ミーロの日記

日々の出来事をつれづれなるままに書き綴っています。

父の好きな話は・・・

2014-05-12 16:53:12 | 介護
高齢者住宅に入っている父に会いに行って来た。

部屋のドア横に付いているチャイムを押しても返事が無い。

これはいつものこと。

きっとまた寝ているのだろう・・・そう思いながらそお~っとドアを開けて中に入ると、やっぱり父はベッドに入って寝ていた。

「お父さん、来たよ」と声をかけるとパチリと目を開けた。

そもそも真剣に眠っているわけではないので、声をかけるとすぐに目を覚ます。

父曰く「部屋にいても何もすることがないから寝ている」そうだ。

「昼間はなるべく起きていたほうがいいよ。すこし歩くとかね」と話したが、父には「馬耳東風」・・・いや「馬の耳に念仏」と言うんだっけ?

とにかく自分がやりたくないことは、絶対にやらないので、どう説得しようが無駄なのだ。

無駄なことだとは分かっているが、父の顔を見るとついつい「起きて」「運動して」「甘いものはほどほどに」「出された食事はちゃんと食べなさいよ」など、父にとっては聞きたくないことを言ってしまう。

それにしても、最近の父はとても元気になった。

顔色も良く、つやつやしている。

毎日栄養バランスの取れた食事を食べて、お風呂に入ってヘルパーさんに綺麗に洗ってもらっているからだと思う。

ひとり暮らしの時は、食べる時間もばらばらだったし、好きなものばかりしか食べていなかったし、お風呂に関しては「面倒くさい」と言って何日も入っていなかった。

だから身体も頭も衰弱していたのだろう。

それに比べれば、今は家族としてはとても安心できるし、父にとっても良いことだったと思っている。

「ここは天国だ。至れり尽くせりで、本当にありがたい」

そう言って職員さんたちに感謝していた父だったが、元気になるにつれて、また至れり尽くせりの生活に慣れるにつれ、様子が変わってきてしまった。

父は6人兄弟の末っ子で生まれ、家が貧しかったため高校を卒業するとすぐに公務員になった。

しかし、どうしても大学へ行きたかった父は、昼間は公務員として働き、もらったお金で夜間の大学へ進んだそうだ。

そしてその頑張りもあって、公務員時代はそこそこの地位まで上った。

その後、民間会社に天下りをする。

今は天下りなんて時代ではないかもしれないが、昔は何社もの中から選ぶほど就職先があったそうだ。

いつも周囲から頭を下げられ、父は徐々に「自分は偉い」と勘違いをするようになった。

もちろん父のおかげで、私たちは食べさせてもらい学校にも行かせてもらったわけなので、私たちきょうだい一同、父にはとても感謝している。

・・・が、父の「大好きな」地位と名誉の話を延々と聞かされるのは嫌だった。

きょうだいはもちろん、母まで父のその話が始まると渋い顔をしていたことを覚えている。

そしてまた最近、父が元気になってきてからは以前にもまして、「地位と名誉の話」が父の口から延々と語られるようになった。

こんなにおしゃべりするのは元気になった証拠かも。

口数が少なくなって弱った父でいられるよりいい。

そう思って、話を聞くのは上の空で適当にうんうんと相槌を打ちながら、父が満足するまで話をさせてあげていたのだが、昨日は「うん?ちょっと待ってよ」という気になる話が聞こえてきた。

父が言う。

「私はこの施設で最高金額のお金を支払っているのだから、ちゃんと世話をしてもらうのは当たり前だと、ヘルパーに言ったんだ」

「ええーっ、お父さん、そんなこと言ったの!?それは違うよ、ここの家賃はみんな一緒なの!

だから、別にお父さんがたくさんお金を払っているとか、そういうことは無いんだよ」

すると父は「そうか、てっきり自分が一番高い家賃のところに入っているのかと思っていた」と言う。

「そんなことばかり言っていたら、何言ってんだ、このじじぃは・・って思われるよ」

父の話を聞くと、どうも部屋に来る職員さんたちに向かって、自分の過去の栄光の話を繰り返し繰り返し聞かせているらしい。

職員さんたちは父が認知症だと分かっているので、「そーですか、すごいですねー」と父をおだてて聞いてくれるようだが、おだてられると父は嬉しくなって、また話に力が入って同じような話を繰り返す。

本当に父の面倒を見てくださっている職員さんたちには、申し訳なさで一杯になるのと同時に、娘の私の方が恥ずかしさで穴が在ったら入りたくなる。

父がいまだに地位と名誉に執着してこだわるように、人間は年を取るとますます執着が強くなる人が多いと老人と接するヘルパーの仕事をしていると感じる。

私は年をとって何に執着を持つのだろうか?

長女チェリーかな?

障害のあるチェリーのことは、やはり最後まで心配だ。

あとはなんだろう。。。どちらにしろ何物にもとらわれず、花が散って葉が散って、そして幹が枯れて最期は土に帰るように静かに枯れて生きたいと思う。

父の事は周囲にはご迷惑をかけているが、元気になったのでよしとしよう。








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