今ではこういうアホなことをやる劇団も、貸してくれる喫茶店もなくなってしまっただろうから、あまり書いても参考にならないかもしれないが、一つの記録としてそのことにも触れておこう。
11-01
喫茶店
喫茶店でやるのはなかなか大変だ。
○何時から貸してもらえるのか
一番きびしかったのが夕方5時からというもの。開場までに、1時間半しかない。この短時間内で、中の椅子を全部ワゴン車に載せて、照明を吊り、暗幕を張り、音響をセットして、メイキャップをして、本番となる。
たいがい15分遅れぐらいとなってしまったものだ。
喫茶店を1日借りると、最低では3~4万円払わなければならないが、このぐらいの時間だと当時7千円~1万円で借りられた。
○照明は吊れるのか。電源はあるのか
照明は天井のボードにヒートンで固定した。これが許されないときには、スタンドを用意するしかない。
○控え室は取れるのか
役者が隠れる場所がなければしょうがない。なければ暗幕や衝立てで袖を作る。
○出入口の開閉で外の明かりが入ってこないのか
案外これを忘れることがある。客が出入りするたびに外からの明かりが舞台に入ってくるのではやりずらくてしょうがない。
喫茶店は演劇用に作られているわけではないので、とてもやりづらいのだが、どことなく魅力があって私は好きだ。1~2人の小さい芝居ならば今でも試みていいのではあるまいか。とにかく、舞台を広く使おうとすると、内部の椅子やテーブルをどこかに運ばなくてはならない。この作業が実は大変なのだ。これさえクリヤーしてしまえば、ドリンクを楽しみながらゆったりと芝居を楽しむことが出来る。[カサブランカ]や[グッバイガール]などの[まるで映画のように]というシリーズでは、夜7時半という遅い時間に開演して、仕事帰りの人もゆっくりと芝居を楽しんでもらおうという企画だったが、ちょっと時代が早すぎたようだ。
11-02
教室/公民館
教室でも公民館でも暗くならない会場で昼間公演しなければならないことほどつらいものはない。常磐大学の大学祭に招待された時に[三月劇場]が使った教室がそういう3面ガラス張りの会場だった。暗幕を貼るためのカーテンレールもなく、床、壁、天井とも傷を付けることは一切まかりならんというお達しだったので、頭を抱えてしまった。
暗幕を貼れない会場。あるいは貼れても下から光の洩れてくる会場はビニールマルチを貼る。ビニールマルチはマイホームセンターで売っている農業用の黒いビニールのこと。1本3000円ぐらいで売っているので、これを2枚重ねで貼ると、ほとんど太陽光線を通さない。軽量なのでセロテープによる固定でも上演時間内に落ちてくることはない。
照明は会場のなかにパイプを立てて、もうひとつ小さな箱を作って、それに固定した。また、その箱の3面に暗幕を張り、背景とした。
図11-1 教室での会場設営の例
11-03
テント
[月虹舎]といえば何と言っても千波湖に翻るテントだが、実はあのテントは芝居用の特注品である。普通のアマチュアではもう少し違ったテントを組み立てることが多いようだ。たとえば、最近、静岡の劇団が駿府公園のなかに張ったテント劇場はイントレを組み合わせたもので、10人がかりで骨組みを作るのに丸一日かかり、幕を張るのに丸一日かかり、装置で三日、照明で二日、とほぼ一週間丸潰れとなってしまった。
図11-2 テント構造図
[月虹舎]のテントは直径約10mなので、静岡の劇団の方が倍以上大きい構造になっている。照明も吊りやすいし、舞台もかなり広く使える。天井も高いので広々と見える。
しかし、こういう機動力のない劇場をテント劇場と呼ぶのはふさわしいのだろうか。単なる巨大仮設劇場のような気がする。
[月虹舎]のテントの場合、テントを張る作業は次のよう手順で進めていく。
○丸く広げる
○4点ぐらいに足をつけ、(この足が多いとみばはよくできるが、建てるのが大変)
○突撃隊がテントのなかに入る
○真ん中の脚を立てるのと同時に4本の脚を立て、ロープでひっぱり仮固定する。
○足を付け加えながらロープを調整して形を整える
以上が一番人数のいらない、[月虹舎]のテントの建て方である。
自分たちではやったことがないが、イントレを使う方法がある。回りの枠をイントレで組みたて、屋根部分はイントレ間にパイプを渡して、その上に屋根枠を組んでやるもの。手慣れていれば2~3人で一日で組み上がるうえ、照明も吊り込みやすいだろう。現物を私は観ていないが、筑波で安部田保彦がこの方法でテントを張っている。
イントレは角でテントは丸なのでどう処理したのかは不明だが、ロープを引っ張る必要がないことと、中央に邪魔な支柱がないというメリットがある。
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