あなろぐちっく

mintonのスナップと気まぐれつぶやきブログ。コメントは古い日記でもお気軽に。写真の無断利用は厳禁。

パットマルティーノ まことしやかな話

2006年03月04日 10時19分39秒 | HEXANON35mmF2 1st
今日の通勤の車の中で聴いてたパットマルティーノについて話そう。

パットマルティーノは白人ジャズギタリスト。先日話題に出たタルファーローが陽気で男っぽいとすると、パットマルティーノは陰湿で冷徹ささえ感じさせる精密機械のようなギタリストだ。

この人のレコードを聴いたのは大学時代だったが、通常のギタースタイルとは一線を画するプレイに驚いた。
JAZZはシンコペーションといってリズムの強弱があるものだけれど、彼のプレイスタイルは基本的に16分音符で埋め尽くすようなプレイスタイル。トーンはジムホールに近く、ハイトーンを落とした篭った音質。オクターブ奏法始めテクニックも多彩だ。競演のベースの音も深く重い。

小学校低学年の頃、父に連れられて上野動物園に連れて行ってもらったことがある。
そこに向かう途中の公園で綿菓子を売っていて、面白そうなので立ち止まった。
田舎の人間のぼくは、綿菓子を作るところを見るのが初めてだった。
綿菓子屋さんはぼくの姿を見るとおもむろに鳩をどこからか取り出した。
そしてその鳩を綿菓子の器械に放り込むと一瞬にして鳩は消えた。
そして割り箸を勢いよくまわして、あっという間に綿菓子が出来上がった。
その後何年も、綿菓子は鳩でできていると信じて止まなかった。

パットマルティーノにはぼくの綿菓子事件に似た逸話が付いて回っていて、
「神経が研ぎ澄まされすぎたので、前頭葉の除去手術をしてるよ」とか
「彼はプレイをしているときは恍惚感でヨダレを垂らしてるよ」などというまことしやかな話をよく耳にした。
「そんなばかな・・・」と思いながらも心のどこかで、この人ならそんなこともあるかもしれないと少し信じてた。
大学を出てからも友人たちとパットマルティーノの話になったことがあり、前頭葉を取ってからすっかり廃人になってもうプレイができないらしいという勝手な噂が流れた。
実はパットマルティーノはしばらく低迷していた時期があり、近年また活動を再開したのだけれど、その新作CDやまともに答えているインタビュー記事を読んでびっくりした。
「おいおい、言葉がしゃべれるじゃないか!!」

だいの大人がと笑われるかもしれないが、こんな話を3割くらいは本気で信じていたのだ。

パットマルティーノの演奏の中で、ぼくの好きな曲は「アイ リメンバー クリフォード」。クリフォードブラウンに捧げたベニーゴルソンの名曲を早弾きのパットマルティーノがめいっぱい溜めて、深く静かに情念を閉じ込めるように演奏している。

きょうの写真は会社近くの床屋の壁。春の強めの日差しに写る影が色濃くて美しかった。
コメント (2)
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