草(あをぐさ)の追憶(おもひで)ばかり
悲しき日楽しきはなし
 
悲しきはふたゝび帰り
緑なす野辺を見る時
飄泊(さまほひ)の追憶(おもひで)ばかり
楽しき日悲しきはなし
 
その笛を今は頼まむ
その胸にわれは息(いこ)はむ
君ならで誰か飼(か)ふべき
天地(あめつち)に迷ふ羊を
 
   其三
  思より
    思をたどり

思(おもひ)より思(おもひ)をたどり
樹下(こした)より樹下(こした)をつたひ
独(ひと)りして遅く歩めば
月今夜(こよひ)幽(かす)かに照らす
 
おぼつかな春のかすみに
うち煙(けぶ)る夜の静けさ
仄白(ほのしろ)き空の鏡は
俤(おもかげ)の心地こそすれ

物皆(みな)はさやかならねど
鬼の住む暗(やみ)にもあらず
おのづから光は落ちて
吾(わが)顔に触(ふ)るぞうれしき

其光(そのひかり)こゝに映りて
日は見えず八重の雲路に
其影(そのかげ)はこゝに宿りて
君見えず遠(とほ)の山川
 
思ひやるおぼろおぼろの
天(あま)の戸(と)は雲かあらぬか
草も木も眠(ねぶ)れるなかに
仰ぎ視(み)て涕(なみだ)を流す
 
   其四
  吾恋は
    河辺に生ひて

吾恋は河辺に生ひて
根を浸す柳の樹(き)なり
枝 延(のび)て緑なすまで
生命をぞ君に吸(す)ふなる

北のかた水去り帰り
昼も夜(よ)も南を知らず
あゝわれも君にむかひて
草を藉(し)き思(おもひ)を送る

   其五
  吾胸の
    底のこゝろには

吾(わが)胸の底のこゝには
言ひがたき秘密(ひめごと)住(す)めり
身をあげて活(い)ける牲(にへ)とは
君ならで誰(たれ)かしらまし
 
もしやわれ鳥にありせは
君の住む窓に飛びかひ
羽(は)を振りて昼は終日(ひねもす)
深き音(ね)に鳴かましものを

もしやわれ梭(をさ)にありせば
君が手の白きにひかれ
春の日の長き思(おもひ)を
その糸に織らましものを
 
もしやわれ草にありせば
野辺に萌(も)え君に踏まれて
かつ靡きかつは微笑(ほほゑ)み
その足に触(ふ)れましものを

わがなげき衾(しとね)に溢(あふ)れ
わがうれひ枕を浸(ひた)す
朝鳥(あさとり)に目さめぬるより
はや床(とこ)は濡れてたゞよふ

口唇(くちびる)に言葉ありとも
このこゝろ何か写さん
たゞ熱き胸より胸の
琴にこそ伝ふべきなれ

   其六
  君こそは
    遠音に響く

君きそは遠音(とほね)に響く
入相(いりあひ)の鐘にありけれ
幽(かす)かなる声を辿(たど)りて
われは行く盲目(めしひ)のごとし

君ゆゑにわれは休まず
君ゆゑにわれは仆(たふ)れず
嗚呼われは君に引かれて
暗き世をはずかに捜(さぐ)る

たゞ知るは沈む春日(はるび)の
目にうつる天(そら)のひらめき
なつかしき声するかたに
花 深き夕(ゆふべ)を思ふ

吾(わが)足は傷(きづ)つき痛み
吾(わが)胸は溢(あふ)れ乱れぬ
君なくば人の命に
われのみや独(ひとり)ならまし

あな哀(かな)し恋の暗(やみ)には
君もまた同じ盲目(めしひ)か
手引せよ盲目の身には
盲目こそうれしかりけれ


バレエマンガ「MOON」(曽田正人)完結

2011年11月23日 | 読書日記

 週刊「スピリッツ」(小学館)に連載されていた、異色のバレエマンガ「MOON 昴 ソリチュードスタンディング」(曽田正人、ビッグコミックス)が先月、完結しました。「昴」(同じくビックコミックス)の時から読んでましたが、ぐいぐい惹きつけられるマンガです。

 主人公の天才バレエダンサー・宮本すばるの物語、と書いただけでは全然わからない素晴らしさ・面白さが、このマンガにはあります。
 一つは、天才たちがバレエを踊る辛苦、歓喜を描いて、バレエの真髄を垣間見せてくれること。特に、心理面の掘り下げが独特で、真に迫る描き方です。バレエというダンス芸術をここまで掘り下げたマンガはないと思います。山岸凉子の「テレプシコーラ」だって、槇村さとるの「Do Da Dancin’!」だって、もちろん、バレエの技術的なことや登場人物の心理とかも絡めて描いていますが、この「昴」+「MOON]にはかなわないです。
 マンガというよりも、小説とか物語とかフィクションにだって、こんな濃い内容のものはないでしょう。文字だけで表現するには非常に難しいバレエというテーマを、絵と文字で表現するマンガ。マンガの「伝える力」のすごさをあらためて感じます。

 もう一つは、家族との人間関係を軸にした、すばるの精神的な葛藤とか成長。バレエの描き方にはゾクゾクさせられましたが、このもう一つのテーマには、結構泣かされました。弟の死を背負い苦しみ、母に愛されていないと思い込むすばるに、何度も涙しました。
 好きなお話は、盲目のダンサー・ニコとの信頼関係を築くあたりの話。さらなる高みを目指すシーンが、すごく印象的です。こういう飽くなき探求心が、芸術を(芸術だけじゃないけれど)生み出すのだなあ、と思います。ただの“恋愛”だけじゃないパートナーって、すごくあこがれます。

 絵は、線が粗いし、いわゆる「綺麗な絵」とは全然違う描き方で、最初は「何でこんなふうに描くんだろう」と思ってました。でもこれは、作者さんのコメントかインタビューをかなり前に読んだことがあるのですが、意図的にそういう描き方をしているのだということです。“アート”ではなく、表現したいものを伝えるためのツールとしての“絵”なんだ、とすごく納得したのを覚えています。


寺門琢己「Sな骨盤 Mな骨盤」ほか1冊

2011年11月20日 | 読書日記

 最近、骨盤が開き気味のまま固定してしまっているようなので、寺門琢己の「Sな骨盤 Mな骨盤」(小学館)を参考に、骨盤の可動範囲をふやそうと、ストレッチを継続中。ひざを倒す体操では、左右の差を実感。ゆがみもかなりあるようです。
 高温の湯船に頭からつかる、という処方箋もあって、これは冷えに確実に効きます。お湯にはバスソルトを入れると、さらに効果的。
 寺門さんの本が初めての人には、「骨盤教室」(寺門琢己、幻冬舎)をまず読むことをオススメします。骨盤をしめる体操と、骨盤をひらく体操の2つを、まず基本に押さえておくとよいです。

 もう1冊、「骨盤・背骨のゆがみ直し健康法」(松岡博子、PHP研究所)も参考にしました。こちらは、まず自分のゆがみの傾向を調べます。私の場合は、骨盤が前傾・左下がり・左ねじれ、という診断結果に。それぞれに効くストレッチが図解されているので、1日1回やってみてます。
 この本には、その他に、いろいろな対処療法が載っていて、私は便秘に効くストレッチの利用頻度が高いです。


ついに完結、マンガ「孤高の人」

2011年10月27日 | 読書日記

 「ヤング・ジャンプ」(10/27発売)にて、マンガ「孤高の人」がついに完結しました。
 原作とは違う結末で、予想を裏切られましたが、すんなりと納得できるものでした。

 自己実現と愛する者――両立はできるのか? 文太郎は自己実現を優先させたのだと思っていましたが、彼は両立することをなしえたといえるのでしょう。(ああ、でも、心情的には、原作的ラストの方が、好みです。)

 「孤高の人」のモデル・加藤文太郎は文章を残しており、青空文庫で「単独行」を読むことができます。(サイトは、こちら。
 そのほか、登山系の文章も、青空文庫で公開されています。(小川登喜男、辻村伊助、小島烏水、大下藤次郎、木暮理太郎、板倉勝宣、松濤明、、柴崎芳太郎高頭仁兵衛など)

 ちなみに兵庫県美方郡新温泉町には、加藤文太郎記念図書館があるそうです。