これからの日本には“軍事的膨張”によって自滅するおそれはまずない。他国を侵略し征服する必要も可能性も無いからだ。自滅の危険性は“経済的繁栄の過信”の方から生まれてくる。
敗戦後の日本は角を失った牛、牙を抜かれた豚として、ただ肥りつづけた。幸いに日米安保条約という牧場の柵があり、米軍というカウボーイがいてくれたので、赤い狼の餌食となることをまぬがれた。だが、カウボーイはいずれ故郷に引き揚げ、柵は取りはらわれる。米国には米国の“国益”と世界政策がある。ただ経済的に肥ったということだけで早くも増長し慢心して、ブーブー・モーモーの不平ばかりならべはじめたエコノミック・アニマルどもに愛想つかす時が必ずくる。
無防備の島に肥った食用獣だけが取り残される。その時になって、角を切り牙を抜いたのはマッカーサー占領軍ではないかなどと言っても間に合わぬ。おのれを守るのはおのれだけだ。「自分の国は自分の手で守らなければならなぬ」裸の食用牛は野牛の角をはやすがよい。ふとりすぎの食用豚は先祖にかえって猪の牙をはやさねばならぬ。元来、日本人は牛でも豚でもなかったはずだ。
この日本列島に住みついて、おそらく10万年、世界史に登場して約二千年、多くの貴重な文化を実らせながら、一度も独立を失わず、大東亜戦争の大敗戦によっても滅びることなく、結果としてヨーロッパ人の植民地主義に終止符を打って世界史を転換させた民族である。この伝統の光輝を忘れてはならぬ。
ただ敗戦の傷は深く、日本はいまだに“占領懲罰憲法”下の半国家半独立国にすぎない。前進のためには、この根本を正すことから始めなければならぬ。一日も早く“占領憲法”を廃止し、日本人自身の手による自主憲法を制定し、自衛隊を正規の国軍として独立国の国防体制を整えなければならぬ。それさえできれば、安保問題も沖縄問題も自ずから解決する。独立国日本は友好国と対等の軍事同盟を結び、国連に対する軍事的義務も果たすことが出来る。被占領教育が生んだ鬼っ子と奇形児どものゲバ棒革命ごっこもシャボン玉のように消える。
いろいろと“技術的な困難”はあることだろうが、時間はかかってもかまわぬ。まず根本を正すべきである。
昭和四十四年に書かれた本である。
日本とアメリカの関係を的確に表している。今もこの当時と何処が違うのだろうか。何か進歩したと言えるだろうか。
「日本への警告」より。
http://blog.goo.ne.jp/misky730/e/51ce4b7049ca0b516be3ad1881a00a1d
「日本への警告」林房雄著より Ⅱ
http://blog.goo.ne.jp/misky730/e/40ecd0b79b075920c200ca78adc8d240