これ!どう思います?

マスコミがあまり報道しない様な問題を、私なりに考えてみます。

ロシアと中国の問題

2021-05-08 12:02:22 | 国際問題
【はじめに】
 ロシア、中国、北朝鮮の3国を『ならず者国家』と呼ぶ方がおられますが、3国とも21世紀になっても他国に侵攻して領土を拡大したいと目論んでいます。

 現在・3国は協力関係にありますが、「清の領土だった土地は中国の領土で有る」と主張しており、最近・中国の一部で「高麗(918年~1392年)は中国の国だった!」と言い始めています。 帝政ロシアが清国から、(日本の国土の何倍にも相当する様な)広大な領土を奪ったのは事実です。 元がほんの一時期、高麗を支配したのも事実です。(元寇は、元と高麗軍が攻めてきたのです。)

 ソビエトが1991年に崩壊した混乱時、中国がロシアに侵攻しなかったのは「確実にロシアに勝てる」と判断出来なかったからだと想像します。 21世紀になって中国は軍備を増強しており、「次にロシアが混乱する様な事になったら、帝政ロシアに奪われた領土の奪還を企てるのでは?」と私は危惧しています。

 『ならず者国家』の野望を阻止する為には、抑止力(軍事バランス)の維持が重要だと思います。 ロシアと中国間の軍事バランス、そして、西側諸国と『ならず者国家』達の間の軍事バランスを維持することが、世界の平和に不可欠です。

【プーチン氏と習氏】
 安倍晋三氏がプーチン氏と一緒に風呂に入ったと聞いて、笑ってしまいました。プーチン氏はKGBでスパイの訓練を受けて、実際にスパイとして働いた人間です。 風呂の中で、「スイスの銀行に五千億円振り込むから、北方四島を返してくれ」と切り出したら成功したかも? 日本の政治家は、他国の元首について勉強する必要が有ります。

★★★ プーチン氏と習氏の共通点を書きます。
① 年齢 :今日現在(2021年5月8日)の年齢は、プーチン氏が68歳で習近平氏67歳です。二人とも長期政権を目指しており、生きている間は影響力を維持したいと躍起になっている様に見えます。

② 他人の事は意に介さない :二人とも非人道的人物です。他人の自由、権利、生命など尊重する様な人間では無いと思われます。 (但し、ロシアも中国も、有史以来・民主主義国家だった事が無いので、二人が非人道的なのは個人的な欠陥だとは言えないと私は考えています。)

③ 実力で伸し上がった :日本には二世、三世の政治家が多くいますが、プーチン氏と習氏は過酷な競争の中を実力で伸し上がったのです。 私の偏見かも知れませんが、安倍氏とプーチン氏の交渉を見ていると「役者が一枚も二枚も上」の様に見えました。

④ イデオロギーが無い :二人とも、宗教・哲学・思想・・・何も持っていません。自分に都合の良い様に切り取って利用します。

⑤ 覇権主義 :「プーチン氏はバルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)の一国を併合して、レーニンかピョートル1世の再来だと言われたい!」、 「習氏は台湾を併合して、毛沢東と同じ様に国民の尊敬を得たい!」と目論んでいる様に見えます。

★★★ プーチン氏と習氏の違う点を、(私の独断的な考え方ですが)書いて見ました。
❶ 体制の継続性 :習氏に万が一の事が有っても共産党の有力者が、大きな混乱無しに後を引き継ぐでしょう。 プーチン氏は後継者を育成している様には見えません。寧ろ自分の地位を脅かしそうな有能な人物は排除している様です。 プーチン氏が急逝したら、ロシアは大混乱になる可能性が有ります。

➋ 人財の豊かさ :中国共産党には(技術系を含む)頭脳明晰な党員(人財)が沢山いると考えるべきです。習氏は、彼らを自由に使う事が出来ます。

➌ 選任方法 :プーチン氏は曲がりなりにも国民投票で選ばれています。従って、国民の人気を気遣う必要が有ります。 習氏は、共産党の長老達の密室会議で推挙(?)されたのです。習氏が総書記に就任したのは2012年ですから、当時の長老達はもう直ぐ鬼籍に入ります。 その後任の長老には習氏にとって都合の良い老人を指名すると予想します。

➍ 経歴 :プーチン氏は悪名高いKGBの出身で、競争相手を粛正することには長けています。然し、技術/工業の発展には余り興味が無い様に見えます。 習氏は、若いころ色々苦労しましたが、清華大学化学工程部を卒業し、後に同大学の人文社会科学院で学んで法学博士の学位を得ています。習氏は、「基礎科学は国家の発展にとって重要だ!」と考えているようです。 ウイキペディア『千人計画』で検索して見て下さい。

【ロシアの近代史】
 赤穂浪士の討ち入りは1703年で、大岡忠相が江戸南町奉行に就任したのは1717年です。 当時のロシアは、ヨーロッパで寒くて貧しい「ロシア・ツァーリ国」と呼ばれていました。然し、ロシア・ツァーリ国の時代から東アジアへの領土拡大を進めていたのです。

 1721年にピョートル1世が即位して、近代化を始め/富国強兵を推進して弱小の周辺諸国に侵攻して領土を拡大して行きました。 (ピョートル1世後の中国との関係は、下に別途書きます。)

 ロシアは農業国でしたから国民の多くは農民でしたが、農民は奴隷(農奴)でした。 農奴解放令が出たのは1861年です。(明治元年は1968年です。トルストイが生きたのは、1828~1910年です。)

◎ ロシア・ツァーリ国 :1547年~1721年
★ ピョートル1世即位 :1721年
◎ 帝政ロシア :1721年~1917年
◎ 日露戦争 :1904年~05年
◎ 第一次世界大戦 :1914年~18年
◎ ロシア革命 :1917年
◎ ソビエト連邦社会主義共和国 :1917年~91年
★ レーニン首相 :1917年~24年
★ スターリン :24年~53年 ・・・第二次世界大戦
  ・・・・・・
★ ゴルバチョフ :85年~91年
◎ ソビエト崩壊 :1991年
★ エリツイン大統領 :1991年~99年
★ プーチン大統領 :1999年~2008年
★ メドヴェージェフ大統領 :2008年~12年
★ プーチン大統領 :12年~
◎ クリミア半島の併合 :2014年

【現在のロシアと中国の比較】
 グローバルノートのデータで最近のロシアと中国を比較して見ました。 第二次世界大戦直後はソビエトの方が圧倒的に強国でしたが、現在では逆転して、国力の差は拡大傾向に有ります。 中国のGDPは、ロシアの10倍程になっています。 2020年の国民一人当たりのGDPは、ロシア=10,037米ドル、中国=10,484米ドルで、ほぼ互角です。(日本=40,146米ドル)

 ロシアは無理してGDPの4%近い金を軍事費に当てています。 それでも、中国の軍事費の四分の一に過ぎません。 20世紀までは兵器の技術はロシアの方が圧倒的に優れていましたが、中国は兵器の開発に莫大な金を投入して、その差を縮めています。 (性能には問題が有る様ですが、)中国はステルス戦闘機・殲(ピンイン)-20(J-20)を自力で開発し、既に50機ほど実戦配備しています。ロシアもステルス戦闘機・Su-57を開発中ですが、実戦配備までには時間が掛かる様です。

 ロシアは『貧乏になりかけた兄』で、中国は『ドンドン金持ちになっている弟』の様に見えます。この傾向を止める事は、現在のロシアには出来ません。 ロシアは覇権主義を止めて、西側諸国に加わらなかったら、将来・中国の属国になってしまいそうです。

① GDP  :ロシア=1.47兆米ドル、中国=14.72兆米ドル ・・・2020年
   :ロシア=1.69兆米ドル、中国=14.34兆米ドル ・・・2019年(アメリカ=21.43兆米ドル)
② 輸出額 :ロシア=3.31億米ドル、中国=25.91億米ドル ・・・2020年
③ 輸入額 :ロシア=2.40億米ドル、中国=24.08億米ドル ・・・2020年
④ 外貨準備高 :ロシア=0.60兆米ドル、中国=3.36兆米ドル ・・・2020年(金保有を含む)
⑤ 人口     :ロシア=1.46億人、中国=14.4億人 ・・・2018年
⑥ 特殊出生率 :ロシア=1.57、中国=1.69 ・・・2018年 (日本=1.42)
⑦ 軍事費   :ロシア=651億米ドル、中国=2,611億米ドル ・・・2019年(アメリカ=7,317億米ドル)
⑧ 軍事費/GDP :ロシア=3.85%、中国=1.82%  ・・・2019年(アメリカ=3.41%)

(出典) ①~⑦はグローバルノートを転記、⑧はグローバルノートのデータを用いて私が計算しました。

【ロシアの本音】
 中華人民共和国(中国)が、ソビエトの支援を受けて建国されたのは1949年です。 当時、中国とソビエトの経済/軍備の差は歴然としていました。 ソビエトは『社会人になった兄』で、中国は『小学校に入学した弟』の様な関係だったと私は思います。 その後、ソビエトは崩壊して、中国の工業化が急激に進んだので、国力の差は逆転し→差が拡大し続いています。

 米中貿易戦争はロシアにとっては好都合です。 ①中国からの投資が期待できる。②中国と軍事協力関係が構築できる。③中国との貿易が拡大する事が期待できる。・・・

 中国が台湾の併合に成功して、経済発展を続けると、中国の次の目標は「ロシア帝国が清国から奪った領土の奪還」になる恐れが有る事を、プーチンは認識していると思われます。 長期的に考えたら、中国の発展はロシアにとっては脅威です。

【帝政ロシアの北東進出】
 中国は現在でも、「清国時代の領土は我が物で有る」と主張しています。 帝政ロシアは清国から(日本の国土の何倍もの)広大な領土を奪っています。 1991年と94年の、中ソ間の協定によって国境が確定した事になっていますが、中国の国力が急激に高まり、軍備もロシア以上になっています。 その差は、今後・益々広がって来ると予想されます。 将来、中ソ間で国境紛争が再開される恐れが有るので、帝政ロシア以来の北東進出の歴史を簡単に書いておきます。

 昔のロシアは、ヨーロッパの後進国で『ロシア・ツァーリ国』と呼ばれていました。 少しずつ領土を広げて行きました。 東方へも進出を図り、清国と国境を接する様になりました。 1644年に中国は、明→清になっていました。

 1689年に清国の康煕帝(第4代皇帝)とロシア・ツァーリ国のピョートル1世の間で、国境を確定するネルチンスク条約を締結しました。 この条約では、アジア大陸の東側(ウラジオストクやハルピンの有る地域)、樺太などは清国の領土でした。

  ピョートル1世が1721年に即位して、ロシア帝国(1721年~1917年)が誕生しました。ピョートル1世はロシアの近代化を始めました。 ピョートル1世は1725年に亡くなりましたが、後継の皇帝達は近代化を更に進め、ドンドン領土を拡張し続けました。

 清国は近代化に努力しなかったので、ロシア帝国との国力の差が広がり、ロシア帝国の北東進出を抑えられませんでした。(ネルチンスク条約で決めた国境線を超えて、ロシア帝国は侵攻したのです。)  1858年のアイグン条約と60年の北京条約によって、アジア大陸の東側や樺太がロシア帝国の領土になりました。

 中ソの国境線は非常に長く/複雑ですから、両国の主張が食い違う地域が有りました。 そのために、第二次世界大戦後の1969年に極地戦争(ダマンスキー島事件)が起こりました。 その後、国境線を挟んで両国は睨み合って来ましたが、江沢民が国家元首だった1991年と94年の協定によって両国は国境を確定させたのです。 (習近平は近年、江沢民が領土を明け渡したと批判しています。)

(余談) 1989年に天安門事件が発生しました。中露東部国境協定はソビエトが崩壊する寸前の1991年に締結されました。ロシアは大混乱になりましたが、中国も天安門事件を処理する(自由を要求する若者達を抑える)必要があり、江沢民はエリツイン大統領との間で1994年に中露西部国境協定を結んだのだと推測します。

(余談 :樺太) 樺太は大昔から日本と深い関係に有りました。 樺太にはアイヌ人が住んでいて、江戸幕府は北海道に住むアイヌ人と同等の扱いをした様です。 『蝦夷』は現在の北海道と樺太・両方をさす言葉だったのです。江戸時代の樺太の人口は2,000人~3,000人ほどだった様です。ネルチンスク条約では、樺太は清国の領土となっていますが、清国が統治した事は有りませんでした。 明治維新の時は、樺太はロシア帝国の領土になっていたので、日本は樺太の領有権を主張しなかったのか?

【北極海航路】
 ①北ヨーロッパ⇔⇔日本や中国、②北ヨーロッパ⇔⇔北アメリカ大陸の西側への航路は、北極海を通る方が、距離が短く政治的に安定しています。(今年、コンテナ船が座礁したスエズ運河を通る必要がなく、何よりも海賊に襲われる心配がありません。)

 地球温暖化で北極海の氷が融けて来たので、21世紀に入って北極海航路(北方航路)が9月の前後2か月間ほど利用される様になって来ました。 砕氷船の支援を得たら、もっと長い期間・航行出来る様です。 地球温暖化が進めば、更に北極海航路は利用される様になると予想されます。

 1994年に発効された『海洋法に関する国際連合条約(国連海洋法条約)』によって、瀬戸内海の様な内海(内水)を除いた領海でも商船の航行は自由に行える事になっています。 勿論、排他的経済水域も自由です。 排他的経済水域は、沿岸(基線)から200海里(370.4km)の海です。 すなわち、北極海航路の大半はロシアの排他的経済水域に含まれると思います。

 ロシアは、「北極海航路はロシアの領海だ!」と主張して、航行規則を設けています。 ロシアは2018年時点で原子力砕氷船を4隻所有しており、2030年頃には13隻体制にして、一年中航行可能にする計画を進めています。 現在は、氷が張る期間の航行は有料で商船等の航行を認めている様です。北極海航路を収入源にする事を目論んでいます。

 中国にとっても北極海航路は重要で、3万トン以上の大型原子力砕氷船を建造しています。ロシアとの協力関係を強化しています。中国はロシアと組んで北極海航路から利益を得ようとするでしょうが、ロシアが独占を主張したら、中国は黙っていないと予想します。

 アメリカも以前から北極海航路に注目し、調査・検討しています。 文大統領は中国と組んで、北極海航路での輸送と、造船関係での商売を狙っている様です。

 商船三井と中国遠洋海運集団の合弁会社が所有する砕氷LNG船が2020年に、ロシアから日本にLNGを運んで来ました。 商船三井グループは、砕氷LNG船を最初は韓国の大宇造船海洋(DSME社)で建造し、その後は上海の滬東中華造船(集団)有限公司で建造している様です。

(余談 :日本政府の動き) 安倍政権は2013年に、「海洋基本計画で北極の諸課題に重点的に取り組む」と閣議決定して、15年には『北極政策』を発表しました。何かやっているポーズをしただけで、各国の様子を見ています。 「日本政府は積極的に動くべきだ!」と主張する方がおられますが、「コロナ対策さえ真面に出来ない安倍氏や菅氏では、何もしない方が良い!」と私は思います。

領海 :国連海洋法条約で、領海は沿岸(基線)から12海里(22.2km)と規定されています。 内水を除いた領海では、他国の船の航行を妨害することは禁じられています。


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