和製ズミクロンとも呼ばれている、カリカリに描写する希少なM42レンズです。今では手に入れることがかなり難しくなってしまって、霧の中に埋もれているようなレンズなのですが、たまにWebの中古ページで紹介されるとすぐに無くなってしまいますので、人気の程はいまだに健在と思っているレンズです。
何しろ50㎜標準レンズとすれば、国内で販売されているライバルはF1.4やF1.8位のメジャー路線です。少し暗い標準レンズは、日本国内でもあまり相手にされていなかった様子で、生産はされているのですがターゲットは輸出という図式であったろうと考えています。故郷を偲ぶように帰ってくるレンズと言う訳で、国内向けに販売された数はかなり少ないと考えています。
同仕様のレンズが他社メーカでも出ているのですが、いずれもF2もしくはF2.2という感じで少し暗いレンズに仕上がっています。この頃は輸出の全盛期ですから、リーズナブルな価格設定で誰でもカメラを持てることが売りであったと思います。一番リーズナブルなカメラとセットで中古販売されていますので、さもありなんといった感じです。
色々探し回って、何とかリーズナブルなLバージョン品を手に入れました。かなり軽い標準レンズで、コストダウンが十分に図られているチープさがにじみ出るレンズです。前期品に比べて軽いのですが、和製ズミクロンと言われる通りに解像度はかなり高くて、絞り解放からピント位置の解像度が確保できている優秀レンズです。
加えてコントラストがかなり高くて、ファインダー像のピント合わせも確実に行えます。しかし、柔らかな描写となるとかなり不得意で、ディジタルカメラを用いるとパリパリに描写しますから、鑑賞していて疲れてしまう事になります。フィルム時代ではフィルムの粒度がちょうど良い具合に固い描写を相殺してくれますから、あまり気にならなかったのですがディジタル時代では逆に使いづらくなってしまったという感じです。
ディジタルでもフィルムでもという使い方をしていますので、どうしてもフィルム撮影の時に出番が多くなります。しかし、標準レンズの出番もそうありませんから、あまり使われないレンズとなっていました。これでは、せっかく探し回って入手したのに勿体ないという気持ちです。色々考えているうちに活用法を思いついたと言う事になります。
ディジタル画像の黒白フィルム撮影で、色々レンズを取り換え引き換え試したのですが、やはりXRリケノン50㎜F2を付けると一番解像感が高くなりますので、フィルム粒度の柔らかさと相殺されてきれいにモノクロ化できます。フィルムの雰囲気も同時に加味されますので、満足できる結果が残せます。あまり日の目を見なかったレンズが、ひょんなことから常用レンズになってしまった感じです。
丁度雨の休日になりましたので、撮り溜めたディジタル画像をディスプレイに表示して、モノクロフィルムで撮影します。フィルムの個性が出てきますので、また違ったトーンになって表現されるわくわく感がありますので、すっかりはまってしまったと言う事になります。このような時にXRリケノン50㎜F2は、ちょうど良い相棒になってくれています。
それでは、先月中旬に撮影した写真から掲載します。
PENTAX K-1 SMC Pentax-M 35mmF2.8
撮影データ:1/800sec F3.5 ISO100
モクレンの花もあっという間に満開になってしまいました。それでも少し残った蕾が咲いていきますので、5月の連休頃までは愉しめます。