これ!どう思います?

マスコミがあまり報道しない様な問題を、私なりに考えてみます。

米中貿易戦争の本質 (その2)

2021-04-17 11:39:49 | 国際問題
【はじめに】
 21世紀になって第4次産業革命が始まったと言われています。 一方、中国の経済が飛躍的に発展し、軍備の近代化を進め、露骨に覇権主義を進め出したので、日本を含む欧米諸国にとって中国が脅威になって来ました。

 トランプ氏は、「中国をこのまま放置しては、中国が第4次産業革命の勝者になってしまい、アメリカはジリ貧になる」と気付き、「取り敢えず、ハーウェイをやり玉にして中国を牽制してやろう」と米中貿易戦争を始めた様に私には見えました。

 オバマ政権で副大統領を務めたバイデン氏が大統領になり、「貿易戦争の手を緩めるのでは?」と予想した方がいましたが、(トランプ氏が目をつぶっていた)ウイグルやチベットの人権弾圧を問題視して、より強力な攻撃をしようとしている様に見受けられます。 その考え方の根拠は、最近(4月12日)にアメリカがサムソン電子、TSMCなど十数社を招集した半導体やインフラに関する会議です。

【安全保障とは?!】
 今回の新型コロナの問題で「安全保障」と言う言葉を、もっと広い意味で使用する必要が有る事を日本人は学んだと思います。 日本では今まで、 「安全保障」を他国からの攻撃/侵略に備える視点でのみ考えていた様に私には思えます。 安全保障と危機管理の点では日本は、トンデモナイ後進国だった事を痛感させられました。

 国民の生命と財産を守る事は、国家の最大の使命ですが、生命と財産を侵害するのは敵国だけでは無かったのです。 自然災害、天候不順や新型コロナウイルスも「安全保障」の範疇で検討/対策すべきなのだと学びました。 原油やレアーメタルなどの地下資源は「安全保障」の観点から、日本は備蓄しています。 転んでもただは起きない中国は、マスクやワクチンを外交の武器として活用して、成功している様に見えます。

 日本人は毎年・花粉症に悩まされ、マスクが必要な人が多いですが、マスクを殆ど輸入していた事は知らされていませんでした。 中国が国際ルールに違反して、マスクを日本に輸出する事を禁止したために、大騒ぎになって、アベノマスク騒動が起こったのです。

 工業製品については「安全保障」を忘れていた様に思えます。 例えば、新型コロナワクチンの入手が、先進国と比較すると日本は遅れています。 その原因は、日本にはワクチン接種に反対する人が多いい為、国はワクチンの研究開発に力を入れて来なかった事と、製薬会社がワクチン製造工場を拡大しなかった為です。

 韓国のSKバイオサイエンスが、アメリカ・ノババックス社の新型コロナワクチンを国内で製造して6月から出荷すると発表しています。 あの貧しいキューバが新型コロナワクチンを開発して、既に最終臨床試験(治験)に入っている様です。

 「日本のワクチン接種計画が先進諸国に比べ大幅に遅い事は良い事だ」とテレビで堂々と主張するコメンテイターがいました。「外国で安全性が確認された後に接種する事になるから、安心だ!」と言うのが彼の主張です。 『従順な羊』の発想ですね! 問題が起こってから考えましょう!

【豊かになった国の金は後進国に投資される!】
 「金が金を産む」と言いますが、資本主義社会では金持ちの所には、ドンドン金が集まります。 「三代目は店を潰す」とも言います。 創業者と二代目が努力して蓄財しても、創業者が可愛い孫(三代目)を甘やかすと、あっという間に金が無くなって、貧乏人の仲間になります。

 国家も、豊かになって来ると更に豊かになります。 豊かな国(A国)の資産家や企業は、(自国の産業に投資するよりも、)貧しい国(B国)に投資して、技術を流出させ、B国でより多くの金を得ようとします。 B国は豊かになって行きますが、A国は相対的には貧しくなります。

 家業の発展を継続する為には、息子の教育が重要ですが、国家が継続的に発展する為には、金持ちや企業が後進国に投資したり、技術/ノウハウを流出させるのを制限しなければならないのです。 今までに、先進国が後進国への投資やノウハウの流出に正面切って反対した事は無かった様に思われます。

 16世紀にスペインとポルトガルが豊かになり、17世紀にはオランダが黄金時代迎え、19世紀には産業革命を始めたイギリスが強国になりました。 その後、資源が豊富だったアメリカとロシアが次第に強国になっていったのです。

(余談 :出島とオランダ貿易) 関ヶ原の合戦は1600年です。 当時、世界で最も強国だったのがオランダでした。 オランダの東インド会社はキリスト教の布教に固守しなかった事も有って、徳川幕府は出島に商館を設けることを許したのです。 (その後・直ぐにオランダは衰退し始めましたが、幕府は世界一の強国になった大英帝国には出島を解放しませんでした。)

【中国の海外投資】
 今までの中国の海外投資に関する私見を書いておきます。 貿易で得た巨額の金(年間20兆円とか30兆円)を海外投資してきましたが、近年は減少傾向です。 堪り兼ねたEUは、既に中国による企業買収に対して規制を強化しています。 日本の政治家の多くは、殆ど勉強しませんから、実情を理解しておらず、対策の必要性を考えていない様に見えます。 中国の海外投資の特徴を纏めてみました。

① 中国の海外投資は、国家が行っているのか?民間企業なのか?個人なのか?分かり難い事が最大の問題です。 共産党一党独裁国家ですから、個人が外国に所有している資産でも、何時でも国が没収出来ます。 従って、全て国家が投資していると見るべきです。

② 中国は、他国の地下資源の採掘権や土地(農地や水が得られる土地)を買収しています。 (日本でも、北海道などで、既にかなりの土地を買っている様です。)

③ 中国は他国の企業を買収していますが、他国に工場を建設するのは積極的では無い様に見受けられます。(今の所、中国国内で仕事を作り、雇用を増やすことを優先している様です。)

④ 他国の既存企業を買収して株式の配当利益を期待するだけでは無く、ノウワウを吸い取る事が主目的の様に思えます。

⑤ メディア(報道機関)の買収を目論んでいます。 (日本は、メディア会社の20%以上の株式を外国資本が取得する事を禁じています。) ハリウッドでの映画製作に投資して、観客が意識する事無く、中国の思想/考え方を学習する映画を作ろうとしている様です。

(余談 :中国資本に買収された日本の企業) ➊シャープ、➋東芝の家電部門、❸三洋電機の家電部門、❹パイオニア、❺レナウン、❻池貝(工作機械メーカー)、❼NECと富士通のパソコン部門、❽本間ゴルフ、・・・

【巨額の金での企業買収は脅威です!】
 今までの国際ルールでは、『金』で企業を買収する事は、原則として認められて来ました。 企業合併や吸収を制限するのは、その国の「独占の禁止」と「安全保障」の二つの視点から行われるのが国際ルールだったのです。

 昔は国内企業の国際競争力を高めるために、各国が国内企業間の合併や吸収統合を奨励しました。 20世紀の後半から、合併や吸収統合が他国の企業間で行われる様になり、どこの国の企業なのか?分からない巨大な多国籍企業が沢山誕生しています。

 21世紀になって世界的に金余りの状態になり、兆円単位の金を動かせる西欧諸国の投資ファンドが活躍する様になっています。 最近、イギリスのファンドが東芝を2兆円で買収すると発表しました。 このまま放置すると、国家と企業の関係が根本的に変質してしまう事になります。

 中国の貿易黒字が続いて、また、中国が海外投資を積極的に進める様になったら、(投資ファンドと中国によって、短期間で)日本の有望な企業の多くは多国籍企業の一部門になってしまう恐れが有ります。

 日本の経済政策は、族議員達と経済3団体(日本経団連、経済同友会、日本商工会議所)の長老達でコントロールして来ました。 然し、日本の企業の多くが多国籍企業の一部門になって来たら、世界状勢や技術の進歩を勉強しない族議員達や長老達が今までの様にのさばる事は出来なくなります。

 「米中貿易戦争と同時に外国資本による日本企業の買収攻勢(戦争)に立ち向かう必要が有る」と私は考えています。 コロナ対策でアップアップの菅氏ですが、優秀なブレインを集める事が出来たら、この両面戦争に対応出来るかも知れません!?

【台湾問題の変質】
 トランプ氏は台湾重視の方向に政策転換しました。

 台湾(中華民国)は国連の常任理事国の一つでしたが、1971年に常任理事国の座を中国(中華人民共和国)に奪われたので、国連を脱退しました。 第二次世界大戦後、アメリカと台湾には相互防衛条約が有りました。 1972年に、当時の大統領・ニクソン氏が中国を訪問し、日中正常化をさせて、79年に米華相互防衛条約を破棄しました。 そして、台湾を国家としては取り扱わなくなりましたが、アメリカは79年に(軍事同盟の様な)『台湾関係法』を制定して、中国の侵攻を牽制してきました。

 台湾に、1980年・半導体メーカーの聯華電子股份有限公司(UMC)が、87年には臺灣積體電路製造股份有限公司(TSMC)が設立されました。 UMCとTSMCは急激に発展して、巨大企業になっています。

 中国は「清国の領土を回復する権利が有る」と主張して、第二次世界大戦後ずっと台湾進攻を狙って来ました。 然し、現在、日本を含む欧米諸国にとって、台湾は極めて重要な国になっています。 勿論、中国にとっても台湾の重要度は高まっています。中国が台湾を併合したら、現在進行中の第4次産業革命において極めて重要な半導体を、西側諸国が入手するのが難しくなります。

 「中国が、台湾に侵攻する前に尖閣諸島を占領して軍事基地化する恐れがある」と言う人がいましたが、尖閣諸島は台湾に侵攻する上でも、台湾の防衛にも重要です。 従って、尖閣諸島は日本だけでなく、欧米諸国にとっても重要になっています。欧米諸国の理解と協力を得て、日本は、尖閣諸島への中国の侵入を阻止する体制を固める必要が有ります。

(突拍子の無い提案) 近年の、中国の海軍と空軍の近代化と増強は凄まじいです。 現在・既に、アメリカ一国で台湾を防衛する事は難しくなっています。 アメリカが金を殆ど掛けないで、中国に野望を捨てさせる手段が一つだけ有ります。

 1962年にロシアがキューバに核兵器を持ち込もうとした、キューバ危機を覚えておられますか? 同じ様に、アメリカが核爆弾100発と運搬用ミサイルを同数、密かに台湾に持ち込んで、体制が整った後で公表したら、中国は手出し出来なくなると予想します。 

 核兵器を所有しないドイツやイタリアは、アメリカの核兵器を配備してロシアに対抗しています。 これを『ニュークリア・シェアリング』と呼びます。 中国は台湾との国交断絶をすると予想されるので、台湾は中国に輸出出来なくなります。 然し、欧米諸国とは安定した貿易が可能になり、長い目で見たら台湾に取ってメリットが大きいと思われます。

 「台湾と国交を樹立する国が増えて、10年ほどしたら国連に復帰出来るのでは?」と私は予想します。 そうなったら、東南アジア諸国に対して中国は強引な事は出来なくなります。 日本にとってもメリットは大きいです。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿