雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

因果応報を示す ・ 今昔物語 ( 20 - 21 )

2023-11-13 07:59:34 | 今昔物語拾い読み ・ その5

      『 因果応報を示す ・ 今昔物語 ( 20 - 21 ) 』


今は昔、
武蔵国多摩郡の大領(郡の長官)に、大伴赤麿(伝不詳)という者がいた。
ところが、その赤麿は、天平勝宝元年( 749 )という年の十二月十九日に突然死んだ。
次の年の五月七日、その家に黒い斑の子牛が生まれた。その牛の背に碑文(ヒブン・碑に刻まれている文。)があった。それには、「赤麿は寺の物を勝手に借用しながら、未だ返納することなく死んだ。その物を償うために、牛の身に生れたのである」とあった。

そこで、赤麿の一族や同僚たちはこれを見聞きして、恐れおののくこと限りなかった。
そして、「罪を造れば、必ずその報いがある、この事は必ず記録しておくべき事である」と言って、この文章を記録して、同じ年の六月一日に多くの人を集めて、その記録を次々見せた。
集まった人々はこれを見て、もともと懺悔の心のない者は、これを見てはじめて心を改めて善行を行うようになった。もともと因果の道理を知っている者は、ますます心から悪行をやめる決意をした。

まことに、これを思うに、たとえ銅(アカガネ)の湯を飲むことになっても、寺の物を勝手に食べてはならない。これは、極めて罪深い事であることを知ったのだから、決してこういう罪を犯してはならない、
となむ語り伝へたるとや。

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