雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

なまめかしきもの

2014-11-27 11:00:06 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子 第八十四段  なまめかしきもの

なまめかしきもの。
ほそやかにきよげなる君達の、直衣姿。
をかしげなる童女の、表の袴などわざとはあらで、ほころびがちなる汗衫ばかり着て、卯槌・薬玉など長くつけて、高欄のもとなどに、扇さしかくしてゐたる。
          (以下割愛)


優美なもの。
ほっそりとして美しい貴公子の直衣姿。
愛らしげな童女が、上の袴などは堅苦しい格好ではなくて、縫い合わせたところの少ない汗衫(カザミ・上流階級の童女の正装)ぐらいを着て、卯槌、薬玉など組糸を長くして袖脇あたりにつけて、高欄のもとなどで、扇で顔を隠して座っている姿。

薄様の草子。
柳の萌え出ている枝に、青い薄様の紙に書いてある手紙を結びつけたもの。
三重がさねの扇。五重がさねの扇は、あまり厚くなって、手元の所などが不格好です。
ごく新しいというのでもなく、ひどく古びてもいない桧皮葺の家の屋根に、長い菖蒲を行儀よく葺き並べてある様子。

青々とした御簾の下から几帳の帷子の朽木形の紋様がとても鮮やかに見えて、帷子の紐が風に吹かれてなびいているのは、とても情緒があります。
白い組み紐で細いもの。
真新しい帽額(モコウ・簾の上方外側に張った覆いの布)のついた簾の外の高欄のあたりに、とても可愛らしい猫が、赤い首綱に白い札がついて、いかりの緒(意味不詳、遠くへ行かないための重しとも)、組み紐の長いのなどを付けて、それを引きずって歩くのも可愛らしく優美なものです。

五月の節会のあやめの女蔵人。髪に菖蒲のかずらを付け、赤紐ほど派手な色ではないが、領巾(ヒレ・正装の時肩に掛ける装飾の帯状の布)、裙帯(クタイ・正装の時腰に結び垂れる紐)などをまとって、薬玉を親王たち、上達部たちが、立ち並んでいらっしゃるのに差し上げるのは、実に優美なものです。
受け取った親王方が、薬玉をめいめい腰につけて、御礼の拝舞をなさるのも、実にすばらしいものです。
紫の紙を包み文にして花房の長い藤の枝につけたもの。
小忌(オミ・神事に奉仕する男性)の役の若君たちも、とても優美なものです。


「なまめかしきもの」を、優美なものと表現しましたが、単に「優美」とか「優雅」というよりも、少し色っぽいものが加わったものと説明されていることが多いようです。ただ、現在使われている「なまめかしい」よりは、清純な感じのようです。


そこで、少納言さまが「なまめかしきもの」として列記されているものを想像してみるのですが、「ああ、これがなまめかしいというものなのだな」と、なかなか感じ取れないのですよ。

コメント
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