枕草子 第九十三段 口惜しきもの
口惜しきもの。
五節・御仏名に雪ふらで、雨のかきくらし降りたる。
節会などに、さるべき御物忌のあたりたる。
いとなみ、いつしかと待つ事の、障りあり、俄かにとまりぬる。
遊びをもし、見すべき事ありて、呼びにやりたる人の来ぬ、いと口惜し。
男も女も、法師も、宮仕へ所などより、同じやうなる人もろともに、寺へ詣で、物へもいくに、好ましうこぼれ出で、用意よく、いはばけしからず、「あまり見ぐるし」とも見つべくぞあるに、さるべき人の、馬にても車にても、ゆき合ひ見ずなりぬる、いと口惜し。
わびては、「すきずきしき下種などの、人などに語りつべからむをがな」と思ふも、いとけしからず。
残念なもの。
五節や御仏名に雪が降らないで、雨が空を暗くして降っているのは、残念です。
節会などに、しかるべき宮中の御物忌が重なること。(物忌には、各人の生年月日などに基づくものなど様々あるようです。その中で天皇に関わるものは「御物忌」と呼びました)
準備を整え、早くその日になればと待っている行事が、差支えることがあって、急に取りやめになってしまったの。
演奏の予定をし、見せたいものもあって、使いを出して招いた人が来ないのは、非常に残念なものです。
男でも女でも、法師でも、仕えている所などから、同僚と連れだって、寺へ詣で、見物にも行くのに、車から衣裳が風流にこぼれ出て、趣向を凝らして、いうならば度を越して、「見苦し過ぎる」とも見られてしまいそうなほどにしているのに、あいにく、そこそこの人が馬に乗ってでも車ででも、途中で出会うこともなく終わったのは、まったく残念です。
がっかりして情けないので、「せめて、趣味の豊かな下層の者で、人々に吹聴してくれそうな者にでも出会えればいいのに」などと思うのですから、全く正常ではないですよねぇ。
比較的理解しやすい内容だと思います。
最後の部分、人から非難されるほど派手やかに趣向を凝らして行ったのに、評判を立ててくれるような人に出会えなくてがっかりした、といった内容ですが、これも少納言さまの実体験だと思われます。
もし、そうだとすれば、少納言さまもなかなかやるもんですよ、意外に、ね。
口惜しきもの。
五節・御仏名に雪ふらで、雨のかきくらし降りたる。
節会などに、さるべき御物忌のあたりたる。
いとなみ、いつしかと待つ事の、障りあり、俄かにとまりぬる。
遊びをもし、見すべき事ありて、呼びにやりたる人の来ぬ、いと口惜し。
男も女も、法師も、宮仕へ所などより、同じやうなる人もろともに、寺へ詣で、物へもいくに、好ましうこぼれ出で、用意よく、いはばけしからず、「あまり見ぐるし」とも見つべくぞあるに、さるべき人の、馬にても車にても、ゆき合ひ見ずなりぬる、いと口惜し。
わびては、「すきずきしき下種などの、人などに語りつべからむをがな」と思ふも、いとけしからず。
残念なもの。
五節や御仏名に雪が降らないで、雨が空を暗くして降っているのは、残念です。
節会などに、しかるべき宮中の御物忌が重なること。(物忌には、各人の生年月日などに基づくものなど様々あるようです。その中で天皇に関わるものは「御物忌」と呼びました)
準備を整え、早くその日になればと待っている行事が、差支えることがあって、急に取りやめになってしまったの。
演奏の予定をし、見せたいものもあって、使いを出して招いた人が来ないのは、非常に残念なものです。
男でも女でも、法師でも、仕えている所などから、同僚と連れだって、寺へ詣で、見物にも行くのに、車から衣裳が風流にこぼれ出て、趣向を凝らして、いうならば度を越して、「見苦し過ぎる」とも見られてしまいそうなほどにしているのに、あいにく、そこそこの人が馬に乗ってでも車ででも、途中で出会うこともなく終わったのは、まったく残念です。
がっかりして情けないので、「せめて、趣味の豊かな下層の者で、人々に吹聴してくれそうな者にでも出会えればいいのに」などと思うのですから、全く正常ではないですよねぇ。
比較的理解しやすい内容だと思います。
最後の部分、人から非難されるほど派手やかに趣向を凝らして行ったのに、評判を立ててくれるような人に出会えなくてがっかりした、といった内容ですが、これも少納言さまの実体験だと思われます。
もし、そうだとすれば、少納言さまもなかなかやるもんですよ、意外に、ね。