枕草子 第百段 殿上より、梅の
殿上より、梅の、みな散りたる枝を、
「これは、いかが」
といひたるに、ただ、
「早く落ちにけり」
と、いらへたれば、その詩を誦して、殿上人、黒戸にいと多く居たる、主上の御前にきこしめして、
「よろしき歌など詠みて出だしたらむよりは、かかることは、まさりたりかし。よくいらへたる」
と、仰せられき。
殿上の間から、梅の花が散ってしまった枝を持ってきて、
「これは、どのように御覧になりますか」
と言ってよこしたので、私はただ一言、
「早く落ちにけり」(内宴の席で詠まれた漢詩の詩序からの引用)
と応じましたたところ、その詩を吟じて、殿上人が黒戸に大勢座っているのを、天皇におかれてもお耳になさいまして、
「並の歌などを詠んで返すよりは、このような対処の方が、ずっとすぐれているということだ。うまく応答したものだ」
と仰せになられました。
少納言さまご自慢のエピソードなのでしょう。
この短い文章からだけでも、少納言さまが、当時男性の教養とされていた漢文や漢詩の分野にも明るかったことが窺えます。また、殿上にある教養自慢の貴族たちの間で、打てば響く教養の持ち主として評価されていたらしいことも知ることが出来ると思います。
殿上より、梅の、みな散りたる枝を、
「これは、いかが」
といひたるに、ただ、
「早く落ちにけり」
と、いらへたれば、その詩を誦して、殿上人、黒戸にいと多く居たる、主上の御前にきこしめして、
「よろしき歌など詠みて出だしたらむよりは、かかることは、まさりたりかし。よくいらへたる」
と、仰せられき。
殿上の間から、梅の花が散ってしまった枝を持ってきて、
「これは、どのように御覧になりますか」
と言ってよこしたので、私はただ一言、
「早く落ちにけり」(内宴の席で詠まれた漢詩の詩序からの引用)
と応じましたたところ、その詩を吟じて、殿上人が黒戸に大勢座っているのを、天皇におかれてもお耳になさいまして、
「並の歌などを詠んで返すよりは、このような対処の方が、ずっとすぐれているということだ。うまく応答したものだ」
と仰せになられました。
少納言さまご自慢のエピソードなのでしょう。
この短い文章からだけでも、少納言さまが、当時男性の教養とされていた漢文や漢詩の分野にも明るかったことが窺えます。また、殿上にある教養自慢の貴族たちの間で、打てば響く教養の持ち主として評価されていたらしいことも知ることが出来ると思います。