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ロンドンから徒然に

“Power” トゥ・ザ・ピープル

2008-07-04 | 日常
 ピンク・フロイドのファンなら誰もが知っている有名なアルバム・ジャケットがあります。巨大な4本煙突から出る煙が黒い雨雲となって空を覆い、そこにピンクの豚が飛んでいるのです。『アニマルズ』というタイトルのこのアルバム、実際に巨大な豚の風船を飛ばして撮影が試みられました。
 この4本煙突の主がバタシー発電所Battersea Power Stationなのです。ついでに言うならビートルズの映画『ヘルプ!』にもほんのちょっと出てきますので、探してみて下さい。

 もう随分以前から取り壊しの話が出ていて、毎年毎年、今見ておいた方がいいぞ、もう無くなるんだからと言われていました。
 そんなこともあってか、この場所は僕にとってすごく特別な空間で、何だか本当に異次元に迷い込んだような不思議な感覚にさせられます。あの巨大な煙突は角度によって1本になったり、4本になったり、建物の形もまるで違ったものに見えたりします。
 と言っても、この建物の周りには高い塀が張り巡らされていて、ゲートも厳重に見張られているので、近づくことは許されず、遠くから眺めるしかなかったのです。

 

 ところがずっと放置されてきた再建計画がいよいよ実現の運びになったらしく、25年ぶりに4日間だけ一般の人が中を見ることができるようになりました。
 すぐ近くのように見えながらなかなか近づいてこないゲートを入ると、特設の事務所でアンケートと誓約書を書かされます。さていよいよです。ドキドキしながら発電所に近づいていきます。
 外から見てもその荒廃ぶりは分かっていましたが、近くに寄ると本当に恐ろしいくらいです。今回はボイラー・ハウスやタービン・ホールだった場所まで覗くことができましたが、その傍に置いてある完成予想図とのあまりのギャップに想像が不可能なくらいです。
 というより、ここまで近代的なショッピング・センターにしてしまっていいのかな、というくらい極端な変わりようなので、個人的にはちょっと残念な気もしました。以前ちょっと話があったような美術館への転身とかであれば、上手くアート性を残して雰囲気を保つことができるのかもしれませんが、おそらくこの幻想的な空間はもう消えてしまうのでしょう。

 

 そんな思いを抱いた途端に、真っ青と真っ白だった空がいきなり重く暗くなってきて大粒の雨と風になりました。幻想パワー満開です。びしょ濡れになりながら表に回ったら、今度は途端に雨も風も止んで、また元の青と白の空です。本当に不思議な空間です。
 もう今の姿を見られるのもあまり長くなくなったのは確かなようです。またひとつロンドン名物がなくなるかと思うとちょっと寂しいですが、同じく発電所を再建して出来たテート・モダンが今や世界一の入場者を誇っているように、こちらの発電所も皆から愛されるようになることを祈っています。

 

(タイトルはもちろんジョン・レノンの名曲を捩ったものですが、一般公開を紹介するこちらの新聞記事のタイトルに使われていたので、拝借しました。なかなか面白いと思いません?)

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