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monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

最古級の平仮名

2012年12月10日 | 日本古典文学

 先月のニュースですが、藤原良相(よしみ)邸宅跡から出土した9世紀後半の土器片に、日本最古級の平仮名が書かれていたとのこと。(毎日jp=毎日新聞、2012/11/18。他)

「ひとにくしとお(も)はれ」
「かつらきへ」~神楽歌(朝倉)の一節か
「なかつせ」

 土器片の文字は、筆跡が違う文字もあり、複数の人物が書いたとみられるとのこと。墨跡は鮮明だが、後世の平仮名とは崩し方が異なり、ほとんどの文字の解読ができなかったという。
 この「解読できなかった」部分を是非、研究してほしいなー。現在判明している変体仮名とは異なる文字(漢字)を使用しているのでしょうか?


「古典対照語い表」の改訂増補版が

2012年11月12日 | 日本古典文学

 1971年刊の「古典対照語い表」(笠間書院)が、来春、改訂増補版「日本古典対照分類語彙表」として刊行予定とのことです。
 文学作品を追加し、エクセルデータ収録CDが付いてくるというので、基礎データとして使いやすそう。出版が楽しみです。
 予価7,500円(税別)とのこと。

 最近思いついた「古典文学における季節表現」の用例収集にも、使えそうです。「分類語彙表」(国立国語研究時編)の分類番号があるから、それを使って抽出するか、「四季」あるいは「季節」などの意味分類の単語を集めて、使われている文学作品に当たることが可能かな。


平忠度を植物にたとえると

2012年09月29日 | 日本古典文学

 「平家花ぞろへ」より、平忠度を植物にたとえている文章を抜き出します。(「室町時代物語集成12」横山重・松本隆信編、角川書店、1984年)
 平忠度は、平忠盛の六男。忠盛の長男である清盛の弟にあたります。忠度は歌人としても名を知られており、「行きくれて木(こ)の下かげを宿とせば花やこよひのあるじならまし」の歌は有名です。

 これこそ、当時、やさしくよしありて聞こゆる人なれ。見様(みざま)もたをやかに気色(けしき)あるさまにて、優(いう)によくおはする。
 難波の浦の秋の暮れ、藻塩のけぶり立ちそひてきりわたれる水際(みぎは)の蘆、うちなびくけしきとや。
  難波潟あしのかりねのひとよにも心にとまるふしはあるらし


平清経を植物にたとえると

2012年09月05日 | 日本古典文学

 「平家花ぞろへ」より、平清経を植物にたとえている文章を抜き出します。(「室町時代物語集成12」横山重・松本隆信編、角川書店、1984年)
 平清経は、清盛の孫で、横笛の名手として知られる人物です。

 この上達(かみたち)のやうに、藤、さくらなどの匂ひおほきかたはなけれど、そこはかとなくあざやかになまめかしく、人のこころめづべきさまぞし給へる。向腹(むかへばら)にて、またことにもてなさるる世のおぼえもことならむかし。
 長月のはじめつかた、虫の音(ね)やうやう鳴きからし、草むらの露、ことさら白く見えて、肌寒き風うち吹きたるほど、尾花の穂に出(い)で、折れ返りなびくけしき、ちぐさの花の中にもなほ目とまるなどぞ申したく侍る。
  うちなびく尾花が末の気色(けしき)にはたれか心をとどめざらまし


撥音無表記

2012年02月13日 | 日本古典文学

 源氏物語・真木柱に「いと苦しかべきこと」という文章が出てきて、見慣れない形だなあ、「べし」の上は何形が付くんだっけ?と思い、調べてみました。
 動詞+「べし」については、辞書にもしっかり記述されてるのですが、形容詞+「べし」はあまり記載されてないみたい。

  形容詞の連体形+べし

 ということは、例えばク活用の「清(キヨ)し」なら「清かるべし」で、シク活用の「いみじ」なら「いみじかるべし」というふうに付くわけですね。
 ならば、上記の真木柱の文章は「いと苦しかるべきこと」となるはずなのに、「いと苦しかべきこと」となっているのは、なぜでしょう?

 源氏物語のデータベースで「かべ」というキーワードで検索して(「壁」は除く)、該当箇所を注釈本で当ってみたところ、以下のことがわかりました。

  「いと苦しかべきこと」
  ↓
  撥音便化「いと苦しかべきこと」
  ↓
  撥音無表記「いと苦しかべきこと」

 古語辞典の「撥音便」の項にも、「あるべし→あんべし・あべし(撥音無表記)」という例が載ってました。「べかめり」とか「なめり」とかなら、よく見る形なのでわかりやすいですが、形容詞でも同様なんですねー。
 以下に、源氏物語の用例を挙げます。

・「いと苦しかべきこと」(源・真木柱) ←「苦しかるべき」
・「こころやすかべかめれ」(源・常夏) ←「こころやすかるべかるめれ」
・「もの近かべきほどかは」(源・野分) ←「もの近かるべき」
・「思へば恨めしかべいことぞかし」(源・胡蝶) ←「恨めしかるべき」。「べき」がイ音便化して「べい」に。
・「深う澄むべき水こそ出(い)で来(き)がたかべい世なれ」(源・行幸) ←「出で来がたかるべき」。「べき」がイ音便化して「べい」に。
・「命こそかなひがたかべいものなめれ」(源・澪標) ←「かなひがたかるべき」。「べき」がイ音便化して「べい」に。
・「甲斐なかべいことなれ」(源・真木柱) ←「甲斐なかるべき」。「べき」がイ音便化して「べい」に。
・「人聞きもうたておぼすまじかべきわざを」(源・夕霧) ←助動詞「まじ」の連体形「まじかる」の撥音便無表記

 ちなみに、「枕草子」「徒然草」や謡曲でも、「かべ」で検索しましたが、上に挙げたような撥音無表記の用例は見つかりませんでした。源氏例にある「かたし(難)」を使用しても、以下のように撥音便化していません。

・「かたかるべきにもあらぬを」(枕)
・「後世を願はむにかたかるべきかは」(徒然)

 擬古文をそれっぽく書くならば、こういうテクも取り入れるとよいのでしょうね。(こうなってくると、「べし」の活用形がどういう形なら直前の形容詞が撥音便化しやすいのか、とかも調べたくなってきます。)
 以下は、「形容詞の撥音無表記+べし」の創作例。

・いみじうをかしかべし
・おもしろかべきこと
・すさまじかべきこと
・いとわろかべし
・悪(ア)しかべきこと
・こころづ きなきこと多かべし
・さる人も多かべい
・興(キョウ)なかべし
・見苦しかべいを
・ねたかべし
・こころ憂(ウ)かべし
・(~こそ)口惜しかべけれ
・いみじかべきこと
・いみじかべいもの
・(~こそ)いみじかべけれ

追記
 たまたま見つけた「形容動詞の撥音便無表記+べし」の用例です。(撥音便無表記って、奥が深いですねー。)

  「いかなべいことぞ」(源・行幸) ←「いかなるべき」
  「かげもみえがたかべいことなど」(蜻蛉日記) ←「みえがたかるべき」
  「よろしかべいさまに」(蜻蛉日記) ←「よろしかるべき」