わたしは教員や校長をしているとき、中学生が百貨店を「特別な店」と意識していないことを、日常の会話をしていて気がついたことがありました。
わたしの子どもの頃は百貨店へ行くのは、非日常の行為でした。
「高い店」というイメージをもっていて、あまり行かない、親に連れていってもらったこともあまりないということでした。
阪急百貨店前のコンコースの天井にはシャンデリアが光り、床は豪華な大理石、エレベーターではお客さまをもてなすエレベーターガールに会える・・・。
家から1時間ほどかけて家族で阪急百貨店梅田本店へ行き、8階「大食堂」で、「ビフテキ」(当時はステーキのことをこう読んでいました)を食べたり、屋上遊園地で遊んだりしました。
その当時は、阪急百貨店や阪神百貨店へは、服装もいわゆる「よそいき」を着ていきました。
百貨店で買えば間違いがない。実際にその通りでした。
当時は阪急百貨店の包装紙も一定のステータスがあり、人への贈り物もその包装紙で包んで渡すことには、「特別な価値」をもっていたように思います。
百貨店の包装紙だと、「箔(はく)がつく」というか、うちの家では百貨店の包装紙はきれいにたたんで保管しておき、いざというときに活躍しました。
また、服を買う時には販売員がプロの目で、自分に一番似合うものを選んでくれました。
それが百貨店の流儀であり、値打ちだったのです。
そんな時代は遠い昔の話になり、百貨店へ行くことに価値を見出す人はどれほどいるでしょうか。それが今の時代です。
市場や商店にかわり、スーパーマーケットが幅をきかせ、その後はコンビニが重宝がられ、今はインターネット通販で何で買える時代になりました。
それとともに、とくに今の若い世代の間では、百貨店の地位は低下しています。
お歳暮・お中元セールにしても、客層に若い人は少なく、年配の人や高齢者が多いのです。
家族連れで買い物にいくにしても、いまは映画館のある大型ショッピングモールへ出かけることが多いです。
ほしいものはスマホで探し、注文すればすぐに届けてくれます。極論すれぼ店舗はいらないのです。
ところが、百貨店はリアルの店舗へ人を集めて
高い付加価値を提供するというやり方で長年繁栄してきましたが、もうそろそろ限界にきているのではないでしょうか。
若い世代に打って出る販売形態や若い世代が行きたくなる百貨店へ変革していくのは今であると思います。