ここ数年、コンピュータ業界では、「クラウド・コンピューティング」と言う言葉がキーワードとして使用されることが多い。クラウドとは雲のことである。今後のコンピュータシステムは、データーもソフトも向こう側(サーバー)に置き、こちら側(クライエン)には、最小のデータとソフトしか置かないシステムが主流となる。俗にthin client system(薄いクライアントシステム)と呼ばれるものである。中部地区でも、市町村単位で行政が導入するケースが増えてきた。昨年一年間そのthin client を使用する機会があったので、以下若干の評価記事を記す。
1学期は、既存の校内ネットワークが使用できたが、夏休みに教育委員会にサーバーが導入され、学校データが一元化された。
それに伴い、ソフトもサーバーに蓄えられ、先生用PCには、最小のソフトが導入されrた。
先生側では、マイクロソフトのワードとエクセルが標準で使用できた。また教育現場で使用頻度の高い、一太郎2010等が各学校に10本導入され、管理職以下、主任クラスのパソコンにインストールされた。その他のパソコンには一太郎ビューワーがインストールされた。
一昨年、行政サイドが、本庁および出先にシン・クライアントシステムを導入したことに始まる。一年間の使用実績を踏まえ、教育委員会でも同様のシステムを教育現場に導入することにした。
これは、個人情報保護の目的で、データのセキュリティを確保することが主目的であった。行政での運用を検証し、教育委員会主導で学校の新たなコンピューターシステムが構築、導入された。
変更点(何が変わったか。)
1.学校情報データを教育委員会のサーバーで一元管理。
(教員がUSBメモリー等に記録した学校情報データが紛失、盗難する事故が多いことに対する防衛策。)
2.ソフトを先生側のPCに勝手にインストールできなくなった。
3.セキュリティー機能が強化され、ブログ等は閲覧できなくなった。
4.昨年度まで、授業で提示していた教材(先生用PCで作成した教材)が使用できなくなった。
(例えば、数学での使用頻度の高いGRAPESの教材が提示できない。そもそも、先生用PCにGRAPESをインストールが出来ない。)
授業用教材としてよく閲覧していたサイトはほとんど全て閲覧不可とされ、授業用の教材が作成できないばかりか、それを提示するソフトすらインストールできないことが頻繁に起こった。
不用意で安直なフィルターをかけられたのが主な原因であった。
また、各校独自に作成していた外字ファイルが使用できなくなり、外字も一括管理する旨の通達が当初なされたが、途中であっさりと各学校ごとに外字を管理することとなった。
TOP DOWN で導入されたシステムであり、過去の資産(教材)がほとんど使用できなくなるという、使い勝手の悪いシステムであったが、徐々に改良され、日常の業務(授業以外)には支障はかなりなくなった。
ただし、一般のメーラー(Gメール等)は使えなく、付属のメールシステムしか使えない不便なものであった。
また、USBメモリー。SDカードともに利用できなく、サーバーからUSBメモリー等に教材データをコピーするには申請用紙に必要事項を記載した上で、限られた(2台)のPCでのみコピーが可能であった。
行政サービスと、学校教育とは根本的に業務内容が異なるのに、コンピュータシステムだけは同様のものを使用するところに、問題点は集約される。
一年間で、使用する機会はなくなったが、現任校のシステムがとても快適なシステムであるので、昨年度のシステムが如何に使いづらいものであったかが今更ながら良くわかる。
まだまだ問題点はあるが、これくらいにしておこう。