スペインのピソを借りているみたいだけど、眠っているとへんなコツコツというかたい音がして目覚めた。部屋は真っ暗だった。電気をつけようと、まずスマホの電源を入れて懐中電灯代わりに足元を照らしてドアのほうへ歩いていくけど、なぜか直径数十センチほどの水たまりが床にいくつもあって、天井を照らすと水滴があちこちで垂れ下がっていた。
よくわからないまま、部屋のそとに出ようとするけど、最後のドアが開かない。尿意があってトイレに行こうとするけどどこがトイレだったか思い出せない。あちこちのドアを開けて、やっと見つけたトイレも真っ暗で、水もでなかった。
ぼくは我慢して友人のFに電話しようとするけど、彼の電話番号がスマホから消えていた。部屋を放浪して、なんとかせねばと考えていると、ろうかの先にドアがあって、そこを出ると屋上みたいなところに出て、同じ建物のほかの若者たちがざわざわといくつかのグループになって話しをしていた。ぼくはスペイン語でいつまで停電なんだ?天井から雨漏りしているので上の階の人と話したいと言うが、彼らはほぼ無反応だった。
でも、あきらめかけていると、彼らは大丈夫大丈夫と言いながらぼくの部屋に入ってきて、あちこちを覗いて黙って出て行った。状況をわかってくれたんだと少し安心したけど、特に対応処置してくれるふうはなにもなかったので困惑した。スペインだって停電は珍しいだろって内心怒ったけど、彼らの無表情に気落ちして、無言で送り出すしかなかった。ぼくはベッドに腰かけ、なぜにベッドのところには水漏れがしてないんだと変に思いながら、さっきのスペイン人たちの顔がのっぺらぼうだったことに改めて気づき、無力感が押し寄せてきて、慌てる気持ちや怒りや対策立てなきゃって気持ちが消えていくのを感じた。
もうすぐ朝だ。朝までもう少し眠るかと布団に入った。
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