めずらしく高齢者住宅にいるお姑さんから電話がきた。
お姑さんから電話がくると、まず間違わずにウチへ電話がかけられたことに驚く。
そして、(認知症は)まだ大丈夫だと安心する。
前回、電話があった時は、「職員さんから高齢者住宅を出るように言われているけど、どうしよう」という電話だったが、今回は「眠れないんだけど、どうしよう」という電話だった。
「眠れないって、布団に入ってどれくらい眠れないんですか?」と聞くと、「ずっと朝まで。職員さんが睡眠薬をくれないから眠れないんだわ。睡眠薬を出すように言ってちょうだい」とのことだった。
そして「眠れない、どうしよう」と、何度もお姑さんは言った。
お姑さんの声は元気で、とても寝不足の人のようには思えず、朝まで一睡もできないと言うが、絶対にどこかで寝ているはずだと思った。
しかし、お姑さんからの「眠れない」という電話は、それから数日間続いた。
歳をとると若い頃のようにすぐに眠りにつくのが難しくなるし、まして日中、それほど身体を動かしていないとなれば眠れないこともあるだろう。
私も、たまに眠れないことがある。
昔は「どうしよう、早く寝ないと、寝不足で明日に差し障る~」と思って布団の中で悶々としていたが、今は「眠れなければ、無理に眠らなくてもいいか」と思うようになったら、あっさりと眠れるようになった。
要は、どうしても眠らなければ・・・と思わないことなのかもしれない。
ところで、お姑さんは睡眠薬を飲んでいないから眠れないと言う。
実際は、お姑さんが飲んでいないと思い込んでいるだけで、毎日職員さんが持って来て飲んでいたのだが、何度そう言っても納得しない。
そこで、往診の時に主治医の先生から「ちゃんとお薬を出していますよ」と説明してもらうことにした。
すると、あら不思議!眠れるようになったではありませんか!
あれほど「眠れない」と言っていたお姑さんからの電話がぴたりと来なくなった。
これぞ睡眠薬の威力・・・いや、主治医の威力は絶大だった。
お姑さん、医師の言うことなら間違いないと思ったのだろう。
めでたし、めでたし。
ところでお姑さんのように、本当はどこかで眠っているにも関わらず、自分では眠れていないと思うことを不眠ノイローゼというらしい。
実は、不眠症のほとんどは、この不眠ノイローゼの可能性が高いとか。
眠れないことに神経質になり過ぎて、さらに眠れなくなってしまう悪循環に陥るそうだ。
眠らなければいけないと思えば思うほど、交感神経が高ぶってますます眠れなくなるのが、不眠ノイローゼだそうだ。
お姑さんのように信頼する第三者からの助言で眠れるようになることもあるが、「眠れないなら眠らなくてもいいや」と割り切ってしまうと、意外と眠れたりするものだと思う。
でも、そうじゃない場合、布団の中で行う(別に布団の中じゃなくてもいいが)簡単な体操がある。
まず、おへその真裏に枕を置き、仰向けに大の字でねる。
次に思い切り腰をあげ、息を大きく吐きながら腰をストンと落とすこと20回。これだけ・・・
こうすると、頭部に集まっていた血液が腹部に集中して、ぐっすりと眠れるようになる・・・らしい。
実際に私も寝る前に何度か試してみたのだが、たしかにすぐに深い睡眠に入ることができた。
眠れずに悶々としている方、どうぞお試しください。
信じるか信じないか(効くか効かないか)は、あなた次第ですが・・・