日本とロシアとの間には「領土問題」があり、日ロ(かつての日ソ)交渉では最大の未解決の
課題となっています。日本ユーラシア協会(以前は日ソ協会の名称)は、創立以来、国とは
別に住民・国民レベルで解決への土壌をつくりだすことで活動をしてきました。北海道根室
などには元北方4島に住んでいた人もおり、領土問題の解決が地域の発展にも必要だと
現地の方々から生の声を聴いたことがあります。プーチン大統領から「引き分け」「ハジメ」
など柔道用語をつかった解決への道、4月末の安倍総理とプーチン大統領との会談と声明
もあり、9月28日東京でユーラシア協会主催でのシンポジウムが開催されました。
根底にある日ロ平和条約の締結のためにも、「双方が受け入れ可能な条件はなにか」が
本年の重要なテーマ。パネリストの一人、東郷和彦さんは30年以上の外務省勤務の内
半分がソ連関係に携わった人、外交の性格上、話せないこともあるでしょうが、興味深
い問題提起。氏は、領土問題など動くときは、国際情勢、それぞれの国内情勢、そして
リーダーの環境や決断が重要なポイントで、これまで①スターリン死後での2島変換が
提案された1955年当時、②ソ連邦が崩壊(ある意味ソ連が一番力が弱いとき)時に
秘密提案(?)がされた91-92年当時、③そして並行協議提案された00-01年
当時(森・プーチン会談)と分析し、過去の可能な機会を生かせなかった経験を踏まえ、
若干の期待もありうる現時点で、外務省当局と首脳の動きを注視されていました。
知日家で日本の大学で教鞭とるクラフツェビッチ氏は、公平性(正義)の立場にたてば、
日本は全クリルを要求する権利をもつ、しかしこれは道徳観念で、ロシアで世論調査した
ら、日本に引き渡す声は出てこない。合法性(法)の立場にたてば、サンフランシスコ条約
により、日本は交渉の権利すら持たないことになる。ロシアでは国内法より国際法が優先す
るので、解決は国際法にしたがい、クリル以外を引き渡す方途を探る、2島に加え、α部分
(国後など)は共同管理は可能でも主権を渡すことは無理と具体的な論究。
協会役員の堀江則雄氏は、島の数にとらわれる議論や交渉の視点でなく、ロシア側は、
戦争の結果領土問題は決まったの立場、日本は4島返還の立場からの脱却が必要。
広くユーラシア大陸の繁栄での視点での接近で、相互信頼、互恵の経済協力、ウイン
・ウイン関係が大切と強調しました。
各位の主張や、文書発言など、詳しくは、機関紙「日本とユーラシア」(10月中旬発行?)
をぜひご一読を。歴史的な事実とロシアの実効支配の現実の長期化の中で、関係住民の
願いに応えて、どう打開するか、真剣なとりくみが求められています。